ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第146話 異世界からの襲撃!零蝶の覚悟と八王の集結!
前書き
E×Eのメンバーの容姿や口調はオリジナルですのでお願いします。
三虎がフローゼに拾われて数か月が過ぎた、彼もアカシアの弟子となって過酷な環境で修行を続けていた。
「うおおおっ!」
「シャアアアッ!」
捕獲レベル346の『ガブルスネーク』に二狼が向かっていく、自身の10倍以上の大きさの獲物も丸飲みにする化け物蛇に二狼は勢いを殺さずに突っ込んでいった。
「ノッキング!」
そしてガブルスネークが口を開こうとした瞬間、爆発的な脚力で詰め寄り顎の斜め下を指で突く。するとガブルスネークは体がマヒして動けなくなった。
「流石だ、二狼。ガブルスネークは口を開く一瞬の間しかノッキングするチャンスがない。お前はノッキングの天才だな」
「へへっ、こんくらい楽勝っすよ」
アカシアに褒められた二狼は得意げに笑みを浮かべた。
「一龍の兄貴、こいつを見てくれって……おわぁっ!?」
二狼が一龍に獲物の自慢をしようと彼のいる方に視線を向ける、するとそこでは巨大な角を持った牛人間のような猛獣『バッファローミノタウロス』の突進を受け止める一龍の姿があった。
バッファローミノタウロスは捕獲レベル487の猛獣でほぼ一瞬で音速を超える突進を放てる猛獣だ、その衝撃波を纏った突進は眼前にある物を無差別に破壊し尽くすほど強力だ。
だが一龍はマイノリティワールドを使わず身体能力のみで突進を受け止めていた。
「ブモッ……」
そして最後にはバッファローミノタウロスの方がスタミナが切れて地面に横たわった。
「いいぞ、一龍。バッファローミノタウロスは体に傷がつくと肉が固くなって味も落ちてしまう。故にスタミナ切れを狙うのがセオリーだ。お手本のような捕獲だったぞ」
「はい、上手くいって良かったです」
「いやいや、衝撃波纏ってる突進を何時間も無傷で受け止めれる兄貴がおかしいだろう?しかも能力なしとかチートすぎね?」
「お前もたいがいだと思うが……」
アカシアは一龍のお手本のような捕獲を褒める、謙虚にそれを受け止める一龍だが二狼は引いた表情で可笑しいだろうと言った。
だが一龍も力を封印されて今の強さを持つ二狼も同じだろうと苦笑する。
「はぁ……はぁ……!」
「三虎、大丈夫か?お兄ちゃんが加勢してやろうか?」
「問題ねえよ!」
少し離れた場所で三虎は金色に輝く翼と星の見えない夜のような黒の体を持つ怪鳥『ムーンライトバード』と戦っていた。
捕獲レベル269のこの鳥は口から火炎を吐き出し三虎を攻撃する。
「ぐぅっ……!」
三虎はそれを必死で回避しながらムーンライトバードに接近して足に組み付いた。
「ノッキング!」
そして胸の右斜めに指を突き刺した、するとムーンライトバードの動きが鈍くなっていった。
「あれはノッキングか!?二狼の動きとそっくりだ……!」
「だが練度は全く足りてねえな、あれじゃ駄目だ」
一龍は三虎の動きが二狼に似ていたことに驚く、だが二狼は三虎のノッキングが不完全だと見抜いた。
「キョオオオッ!」
「えっ……うわっ!?」
ムーンライトバードは激しく体を振るい三虎を地面に落とした。そして一瞬で逃げ去ってしまった。
「くっそ~……指の位置がズレていたか」
「大丈夫か、三虎?」
「ごめんなさい、アカシア様。俺依頼された獲物を逃がしちゃった……」
「気にするな、失敗など誰でもするものだ。私も何度も失敗して学び成長していった」
「アカシア様も失敗するの?」
「当然だ、私は神様じゃないからな。だからお前も焦らずに色んな経験をして失敗をしながら成長しなさい」
