だからってなんだよー 私は負けない
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お盆の16日なんだけど、今日送れば明日届いて丁度いいんだろうと、貫次に声を掛けて、私はクロッシュの下にタオルを被って、赤いつなぎに長めの登山靴で、貫次にも長袖、長ズボンの長靴で来るように言っておいた。私は、長めの枝切挟みに大きなバッグも持っていたものだから
「すぐり すごい恰好だなー まさか 頂上まで行くんかぁ?」
「いや 真ん中あたりかなー でも藪ん中も入るよ これっ クマ除けの鈴 ロケット花火もあるよ」
「おいっ そんなに危険なのかー 聞いて無いぞー 蜂だってマムシも居るかもしれないヤン」
「なんやねん 男のくせに ごちゃごちや 言わないの!」
「わかった わかりましたよー おとなしく 付いていけばいいんだろう・・・熊に出会ったら、慌てないで静かに後ずさりすればいいんだよなー その時、すぐりは置いて行くんか どうしょーか 蜂は・・・振り払うんかなー マムシは・・・」とか、ぶつぶつ言いながら付いてきていた。
山の奥に入って、ヒバ、山桜にグミの赤い実なんかを集めて、中程に降りて来て今度はバショウとかヒオウギの黒い種を集めていたら、私の電話が鳴って・・・料理長の武さんからだった。急遽 お誕生日会の予約が入ったのでグミの赤い実をいっぱい用意できないだろうかという内容だった。勿論、私は了解ですと伝えて
「貫次 戻るよ! グミをもっと集める」
「それはええんやけど・・・お前 携帯持っとるんかー?」
「うん 仕事で必要やからー」
「仕事? これって 仕事なんか?」
「そう! 私 [愛の山]って 会社やってるんよ 起業家やー 貧乏から抜け出すねん」 そう 私 会社名を [愛の山]に決めたのだ。
「えっ えーぇ ・・・ すぐり・・・お前は何者なんや」
「そやから 君は従業員第1号やー 会社が大きーいなったら 君は専務な!」
「なんや よーわからんけど・・・おもろそーやな 俺 専務? 専務ってなんや?」
― ― ― ☆ ☆ ☆ ― ― ―
家に戻って、直ぐに、採ってきたものを水槽に沈めて虫とかゴミを取り除くのだ。
「へぇー そんなことまでやるんやー 面倒やのー」
「そやでー お料理に添えるから、気使わんとなー お金にするんやからー あー 此処からは君はもう ええでー 帰っても・・・お金は明日に払うからー」
「うん それはええんやけどー 俺も 手伝うよー 別に帰っても、すること無いしー ヘタしたら 家の手伝いさせられるだけやからー」
「そーかー そーしたらな そこの布巾あるやろー 引き上げて水気とるねん それから、そのキッチンタオルでくるんで袋に入れるんやー」
「へぇー 社長 了解です! なんか 立場逆転やのー」
「ふふっ あほっ 私の相棒や!」
意外と強力な助っ人を得て、作業は順調に進み、貫次に脱気の仕方を教えて、その間に私は納品書と送り状を書いて、保冷剤と一緒に荷造りを終えたのだ。
「あっ もう3時か 3時半までに持って行かなー 私 行くね セブイレに持って行くんやー」と、おばあちゃんからもらった自転車の後ろのカゴに箱を結び付けていると
「あー 俺も 行くよー 帰って、自転車で後から追いかけるからー」
私が駅前あたりをこいでいると、後ろのほうから もう 貫次が来ているのがわかった。なんとか、時間に間に合って、ATMでお金を降ろすと、増えていた。7月分を振り込んでくれていたのだ。
「はい! お約束の分 むきだしで悪いんやけどー」
「えっ ほんまに くれるんか? すまんのう・・・」
「いや 助かった 意外と 心強い・・・あのさー ジュースでも飲む? 喉乾いてへん? 私 出すからー」
表で並んで座り込んで、奴はアイスコーヒーだったけど
「すぐり なんか すごいなぁー 知らん間にすごいことになってる」
「うん 短い間に・・・私も信じられへんのやー」
「それに・・・ATM扱うなんてなー すぐり 変わったのぉー 俺 そんなん できひん」
「あのなー 手伝ってくれてありがとう 助かったわー 案外 頼りになる」
「当り前じゃー すぐりの為やったら いざとなると・・・」
「うん・・・ あのなー・・・ 秘密やけど・・・貫次に私を見せて 後悔してへんでー 正解やったわー」
「そやろー じゃったら 今度 またな・・・」
「あほっ この前だけやー 最初で最後やー 調子乗るな! そや 3日後 また 大丈夫やろか?」
「う~ん 見せてくれるのがか?」 その時、私は 貫次の背中を思いっ切り叩いていたのだが
「ウッ 痛いなぁー すぐりは乱暴で危険な女じゃー 3日後な でも、来週から練習始まるから・・・あかんでー 3年最後のシーズンやからーな でも、終わったら急いで帰ってくるから、荷造りくらいやったら間に合うかもな」
「すまんのぉー 貫次 お前って 案外 ええ奴やのー」と、私は泣く振りをしていたら
「案外とか意外とかって なんやねん 俺のことなんや思っとってん? 俺はもっとええ男なんやでー 女の子のファンも少しは居るぞ! それに、その臭い芝居 やめろって! 俺は、お前のことが、好きやから手伝っとるんやー」
「・・・あのなー それっ 告ッてるんか?」
「そっ そぉやーぁ ・・・あかんか?」
「・・・うん あのな 貫次のことは好きやでー ええ奴やー でもなー もーちょっと 相棒で居てぇなー 正直言うと なんでか 貫次には、そんな気になられへんねー」
「わかってるって 相棒でええんやー そのうちにな!」
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