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冬の蛇

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第一章

                冬の蛇
 伊東優は生きものを飼うのが好きだ、それも爬虫類が好きで家には蜥蜴や亀それに蛇達がいる。蛇はアオダイショウである。
 その蛇を見る為に友人の与謝野澄香が家に来たが。
「あれっ、皆いないわね」
「だってね」
 土や水だけあって誰もいない水槽を見て目を瞬かせた澄香にだ、優は答えた。優は波がかった長い黒髪で大きな二重の垂れ目で左の口元に黒子がある。鼻が高くやや面長で背は一六八程あり見事なスタイルの持ち主だ。
「今冬だから」
「あっ、そうね」
 澄香も言われてわかった、澄香は大きなはっきりとした二重の目で肩までの端がはねた黒髪を持っている。顔は小さく唇は紅で一六〇程の背だが胸は九十と八十八の優よりある。二人共セーターにスラックスという服装だ。
「それじゃあね」
「そう、この季節はね」
「皆冬眠してるわね」
「だから冬は寂しいのよね」
 優は水槽を見つつ少し苦笑いになって述べた。
「どうにも」
「そうなのね」
「仕方ないけれどね」
「爬虫類は冬は冬眠するから」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「そのことは受け入れて」
「一緒に暮らしているのね」
「主人もね」
 夫の昭義の話もした。
「生きもの好きだし」
「夫婦でそうしたものって受け入れているのね」
「そうよ、ただ爬虫類って食べる量少ないしね、飼い方さえわかっていたら」
 優は澄香にそれならと話した。
「案外楽に飼えるわよ」
「そうなのね」
「蛇もね」
 この生きものもというのだ。
「脱走には気を付けて」
「細長いから逃げやすいわね」
「だから蛇の水槽は工夫してるし」
 逃げにくい様にというのだ。
「それで一緒に暮らしているけれど」
「案外一緒にいやすいのね」
「うちの子は毒もないし」 
 アオダイショウはそうした蛇である。
「別にね」
「困ってることないのね」
「ないわ」
 実際にというのだ。
「有り難いことにね」
「そうなのね」
「そう、それでね」 
 そうであってというのだ。 
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