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だからってなんだよー 私は負けない

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3-6-2

 20分程歩いて先生の実家のお店を目指していて、私は先生の腕につかまっていたけど

「ちょっと 暑くないかい?」

「嫌なん? だって こんな風にして、歩けることって無いやん 私は楽しいし平気やでー」

「それはいいけどさー どうして せっかく帽子があるのに被らないんだ?」

「うん だってぇー ツバが邪魔で 先生にくっかれへんやんかー」 カンカン帽があるのだけど、私はリュックに括り付けていたのだ。

 駐車場が広くとってあって、その奥にお店が、それに連なって2階建ての建物があった。そして、その端っこには鉄骨が組んであって、上はバルコニーになっているみたいで洗濯物が干してあった。

「いらっしゃいませ ナカミチにようこそ」 お店に入ると女の人が静かに寄って来て、落ち着いた声で言ってくれた。そして、ホールのほかの人も頭を下げていた。

「フロァーマネージャーの美桜(みお)さんだよ」と、先生が紹介してくれて、客席のテーブルには3組程のお客さんが居て、清音さんの姿も見えた。厨房が見渡せる待合所みたいなとこを通って案内されたのだが、厨房には武さんと若い男の人と年配の男の人に女の人も動いていた。奥の扉の先には、部屋があって更衣室と書いてあった。又 扉を開けられて、その先にはダイニング、リビングが広がっていた。

「いらっしゃい ここに腰掛けてくださいな」と、女の人が立って居て

「ここのオーナーで僕の母親だよ」

「こんにちは 初めまして 愛崎すぐりです よろしくお願いいたします 今回はお招きいただきましてありがとうございます」

「まぁ まぁ ご丁寧に 耀の母の 三倉美鈴です よろしくネ 掛けてちょうだいな お紅茶でいいかしらー 今、煎れますネ」と、ポットにお湯を注いでいた。

「ミルクしか無いのよー それとも 青い柚子ならあるけどー 清音がね農園にあるからって持ってきてくれたのよ」

「あっ あー ミルクでいただきます」

「すぐりさん さっきのご挨拶も丁寧ね! お母さんから教えられたの? あなたの歳の子の言葉に思えないものー」

「えーとぉー そーなんです バレバレですよねー」

「ふふっ 正直でよろしい! 緊張しないで 普段の言葉でいいですからね」

「ありがとうございます もお ガチガチで・・・でも、落ち着いていて素敵なお店ですね あっ これは、正直な感想ですよー」

「ふふっ 褒めてくださってありがとう お昼の営業はもっとお店の中 明るいのよ 今は、夜の営業が始まったとこなの 落ち着くように少しダウンライトなの あっ そうディナーは8時頃でいいかしら? それまでは、お客様が引き続きね・・・」

「私なんか 気になさらないでください 私 普段も お母さんが帰って来る9時とか10時ですからー」

「そうなの? お母様もお仕事大変なんでしょう?」

「・・・ですね 私が小さい時から・・・少しでも、お手伝い出来たらと、今回のことも・・・先生に助けてもらってー」

「そう 偉いわねー でも、ウチも助かってるのよー いい人に巡り合えたわ」

「あっ そうだ これっ 厚かましいんですけどー ウチの近所で栽培している原本の椎茸と白木くらげ なんです お店で使えないかと、思って 持って来てみたんですけど・・・」

「あらっ 肉厚でおいしそーね それと生の白木くらげね 早速 チーフのとこに持って行って見てもらいます」と、オーナーはお店に戻っていった。

「ふわぁー 緊張したぁー 先生 私 おしっこ」と、トイレに案内してもらった。すると、私が送ったのであろう木の実とか葉っぱがいっぱい飾られていたのだ。そして 「君の今夜の部屋」と、2階に案内されて4つの部屋が続いていた。「ここが僕の部屋 隣は妹の珠実 そして、その隣だ 清音叔母さんが時々使っていた部屋だ」突き当りを出るとバルコニーなんだけど、さっき見た洗濯物はもう取り込まれていた。特に、見晴らしが良いとこじゃぁないけど、西に沈んでいく夕陽がビルの上に輝いていた。