「……はい!」
アカシアの言葉に三虎は嬉しく思い次は必ず成功させようと思うのだった。
「しかし先程の動きは見事だったぞ。まだお前にはノッキングの技術を教えていないはずだがどこで覚えたんだ?」
「二狼の兄者が前にムーンライトバードをノッキングしたのを見てたからそれで……」
「見ただけで覚えたのか?」
三虎がノッキングを使えたのは二狼の動きを見て真似たからだと聞いたアカシアは驚いた。
「三虎、どうやらお前は模範する才能があるようだ。凄いじゃないか」
「あ、ありがとう……」
アカシアの誉め言葉に三虎は照れながら笑みを浮かべる。今だ人から褒められることに慣れていないからか笑みがぎこちないがそれが嘘ではないと彼は分かっていた。
「まあ模範するだけじゃまだまだヒヨッコだけどな、実際にノッキングは失敗してんだし」
「ちょっとくらい褒めてくれてもいいだろう!」
だが二狼にそう言われて三虎はムッとしながらそう言いかえした。
「くそっ、もっとすっげぇ獲物捕らえて目にもの見せてやる!」
「あっ、三虎!」
そして怒った三虎はその場を走って行ってしまった。
「もっと凄い獲物はいないか?そういえばアカシア先生がこの辺りには絶対に行くなって言っていたな……もしかしたら凄い奴がいるかもしれないな」
三虎はアカシアが絶対に一人で近づくなと言っていた洞窟を思い出した、そこなら二狼をギャフンと言わせられるような獲物がいるかもしれないと思いそこに向かう。
「ここだな……っ!」
洞窟の側に来た三虎、だがその時洞窟の奥から凄まじい速度で何かが接近して三虎に襲い掛かった。
「うわっ!?」
今まで殺意に晒されて生きてきた三虎は奇跡的にそれに反応して体を仰け反らせた、だが完全に回避は出来なかったようで膝に大きな傷を負ってしまった。
「ぐうっ……!」
膝を抑えながら蹲る三虎、すると洞窟の奥から何かが現れた。長い胴体に無数の手、そして悍ましいほどに広く開かれた口に鋭い眼光……デビル大蛇と呼ばれる魔獣が姿を見せた。
「うっ……ああっ……!!」
その姿を見た瞬間、三虎は自分ではどうしようもない相手だと理解した。そんな三虎にデビル大蛇は縄張りを犯した敵と判断して腕を伸ばして攻撃した。
「ッ!!」
先程は奇跡的にかわせたが次は無理だ……三虎は目を閉じて死を実感した。
「させない」
「あ、姉者!?」
だがそこに零蝶が割って入ってデビル大蛇の腕を手刀で切り落とした。
「姉者、どうしてここに?」
「様子を見に来た。でも三虎がいなくなったと聞いて急いで匂いを嗅いで探した」
零蝶はアカシア達の様子を見に来たようだが三虎がいなくなったと聞いて急いで探し出したようだ。
「キシャアアアッ!!」
デビル大蛇は新たな侵入者に腕を無数に生やして攻撃を仕掛ける、零蝶はその攻撃を全ていなして三虎を守った。
「すげぇ……腕が消えて見える」
あまりの攻防に三虎の目にはデビル大蛇と零蝶の腕が消えているようにしか見えなかった。
「ガァァァァッ!!」
口から強酸の胃液を、触手から無数の毒液を飛ばすデビル大蛇、その威力は地面など水で濡らした紙を破くように溶かしていく。
「木人召喚」
零蝶は自分の指を地面に突き刺して無限のエネルギーを注入する、すると凄い勢いで植物が生えてそれが人の形となっていった。
そしてその木人がデビル大蛇の胃液と毒液を受けた、体の表面は溶けたがそれでもその攻撃を受け切った。
「木龍縛り」
そして今度は木で出来た龍を生み出してデビル大蛇の胴体に巻き付いた。この龍には生命のカロリーを吸収する効果がある、巻き付かれたデビル大蛇は力を奪われていった。
「キュロロロロッ!!」
