インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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破壊神の名を持つ少女と包帯男
「ねぇ、あなたは自分が強いと思ったことある?」
「え? 俺が?」
「ええ」
一夏に美少女が質問する。
「……いや、俺はまだまだだ。俺があの時、密漁船を庇わずに福音を討っていれば、祐人が死ぬことなんてなかった」
「………祐人?」
「ああ。俺の他に女にしか動かせないISを動かせる男でさ、いつもダメだしばかりしてくるけど、かなり強いんだ。そいつが死んで、俺だけになった」
彼は今でも後悔していた。今の自分はただ浮かれていただけなのかもしれないと。あの時に密漁船を庇わずに討っていれば祐人は死なずに済んだと思っていた。
「………いや、アンタにはどっちみち無理でしょ。だってアンタ、ゴミだもの」
この時、一夏は直感的にこいつは束さんに似てると思っていた。
「あら、あんなゴミ人間と一緒にしないでよ」
(え? 心を読まれた!?)
「あなたは一々顔に出しすぎなのよ。だからあの雑魚候補生たちに殺されかけるのよ」
「へぇ……」
(あれ? 俺、言ったか?)
すごく謎だと思っていると、美少女はこっちに向いた。
「そういえば、あなたの名前は?」
「え? 俺は織斑一夏」
「そう。私はシヴァ。よろしくね、ゴミ」
結局はゴミ呼ばわりかよと心の中で突っ込んだ。
「って、それよりもこの鎖を外してくれよ!」
「あら、あなたにとっては私の存在は鎖以下ってことね」
―――ドゴッ
シヴァの蹴りによって壁がへこむ。
(え? 何? この子、何者!?)
一夏が混乱していると、シヴァが口を開いた。
「あなた、さっきからISがあるからって調子に乗っているメス如きと一緒にしているみたいだけど、勘違いしないでくれないかしら。私はあの人以外には牙を向けるし、あの人以外には一切媚びる気はないの。特に―――ISに乗れて力が手に入ったと勘違いしているあなたみたいなゴミムシなんてもっての外。まぁ、あなたがどれだけ力を付けてもまず無理なほど、あなたとあの人は天と地ほどの差があるの。それにただ見下すだけじゃないわ。弱っている人がいれば持っている食べ物を平気で分け与えるし、貧乏な人からの依頼なんて適当にあるりんご程度で済ませるの。これがあなたとあの人の違いよ。まぁ、もし敵対しても逃げることね。あなた如きには倒せないから」
シヴァからの殺気に恐れ、一夏は腰を抜かす。
(ありえねぇ。何で俺、こんな子どもに―――)
「見た目が子どもだからって勘違いしないでよ、ゴミ」
―――パチンッ ジャラジャラジャラジャラ………
そう言ってシヴァが指を鳴らすと一夏を拘束していた鎖が壊れた。
その音に自分がすることを思い出した一夏はそこから脱出しようとするが―――
―――キュルル
「あら? どこに行くつもりかしら?」
シヴァがいつの間にか展開した鞭で拘束され、
―――ドンッ
再び捕まっていた場所に戻される。
「な、何するんだよ! 俺は―――」
「助けに行っても、すぐに死ぬのが落ちよ。白式を持っていない子どもにはね」
立ちはだかるシヴァに、一夏は何もできなかった。
■■■
「お、お前、何者なんだよ!?」
「名乗る程でもねぇよ」
そう言って男を蹴り飛ばして気絶させる。
―――シュッ
包帯男の頬に銃弾が掠った。
「お、お前! どうして男なのに、女の味方なんてするんだ!」
「そ、そうだ! 女は、篠ノ之束は俺たちの敵なのに、どうしてなんだ!!」
男たちはそう訴える。
「………まぁ、篠ノ之束が気に食わねぇのは俺も同じだ。本音を言えばあれは死ぬべきだと思っている」
「だ、だったら何故―――」
「え? 単純にお前たちが狙う相手を間違えているんだよ」
一人、また一人と男たちを吹き飛ばす。
「今回は政府に―――ひいてはIS委員会に訴えるべきだった。だが、お前たちは実験を理由にIS学園を襲ったのが敗因だ」
「黙れェッ!!」
―――ババババババババッ!!!
無反動のマシンガンが辺り一面から飛んできて、それらが包帯男を襲う。が、それらは全て外れた。すべて―――AICを全方位に展開して弾丸を止めた。
「お前みたいに女を庇う奴に俺たちの何がわかる!! 俺たちがどれだけ女に虐げられて惨めな思いをしてきたか!!」
「………はぁ。だからその考え自体がおかしいんだって」
そう言ってマシンガンを大太刀で切断した。
「政府や裁判官が自分の命が惜しいからって『女性優遇制度』を取ったんだから、訴えればいいだろ。まぁ、あらぬ疑いをかけられて嫌だって言うなら国会議事堂とかに核―――もとい爆弾を仕掛ければいいだろうに」
そう言いながらもその男は内心思っていた。やっぱり腐ってると。
「大体、お前たちは取り返しがきかないことをしているんだぞ。だからほら、さっさと逃げろ。見逃してやるから」
そう言って欠伸をする包帯男。すると中から批判の声が上がった。
「な、何やってるのよ!! そいつらは犯罪者よ! 何でそれを見逃すとか言えるのよ!」
「そ、そうよ! さっさと捕まえなさいよ!!」
包帯男は一瞥して―――ため息を吐いた。
「じゃあ、お前らは捕まえるのか?」
「え? そ、そんなの―――無理に決まってるじゃない! 馬鹿じゃないの!」
それを聞いた包帯男はバスを思いっきり蹴った。
その衝撃に驚いた女子たちは慌てふためき悲鳴を上げる。
「だったら調子に乗るな。大体―――今のお前らじゃISを使ってさえも勝てねぇよ。だってここは―――ISジャマーが流されているからな」
『え?』
「そしてついでに言っておくが、お前らは所詮ISがなければそんなデカい態度を取れなかったんだって頭に入れとけッ! それとも―――そのバスを潰されないと理解できないのかッ? アァッ?!」
『ヒッ!?』
中から悲鳴が上がる。
「大体、テメェらみたいに『女性優遇制度』にあやかって調子に乗る奴が出てくるからこういうことになるだろうがッ! そんなことも未だにわかんねぇのかッ! ガキ風情が偉そうに言葉並べてほざいてんじゃねぇぞッ!」
包帯男がブチギレ、さっきまで調子に乗っていた女たちが一気に怯える。
そしてどうしたことか、包帯男の体がぐらついた。
「あ、危ない!」
入口近くにいた真耶が慌てて外に出て包帯男を受け止める。
(………あれ? この場所が暗くてよく見えなかったけどこの人、どこかで……!!)
「―――って、顔色悪いじゃないですかッ!?」
よく見ると、その男は顔色が悪く、今にも倒れそうな様子だった。
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