 その後は、オーナーはお店に立つからと居なくなってしまったのだけど、先生からは [ナカミチ]の昔からの話を聴いていたのだ。6時近くになって

「だからー 4時には上がってって言ってるでしょー 武さんがやりにくいんだからー」

「そ~言うなよー 今日は 特別だよ 明日の仕込みを終えたと思ったら チーフが相談したいことがあるって言うからー」 と、オーナーと厨房に居た年配の人が入った来た。

「僕のお爺さんだよ ナカミチの創業者 おじいちゃん こちら愛崎すぐりさん 山の飾りとか送ってくれてるんだ」と、先生に紹介されたけど

「そうか ナカミチは美鈴が立ち上げて頑張ってここまできたんだよ すぐりさんかー 去年のクリスマスはお世話になったなー 清音とサンタさんやってくれて お客様も子供達も大喜びだったなぁー」

 先生は慌てて、口元に人差し指を立てて シーっと 黙って聴いていろってことなんだろう。

「お父さん これっ 琵琶湖の鮎の甘露煮 柔らかめらしいわよ と海老豆 お好きでしょ すぐりさんからいただいたのよ」

「そうか どっちも 好きなんじゃー そうだ さっきのー 武が特別なお客さんに食べてもらうんだと 佳乃と新しいメニューを作り始めていたぞ」

「そうなの それで 遅くなったんだね でも、今日はあんまり飲み過ぎないで、早く寝てよー これっ 炊き込みご飯 これもメニューに組み込むからお父さんに味見してほしいんだってー」

「そうか どれっ 早速・・・う~ん さっきな 手毬風にしてるのを見たんだがな 鶏肉も入って無いので脂っけが足らん あぶらげをな 増やすんじゃぁ無くて、厚揚げでも無くて、あぶらげの厚いもの 細かく刻んで加えたら どうだろうって言っておいてくれ」

「わかりました」と、オーナーは厨房に電話で連絡を入れていた。

「以前のことなんだが・・・美鈴と清音の3人でどこかの湖の見える旅館に泊まったことがあるんじゃ その時にな3人で風呂に入ったんじゃが ワシは娘達を真面に見られなかった 眩しくてなー 成長しとったからな 確か、子供の頃は砂浜で一緒に遊んだ記憶がなんとなくあったんだがー その時は、1人としか・・・ まぁ それは 別として、その時にしじみご飯が出てな あぶらげでも無いしー 何だろうと思った。ほどほどの味をしっかりと伝えて、弾力もある 後から調べたら、福井のほうのあぶら揚げとわかったんだ。うまかったんだ」

「お父さん 飲みすぎよー お風呂のことまで・・・もう 休みなさいよー」

「わかってるよー そうだ 清音もな 美鈴は昔からワシのそばに居て面倒見てくれていたんだが、確か 小さい頃 美鈴と庭で遊んでいた子供が居たなーという覚えがあってな でも、気がついた時には美鈴しか居なかったんだ でも 突然 清音を見た時 あー この子だ 美鈴の妹だって ワシの下の子だと、記憶が戻ってな 嬉しかったよー 涙も出てきたんだ あの瞬間の感動が 今でも神様に感謝しながら 料理を作れているんだろうな」

「わかりましたよ! だから 早く 休んでー 今日は遅いから、お風呂は無しネ お話は 又 明日ネ」と、オーナーはお爺ちゃんを寝室に連れて行った。

「おじいちゃんはね 昔 脳溢血だったかな 倒れて それから記憶がね 今は、所々で思い出すんだが、とぎれとぎれだから・・・突拍子もないことを言い出すんだ。だけど、皆も否定しないで聴くことにしているんだ」

「そーだったんだ だから・・・」

 そして、清音さんから お料理が出来たからお店に来てと、連絡があったみたい。
 
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