不遇水魔法使いの禁忌術式
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
8話
薄暗い地下道を進んでいく。所々へランプがあるが十分な明るさを確保出来てはいない場所をレジスタンスだという男に連れられて歩く。何回も曲がり途中で戻っているような気のするような明らかにこちらを信用してないし場所が漏れないようにと用心している感じの動きなのだろうか。
「レジスタンス…」
「この街の領主と敵対してるってことらしいけど」
「街の外から来た水魔法使いを捕らえてる時点で怪しい場所ではあるものね…」
サーシャと二人で今の状況について軽く話しているが結論は出ない。所詮俺は与えられた力を振るうだけのバカだしサーシャもサーシャでこういう場所に慣れてないみたいだ。…まあなるようになるだろう。
「おい、どうしたそろそろリーダーのところに着くぞ」
そもそも敵に追われているからと言って庇おうという意識の見えるレジスタンスって時点でお人好しな要素が見えている。見捨てて追い返そうとすればそれで良いのに(俺たちは自分から見つけて突っ込んだが)ここに入れた時点で助けようという意思がわかりやすい気はする。
「サーシャはさ、どうしたい?」
俺は彼女の目を見ようと顔を見る。その金眼はどのような色で揺れているのだろうかと、水魔法使いを追い立て捕らえて利用する都市とそれに反抗する不遇なる者たちに対してどのような判断をなすのかと。
「どうしたい…」
リーダーとやらのところへ辿り着く前にどう動くのか決めておきたい気持ちもあるし自分の気持ちだけでサーシャの目的の旅路に干渉するのは良くない。だから俺はサーシャに尋ねる。
結局のところ、見ず知らずの者を助けようと思って行動する誰かをどうしようと思ったとしても俺の嗜好でしかないのだから。
「………判断材料がまだ足りないわね」
彼女は俺にそう告げる。目を合わせずに下の方を向いてそれだけを言う。俺にはまだ彼女の全てがわかるなどと言うつもりもないしどう言うこのような他者に対してどのような方向性を向けるかなんて知るはずもない。
「ふぅん…そっか」
まあ確かにここで答えを出すのは微妙かもしれない。近くにあちら側の人が居るのだから。材料が足りない。
「おう、ここだ…」
控えめにノックをしている男を俺は見ている。何かあったのなら動けるようにと。
「どうぞ」
はっきりとする声が聞こえる。よく通る声の出し方だ。きっとそういう教育を受けている持っている側の存在なんだろう。どこからレジスタンスを運営するような力を持つのか、こんな古びた地下道の存在を押さえているところからやはりそういう存在が居るのだとは思っていたが…
「失礼します!」
部下の男にも気合が入っている。俺らとの初対面のダルそうに対応した時と比べると士気があるように見える。
「ええ、どうぞ」
そこにいたのは茶髪と青い目をした十代後半の少女だ。見た目から推測するに俺よりは年上で身なりの良い少女であった。綺麗というよりは可愛らしいという言葉の合いそうな少女、何故彼女がこうしているのだとか気にはなる。
「あなた方がお客人の…」
「カズキと呼んでくれ」
「……私はサーシャよ」
俺は出来る限り明るく答え、サーシャは警戒しているのかいつも俺と話す時より低いトーンで答えている。緊張して何を信じて行動するかを考えているのだろうか?
「わたしは…シーラとお呼びください」
俺らのようなよくわかっていない相手に丁寧に対応をする少女の顔には疲れが見えていた。
─────────────────────────────────────────
「わたしは…領主の娘」
「領主は…父は約一年前に乱心し水魔法使いをかき集め水と治療の利益の独占を行なっています」
「街の人たちを…街を守る為に兵士へとなった方を使い弾圧し」
「水魔法使いというだけで家族から引き離し」
「……そしてついには“水魔法使いをいち早く見つけた者にはこの金貨を進呈する!”などと焚き付け街へ争いを撒き散らすしまつ…」
「それによくわからない相手と取り引きをしている様子もあり…」
「そしてわたしはそれに嫌気の刺した兵士を連れてこのレジスタンスを結成し地下に潜り…」
「出来る限りだけでも人を助けようとしていたのですが…他の都市の動く様子が見えない現状では…」
「最早、細々と父の行いに反抗し追われる者を匿い支援し逃すだけでは追いつかなくなり早晩この都市が持たない時が来ているのです」
「……我々に手を貸していただけなくとももちろん街の外へ逃す準備はしています」
「あなた方の腕を見込んで依頼しますどうか…どうか父を止める為にお力をお貸しください」
ページ上へ戻る