だからってなんだよー 私は負けない
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
4-2-1
12月初めの寒い日だった。私が、学校から帰ってくると庄爺の家で、黒い服を着た人が数人が出入りしていた。変なのと思いながら、家に帰ると、お母さんからのメモが置いてあった。 (庄一郎さんが 今朝 亡くなったので、お母さんはそっちに行っています)
はぁーぁ 庄爺が・・・私が庄爺のところに行くと、お母さんが、黒いワンピースに上着姿で
「すぐり 旦那様がね・・・朝 雨戸も開いて無いもんだから 覗いたらね 寝床に寝たままなので 声を掛けたんだけど 返事も無くってね 動く様子も無いから・・・近寄って、声を掛けても・・・息もしてないようで・・・それでね・・・えーとぉー えーとぉー」
「お母さん 落ち着いて それで?」どうして? 言い方 旦那様なのぉー みんなに変だと思われちゃうよー
「そう 救急車 何番だっけかなーって 社長さんに電話したの」
「ハァー? 番号・・・ まぁ それで、救急車ね・・・」
「そう そーだったわ でも 病院に着いた時には、もう お亡くなりになっていましたって 寝ている時にね・・・」
「そう? そんなに まだ寿命って年じゃぁ無かったのにね」
「そーなの 少し前まで あんなに元気だったのにー・・・しっかり、食べてもいたんだけどねー 今晩はお通夜で、火葬場の都合でお葬式は明後日なの お葬式は9時からだけど、その日はすぐりも学校お休みしなさい 明日、学校に行ったら、先生に言ってくるのよ!」
お通夜までは、少し時間もあったので、私は考え込んでしまっていた。少し前には、お母さんとあんなことをしていたくせに・・・それより、庄爺が死んでしまったら、山の採集権はどうなるの? あの山は誰のものになるの? もう、採れなくなるのかしら・・・。帰り際に篠田のおじさんに出会ったのだけど
「あぁ 大変なことになったなー ウチの工場の土地は 庄爺から借りているんだよなー すぐりちゃんも 山のことがあるだろう?」
「・・・どうなるんですか?」
「う~ん 身寄りは誰も居ないって聞いているしなー しずゑ婆さんは 同級生だから 何か聞いているかも知れんが・・・誰も居ないとなるとややこしい話になるんだろうな」
一度、家に帰って、お通夜の始まる時間に改めて行くと、篠田さんチの4人に、その他に3人ばかりと農協の人が来ていた。正安寺のお坊さんがお経を唱えて、焼香を終えて、そのまま2日間 安置されるらしい。座敷は三間続きで全て襖は取り外され、一番奥の部屋に祭壇があって、そしてその手前に棺が安置されていてた。
終えた時には、手前の部屋に、近くの料理屋さんから取り寄せたのだろうか、寿司桶とか、油揚げ、こんにゃくを煮たものなんかが並んでいて、お母さんはおつゆを温めて配っていた。お寿司といっても生ものは無くて、卵と野菜を載せたものばっかりなのだ。おばぁさんが・・・段取りしたみたい。私、この人がしずゑという名前だっていうこと初めて知ったのだ。
「庄一郎がね 私に 死んだときのお葬式の費用だと 通帳と印鑑を預けていたんだよー 身寄りも居ないから、世話になると思う 頼むって まぁ あやつなりに考えていたんだろね あんなにチャラチャラと遊んでいたけど、そのあたりはちゃんとやっていたみたいなんだな だから、病院で葬儀屋さんも来たけど、農協に葬儀一切をお願いしたのよ」
そして、皆が帰るってなった時、お母さんが
「私 一度帰って、身支度揃えてから、もう一度 お側に来ます。私達親子は住む家とかお世話になっていますからー だって 独りっきりって あんまりにも 寂しいじゃぁ無いですかー せめて 最期まで・・・」
家に戻って、お風呂に入った後、お母さんは着替えなんかを揃えていて
「ねぇ 私も 行くんだよねー」
「そう だって すぐりをこの家に独りにできないでしょ その上に羽織る暖かいものを持って行ってよ 明日は、学校に行くんだからね そのつもりでね そうだわ その材料も持っていかなきゃーね 朝ご飯はおにぎり握っておくからー お弁当も・・・ それを・・・」
私は、もこもこのパジャマだったんだけど、寒くって布団の中でお母さんにくっついて寝ていた。真ん中の部屋なんだけど、襖は全部外してあるし、壁側にはお仏壇もあるし・・・石油ストーブひとつなんだものー。だけど、お母さんは厚手なんだけどルームウェアで、おそらく その下は あんな下着を身に付けているのに決まっている。さっき 裾が捲れた時にチラッと見えたのだ。
でも、お母さんは夜中に布団から出て、棺の前で ぼぉーっとしていたのだ。棺の顔の部分が開けてあるから、庄爺の顔も見えるはず・・・
お母さんは、今 どんな気持ちなんだろう・・・借りているお金も3月には返済終えるって言っていたし、今の 庄爺との あの事が終わるからー・・・まさか、愛している人を失ったなんてことは思って無いよねー でも、私達が住んでいる家はどうなるんだろうかとか・・・そうだ 私も 山のことがあるんだ どうすれば・・・そのうち、私は眠りに落ち込んでいた
ページ上へ戻る