だがデビル大蛇も負けてはいなかった、本来捕獲レベル3000くらいまでなら完全に動きを封じてしまう木龍を力づくで壊してしまったのだ。
「流石に厄介……」
零蝶はそう呟いた。このデビル大蛇は八王ではないもののそれに近い実力を秘めていた、本気でやれば自分も危ない……だが三虎を守るために零蝶は本気を出そうとした。
「零蝶、無事か!」
「アカシア、皆」
だがそこにアカシア達が駆けつけた、更に強い力を持った存在にデビル大蛇は警戒を強める。
「デビル大蛇、今回は引いてほしい。お前の縄張りに入った事は謝罪する、お前も我やアカシア達と本気で戦えば無事では済まないと分かるはず」
「……」
零蝶の言葉にデビル大蛇は考える。縄張りに入ったことは許せないが目の前の生物は自身と遜色ない実力者だ、そこに更に強い奴が3人増えた、戦えば自身も当分動けない体になるかもしれない。
リスクを考えた結果割に合わないと判断してデビル大蛇は零蝶に「次はないぞ」と言わんばかりに睨みつけて巣に戻っていった。
「なんとかなった」
「姉者、ごめん……俺……」
「我は怒っていない、一龍も二狼も通った道」
「えっ?」
「それよりもアカシア達に謝るべき」
「う、うん……」
零蝶は三虎の頭を撫でるとアカシア達の方に向かった。
「三虎!ここには近づくなとあれだけ言っただろう!何故言いつけを破ったんだ!」
「ごめんなさい、俺……」
「待ってくれ、アカシア様!こうなったのは俺が三虎をからかい過ぎたからだ!」
アカシアが三虎を叱ろうとしたとき、二狼が前に出てそう言った。
「三虎、済まなかった!俺のせいでこんな危険な目に合わせちまった!この通りだ、済まない!」
「二狼の兄者……」
そして二狼は三虎に頭を下げた。
「兄者、俺も悪いんだ。ムキになって危険な事をして……俺の方こそ本当にごめん」
三虎も二狼やアカシア達に頭を下げた。
「先生、今回は喧嘩両成敗と言う事でいいのではないでしょうか?」
「……そうだな、二人とも反省しているようだし今日はこのくらいにしておこう」
一龍の言葉にアカシアも同意した。
「さあ三虎、家に帰ってその傷を治療しよう。二狼、おぶってあげなさい」
「了解っす!」
「うわっ!恥ずかしいよ、兄者!」
二狼におぶられた三虎は恥ずかしそうに顔を赤くした、だがその心はとても温かくなっていた。
前までは一人で歯を食いしばって生きてきた、誰にも頼れずに孤独な毎日を過ごしていた。
だが今は違う、尊敬する師匠に頼れる兄貴分達、愛情をくれるフローゼ修行を付けてくれるグレートレッド、そして何より自分のピンチに必ず駆け付けてくれるヒーローのような姉がいる。
それが三虎にとって何よりの幸せだった。
その後三虎は二狼におぶられて帰路につくのだった。
―――――――――
――――――
―――
「すげぇ!?一瞬で傷が再生した!」
「療水といってな、グルメ細胞を一気に活性化させて再生させることが出来るんだ」
三虎は自分の傷が一瞬で治ってしまった事に驚き、アカシアは療水の事を皆に教えた。
「そんなすげぇ水があったんすか?それがあればもう無敵じゃないすか!」
「まあ希少な水だから気軽には使えないがな。それにフローゼの飯を食えばお前は回復出来るだろう。なにせ全身グルメ細胞なんだからな」
「ははっ、たしかにそうっすね!」
アカシアのツッコミに二狼はガハハと笑った。
「そもそも何故グルメ細胞を持っているとこんなにも再生力があがるのですか?」
「グルメ細胞は細胞の味も上げるが再生能力も爆発的に向上する万能細胞だ。特に自分に適合する食材を食べればかすり傷どころか腹に穴が開いたという大きな傷も一瞬で塞いでくれる程の再生能力を持っている」
「何気なくその恩恵を受けてるけど改めて考えるとすっげぇな」
