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潔癖症の父

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第二章

「お父さん昔赤痢になってよね」
「お母さんと結婚するちょっと前にね」
「それからずっとああなのね」
「余程大変らしくてね」
「そうなのね、そのせいでね」
 娘はそれでと話した。
「体臭しないし不潔な感じはね」
「しないでしょ」
「うん、よく私の友達でおじさんが臭いって言う人いるけれど」
「体臭ね」
「口臭とかね。汗の臭いとか加齢臭とか」
 鞠子はその臭いを挙げていった。
「あるけれど」
「お父さんは臭わないでしょ」
「ええ、そうよね」
「そのことはいいことでしょ」
「そう思うわ、臭いって大事よね」
「そうよ、お父さんは体臭を意識していないけれど」
 赤痢のトラウマから潔癖症になったがというのだ。
「体臭もよ」
「臭わなくなったのね」
「そうなのよ。一つのことをしたら」
「他のこともってなるのね」
「そうよ、そのことは覚えておいてね」
 母は娘に話した。
「一つのことからね」
「他のこともなっていくのね」
「そうよ、そうなることはね」
「わかったわ」
 娘は母の言葉に頷いた、そして自分も奇麗にすると。
 いつも清潔であるだけでなくいい匂いがするとも言われた、元々の性格も優しく人気があったがそのことからも人気が出た、そうして父に感謝したのだった。
 だが父は娘に言った。
「お父さんは本当に赤痢にかかってだからな」
「体臭はいいのね」
「口臭もな、けれどそれで臭いもしないなら」
 笑顔でだ、娘にさらに話した。
「いいな、これからも清潔にしていくが」
「臭いもしないなら」
「そのことからもなのね」
「清潔にしていくよ」
「一つのことから他のこともなっていくのね」
「世の中はな、お父さんもわかったよ」
 彼自身もというのだ。
「一つのことから他のこともなっていく」
「世の中はそうだって」
「わかったよ」
 無脛に言った、そのうえで奇麗にしていった。するとそのまま体臭もせず当然感染症にも外国に行っても二度と感染しなかった。


潔癖症の父   完


                  2025・3・16 
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