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潔癖症の父

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第一章

               潔癖症の父
 細川兼定、八条鉛筆八条グループという世界的企業グループの文房具を扱う企業の名古屋支社で経理部長を務めている彼は毎日風呂に入っている、そしてだ。
 自分の食器は自分で洗い机も拭いている、手もよく洗い三食後の歯磨きも忘れない。皺の多い細面の白髪をオールバックにした初老の男で小さな細い目を持っていて背は一七三位で痩せている。
 その彼の潔癖症についてだ、ある新入社員が尋ねた。
「部長何でそこまで奇麗好きなんですか?」
「そりゃ君泉鏡花だよ」
「あの高野聖の」
「あの作家さんだよ」
 仕事の合間に尋ねた社員に答えた。
「まさに」
「というとあの人チフスになって」
「それであそこまでなったね」
「凄い潔癖症に」
「私もなんだよ」
「じゃあチフスに」
「一回外国に行って」
 そうしてというのだ。
「赤痢にかかって」
「チフスじゃなかったんですね」
「どっちにしても大変だったよ」
「赤痢もそうらしいですね」
「それで大変な思いをしたから」
 それでというのだ。
「気を付けてるんだよ、ただ生ものは食べるから」
「あの人火を通さないと食べなかったですね」
「海老や蝦蛄や蛸も」
 泉鏡花はそうしたものは食べなかったがというのだ。
「食べてるよ、ただね」
「清潔にしてですね」
「もう二度と赤痢とかにならない様に」 
 その様にというのだ。
「気を付けてるよ」
「そうなんですね」
「いつもね」
「そういうことですね」
 新入社員もそれならと頷いた、兎に角細川は潔癖症で奇麗好きであった。それは家でも同じで服も毎日洗濯し。
 何でも奇麗にしていた、すると娘で高校生の鞠子茶色の髪をボブにしていて優しい顔立ちの一五八位の背の均整の取れたスタイルの彼女は自分そっくりの母の命に話した。 
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