一龍の疑問にアカシアが丁寧に説明した。それを聞いた二狼は自分の手を見ながらグルメ細胞の凄さを実感していた。
「だが逆に持つ者の精神と密接に関わり合うのがグルメ細胞だ、圧倒的な力で傷を負わされると精神的ダメージとして直らないこともある」
「適合食材でもすか?」
「ああ、グルメ細胞が自ら受け入れた傷として一生残るんだ」
「つまり負けを認めたら傷が残るって事か、なら俺は一生そんな事にならねぇな。がはは!」
「お前は負けず嫌いだからな。それに酒を飲めば絶対に傷も治るだろうしな」
「我もそう思う」
自分はそうはならないと豪語する二狼、そんな彼に一龍は呆れたようにそう呟く。零蝶も頷いた。
「俺の適正食材は何だ、肉か?」
「我も分からない、フローゼの料理なら嬉しい」
グレートレッドは自分の適合食材が気になるようで零蝶はフローゼの料理がそうだと嬉しいと話す。
「アカシア様、俺の顔の傷は生まれながらついていて今も消えないんだ。この傷は一体何なの?」
「お前のその傷は生まれながらに最初からグルメ細胞を持っていた証拠だ。グルメ細胞自体は今より太古の時代から存在したと思われる、それが隔世遺伝によってごく稀に表れる事があるらしい」
「俺の中に最初からグルメ細胞が……」
「最初から傷をもって生まれた者は他の影響を受けにくい。まあ難しい話をしたが単純に才能を持って生まれたと思えばいい」
「そうなんだ……へへっ」
「ええっ!?コイツに才能!?いやいやないですってアカシア様!」
「うるさいな!」
アカシアに才能を持って生まれたと聞いた三虎は笑みを浮かべたが、二狼に茶化されて怒りを露わにした。
「みんな~、ご飯できたわよ」
「やっほーい!待ってました!」
そこに丁度夕食が出来たとフローゼが皆を呼ぶ。二狼はテンションを上げて皆食卓に向かった。そして仲良く夕食を共にするのだった。
―――――――――
――――――
―――
それから三虎の生活を続いていった、アカシア達と各地を周り様々な食材を捕獲していった。
「我に相談?」
「うん、少しいいかな……?」
そんなある日、三虎が零蝶に相談を持ち掛けていた。
「実は俺にも何か自分だけの強みが欲しいって思ってさ……」
「でも三虎は真似をするのが上手い、この間も我の動きを再現していた」
「いや真似しただけで姉者と比べたら威力は月とすっぽんだけど……褒めてくれるのは嬉しいけどさ、やっぱり俺にも兄者たちみたいな俺だけの技が欲しいんだ」
「なるほど」
三虎は自分も一龍達のような自分だけの強さが欲しいと話す。一龍にはマイノリティワールド、二狼にはヘッドシェイカーやエターナルノッキングといった必殺技があるが自分にはそういったものが無い。
「三虎はどんな技が使いたい?」
「そうだな……俺は腹がよく減るから攻撃と同時に腹を満たせるような技が使えたら嬉しいな。まあそんな事は無理だろうけど」
「いや、何とかなるかもしれない」
三虎は半分冗談のつもりでそう言ったが零蝶は何か考えがあるようだ。
「三虎、この間の宴会で舌を伸ばしてグミの実を引き寄せる芸をしていたのを覚えている?」
「ああ、一龍の兄者が酔っ払ってダウンした時のだな。覚えてるよ」
三虎はこの間行った宴会で二狼に無茶ぶりされてやった一発芸の事を思い出していた。因みにこの時に一龍がお酒に凄く弱いことを知った。
「でもそれがどうしたんだよ?」
「あの舌の動きは良かった。極めれば立派な技になる」
「えぇ~……本当か?」
「やる前から無理と言う奴に成長などない、とにかくやる。まずは舌で正拳突き1000回」
「わ、分かった!」
それから三虎は舌を鍛え上げていった、何日も過酷な修行を続けていき暫くした後……
「ふんっ!」
三虎の伸びた舌が大きな岩石を破壊した。
「おおっ、凄いじゃないか」
「舌をここまで巧みに操るとな、見事だ」
「凄いわ、三虎!」
アカシア、一龍、フローゼは三虎の成長を褒めた。
「やるじゃないか、三虎!でもその顔……ぶははははっ!」
「わ、笑うな!」
二狼も三虎を褒めたが攻撃時の三虎の顔を見て思いっきり大笑いした。
「二狼、流石に我も許せない」
「えっ、姉貴?」
だがそこに零蝶が二狼の背後に回り込んで腰を掴んだ。
「久しぶりに空の旅行、行こう」
「ま、まさか……頼む姉貴!謝るから」
「えいっ」
そしてそのまま空に飛びあがり縦横無断に飛び回った。
「や、やめてくれ~っ!」
二狼は珍しくガチで泣きわめいていた。
「二狼の兄者があんなに泣き叫ぶなんて初めて見た……」
「昔、お仕置きでアカシア先生に崖につるされて以来高所恐怖症になったみたいだぞ。まあ偶には罰も与えないとな」
二狼の狼狽える姿に目を丸くする三虎、一龍は昔罰を受けて高所恐怖症になったと説明した。
こうして三虎は自身の強みを手に入れるのだった。
因みに少し三虎をからかい過ぎだと二狼はアカシアから罰として名前を『次郎』に変えられた。零蝶以外は次郎と呼ぶようになった。
―――――――――
――――――
―――
「なあアカシア様、皆……紹介したい人がいるんだけど」
「なんだ、改まって」
ある日次郎がアカシア達に紹介したい人がいると言った。何故かモジモジとしていてらしくないとアカシア達は思った。
「それで誰を紹介したいんだ、というかいつ出会ったんだ?」
「前に一人で遠出した際にちょっとな……とにかく会ってくれよ。セッちゃん、入ってくれ」
一龍の質問に濁しながら答える次郎、そしてどうやらその人物はもう既にこの家の外にいるらしく次郎はその人を呼んだ。
すると玄関のドアが開いて若い女性が入ってきた。まさか女性だとは思わなかったようでアカシア達は少し驚いていた。
「は、初めまして、私は節乃と言います。これ私が作ったお菓子です、どうか召し上がってください」
「これはどうもご丁寧にありがとう。私はアカシア、次郎の父親的存在だ」
女性は節乃という名前らしく自己紹介をしてお菓子を渡した、アカシアもそれを受け取りながら挨拶を返す。
そして節乃を居間に上げて家族たちが質問を始めた。
「節乃さんと次郎はどういった関係なのかしら?」
「私とジロちゃんはコンビを組んだ関係です。後お付き合いをしています」
「コンビィ!?それに付き合ってるぅ!?」
フローゼの質問に節乃は顔を赤くしながらコンビであり交際もしていると話す。それを聞いた三虎は驚いていた。
「まあ、まさか次郎に彼女が出来るなんて……今夜は赤飯ね」
「ちょっ、気が早いっすよ、フローゼ様……」
フローゼは嬉しそうに手を合わせてそう言い、それを聞いた次郎はニヤニヤしながら頭をかいた。
「二人の出会いは?」
「私の住んでいる村が猛獣に襲われた時に偶々そこに居合わせたジロちゃんが助けてくれたんです」
「ほう、やるじゃないか。次郎」
「いや~、それほどでもないかな!」
一龍が二人の出会いの経緯を聞くと、節乃はそう答えた。それを聞いたグレートレッドは次郎を褒める。
次郎は滅茶苦茶ニヤケながら照れていた。一龍や三虎は内心「キモッ!?」と思っていた。
「アカシア、交際ってなに?」
「男女が恋仲として付き合う事だ」
「つまり番になったってこと?アカシアとフローゼと同じ」
「いや、まだそこまでは……ちょっと早くねえか?」
「えへへ……」
零蝶は交際の意味が分からなかったのでアカシアに尋ねる、そして説明を聞いた零蝶は番になったのかと聞くと節乃と次郎は顔を赤くしながら話を濁した。
「とにかくめでたいことじゃないか、今日はご馳走だな」
「そうね、腕によりをかけて作るわ」
そしてその日に節乃の歓迎会が開かれた。その際に出てきたフローゼの料理の味に感動した節乃は彼女に弟子入りを希望した。
フローゼも節乃を気に入って弟子入りを認めた。そしてフローゼは自身の料理の知識や心構え、調理の仕方を惜しみなく教えていくのだった。
――――――――――
―――――――
―――
そしてそれからまた数日が過ぎた。ある日零蝶が家に帰ると近くの木の側に三虎が座り込んでいた、気になった零蝶は彼に声をかける。
「三虎、どうした?」
「姉者……」
三虎は零蝶に声をかけられて顔を上げる、その顔色は良くなくて弱弱しいものだった。
「我に話は出来ない?お姉ちゃんが力になりたい」
「……」
「無理にとは言わない、三虎が話したくないならそれでいい」
「……今日さ、フローゼと人間界に食料の配給をしに行ったんだ」
零蝶の気遣いに感謝しながら三虎が話を始めた。
ある町で食料の配給をしていた際、一人の男性と喧嘩になったらしい。理由はその男がフローゼの弁当を投げ捨てて文句を言ったことに腹を立てたからのようだ。
「なるほど……」
「フローゼは俺が怒ってくれた事が嬉しかった、俺の血や涙は汚れて無くて綺麗だって言ってくれたんだ。でも俺は今でもあいつが許せない、なんであんな奴にまでフローゼがバカにされないといけないんだ……!」
三虎は悔しそうに歯を食いしばってそう言った。フローゼの考えはとても尊くて立派だと思う、でも心が納得できないようだ。
「……我も三虎の気持ちは理解できる。全員がフローゼに感謝するわけじゃない、中には意味もなく批難したりけなしてくる奴もいる。我が睨めば逃げていく弱い奴らの癖に懲りずにまたやりに来る、正直ぶん殴ってやりたいくらい」
「姉者もそんな事を考えるんだ……」
三虎はまさか肯定されるとは思っていなかったようで驚いた様子を見せる。
「でも我はフローゼの笑顔が好き、だから彼女が望むなら我もそうする」
「……姉者は凄いな。俺はどうしても割り切れないよ」
「それならそれでいい。誰もがフローゼみたいに他人に優しくは出来ない、寧ろ大切な人を馬鹿にされて怒らない方がおかしい。だから三虎はおかしくない」
「姉者……」
零蝶の励ましの言葉を聞いた三虎は立ち上がった。
「俺、もっと強くなるよ。心も体も強くなってフローゼが安心して料理できるようにする!姉者の事も守れるようになって見せるよ!」
「うん、楽しみにしてる」
三虎の言葉に零蝶は珍しく目を細めて笑みを浮かべた。
「姉者、今笑みを……」
「そろそろご飯が出来る、家に戻る」
「あっ、ちょっと……」
零蝶を追いかけて三虎も慌てて家に向かうのだった。三虎は願った、こんな日常がいつまでも続いてほしいと……
だがそれは突如として終わりを迎える事になるのだった。
―――――――――
――――――
―――
ある日グルメ界の空に亀裂が走った。捕獲レベル1000以下の猛獣達が異常を察して逃げようと大地を揺らしながら大群で動き始めた。
「何だ、この地響きは?」
「猛獣達が一斉に動き始めています」
「おい見ろ、空に亀裂が走ってるぞ!」
アカシア達も異常に気が付き全員が外に出てくる、すると亀裂が崩れ出して空に穴が開いた。
「零蝶、あの空間から不快な感じがするぞ」
「ああ、奴らが来た」
グレートレッドは目を細めて亀裂を睨みつけ、零蝶はそれが敵の襲来だと察した。
そこから様々な異形の存在が次々と現れた。それは生物とは思えない硬い無機質な体を持った存在達だった。
「なにあれ、機械の生き物?」
初めて見る異形の存在に三虎は身震いする。
その時だった、空間の穴から特に強い力を持った巨大な体を持つ鬼神のような姿をした存在が現れた。
その存在はアカシア達を見つけると話し始める。
「貴様らか、我の弟であるレガルゼーヴァを倒したのは……」
「お前達は機械生命界の刺客か!」
「如何にも……我こそが機械生命界を司る邪神メルヴァゾア、弟の仇を取らせてもらうぞ」
メルヴァゾアはそう言うと控えていた配下たちに指示を出す。
「我が僕たちよ、この世界を破壊せよ。我ら機械生命界に刃向かった愚か者たちを魂の底から後悔させるのだ!」
その言葉と同時に全ての機械生命体達が一斉に動き始めてその一部がアカシア達に向かってきた。
「来るぞ!フローゼ、節乃、下がっているんだ!」
アカシアは戦えないフローゼと節乃を下がらせて臨戦態勢に入る。そして銃を構えた数百体の機械生命体が一斉に射撃を行おうとする。
「この思い出の詰まった家を破壊しようだなど許せんな……移り箸」
だがその機械生命体達は一龍が生み出した大量の箸によって動きを封じ込められた。
「このときの為に親父から貰ったコイツが漸く暴れられるな!」
次郎は拳に牙のような籠手を装着してパンチを放った。
「ギネスパンチ!」
その一撃はまるで狼王ギネスのような形に変化して機械生命体を破壊しながら突き進んでいく。
次郎が親父と呼んだのはアカシアではなくかつて自分を育ててくれたギネスの事で、自身の抜け落ちた牙を次郎にくれたのだ。
次郎はそれを加工して籠手にした、そしてそれを付けてパンチを放てばヘタをすれば地球に大きな被害を出しかねないほどの威力の一撃を放てるようになった。
「ハングリートング!」
三虎も舌を伸ばして機械生命体達を攻撃していく。彼は機械生命体達の事はよくわかっていないが自分達の敵だという事だけは即座に判断していた。
「うげぇ、まじぃ……でも俺だって戦ってやるんだ!」
因みに機械生命体達の味は当然不味かった、でもそれを我慢しながら攻撃を続けていく。
「はあっ、やあっ、てやっ」
可愛らしい声と共に零蝶が拳や蹴りを打ち込んでいく。だが声と裏腹にその一撃は隕石が衝突したような衝撃を走らせて機械生命体達の体を打ち砕いていく。
「ふんっ!」
グレートレッドは金棒を振るい機械生命体達を破壊していく。一度機械生命体には痛い目に合わされた彼は怒気を露わにして攻め立てていく。
どの怒りはグレートレッドの体に変化を見せた。ドラゴンのような鱗に牙、爪が生えた龍人の姿になったのだ。
「かあっ!」
口から凄まじい速度で熱線が出されて機械生命体達を粉々にしていった。
「大威徳雷鳴八卦!!」
そして黒い雷を纏った雷鳴八卦を放つ、その一撃は数百体の機械生命体達を塵に変えていった。
「しっかし数が多すぎねえか?まだまだいけるけど他の被害が大きくなりそうだぜ!」
「どうやら敵は我々だけを狙っている訳ではないようだな。人間界に行かれる前に何とかしなければ……!」
次郎は敵の多さに溜息を吐いた、食没のお蔭でまだまだ戦えるがまるで無限を思わせるかのような数に少し嫌気が刺したのだ。
更に機械生命体はアカシア達だけでなく他の猛獣やグルメ界にも攻撃を仕掛けていた。猛獣達も死んでたまるかと反撃を始めていく。
アカシアは奴らが人間界に行くことを危惧して早めの決着を望んだ。
「我が名はレッゾォ・ロアド!久しぶりの生きた生物の狩りだ、存分に楽しませてもらうぞ!」
そこに巨大な翼に悪魔の様な角を生やし大きな槍を持った機械の生物が現れた。そして意気揚々にアカシア達に襲い掛かる。
「我が槍術を受けるがいい!秘儀・時空断裂……」
その時だった、レッゾォ・ロアドの全身を白い閃光が走った。
「なにが……」
そして一瞬の時間差の後にその巨大な機械の体がバラバラに崩れていったのだ。
「な、なんだとぉぉぉぉぉぉぉっ!!?」
レッゾォ・ロアドは自分に何が起きたのかも分からずにその意思を消してしまうのだった。
「何が起こった?」
零蝶は突然レッゾォ・ロアドがバラバラになって死んだことに首を傾げた。だがすぐにその理由は分かった、何故なら……
「ギネス……!」
零蝶のそばに狼王ギネスが降り立った。レッゾォ・ロアドをバラバラに斬り裂いたのは彼だったのだ。
「なぜお前が……!?」
困惑する零蝶だったがそれ以上に驚く事になる。それはギネス以外に強大な力を持った存在の接近を感じ取ったからだ。
「カアアアッ!」
「シャアアアッ!」
「烏王エンペラークロウ!?蛇王マザースネーク!?なぜ彼らがここに……!」
アカシアは空から現れた巨大なカラスと空から頭だけを覗かせる規格外の蛇を見てそう叫んだ。
現れたのは八王の一角、空の番長と呼ばれた巨大なカラス『エンペラークロウ』と地球を何周も出来る規格外の体を持つ蛇『マザースネーク』だった。
「ブルル……」
「カロロ……」
「マジかよ!鹿王スカイディアに馬王ヘラクレスだって!?同時に見たのは初めてだぞ!?」
次郎は海を渡って現れた背中が巨大な森になっている鹿『スカイディア』と巨大な足で地響きを起こしながらゆっくりと大陸を進む馬『ヘラクレス』を見て叫んだ。
「ウッキキッ!」
「ブオォォォッ!」
「猿王バンビーナ!鯨王ムーン!信じられない、八王が動き出したというのか!?」
小柄ながらも絶大な存在感を放つ猿『キンタマントヒヒ』のバンビーナと漆黒の海に住む八王でもトップの捕獲レベルを誇る鯨『ブラックホールホエール』のムーンが海から現れた。
「まさかムーンが呼び寄せたというのか?」
アカシアは八王が集まっているのはムーンが呼び寄せたのかと推測する、普段は干渉しない八王だがムーンの招集で集う事がある。
それはグルメ界に危機が起きた時に行われるとされている。
「グガァァァァァッ!」
「おお、我が友よ。お前も来たのか」
グレートレッドの側に大きなドラゴンが降り立った。西洋のドラゴンのような体に複数の複眼、そして一本の牙を携えたその竜は『デロウス』、竜王の名を持つ八王の一角だ。
「ガアアッ!グルァァァァッ!」
「……なるほど、そう言う事か」
「えっ、レッドさん今デロウスと話さなかった?」
「言葉が分かるからな。零蝶、どうやら彼らは機械生命界の連中と戦いに来たらしい」
「やはりな。奴らは好き勝手に暴れた、八王のナワバリも攻撃した。そして怒らせた」
デロウスと話すグレートレッドの姿に三虎は驚いた。普段は人間の姿をしているのでドラゴンだという事を知らないからだ。
そしてデロウスから話を聞いたグレートレッドは零蝶に彼らも戦いに来たという。それを聞いた零蝶は納得した。
機械生命界の奴らは王を怒らせてしまったのだ、暴虐武人な振る舞いに遂にキレた王たちが集結したのだ。
もっともバンビーナは昼寝の邪魔をされたので怒ってるのだが。
機械生命界の機械兵達には感情が無い、もし彼らに感情があれば自分達の行いを後悔しただろう。
ここから先は戦いにすらならない、一方的な蹂躙が今始まる……
後書き
我は零蝶、八王が集まった事にはさすがに驚いた。だが当然、王たる者舐められたら終わり、プライドを傷つけられた奴らはもう止められない。
我もフローゼやアカシア達の為に必ず勝利する。
次回第147話『愚か者たちに粛清を!八王の怒りと実力!』で会おう。
次回も美味しくいただきます。
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