だからってなんだよー 私は負けない
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4月になって、私は中学1年生。グレーのブレザーに襟元には細い赤のリボンの新しい制服で、入学式なのだ。お母さんも今日はお休みを取ってくれて、一緒に学校に向かって歩いていた。
いきなり、私のお尻をポンと叩いて、自転車の貫次だ。
「長いのぉー スカートが歩いとるのかー」と、走り去っていった。
「なんやのぉー あいつは・・・ いきなり 叩いて行きよった!」
「ふふっ いつも 一緒に遊んでたでしょ」
「そんでも お母さん お尻やでー 女の子なんやからぁー」
「そうねぇー そろそろね」と、お母さんは笑っているだけだった。自分の娘なんだから、もっと気にしろよ! っと思っていた。
入学式が始まって、先生の列にあの人も並んでいるのがわかった。そして、クラス毎に一旦別れたのだけど、1年2組 あの人が私達の担任なのだ。数学と生物の授業を担当してくれるらしい。私 その時 ウキウキとしていたのだ。クラスの中でも特別に私のことを気にしている様子なのだと、私は勝手に感じていたから・・・。
「すぐり なんか 楽しそうね」と、お母さんが話しかけてきたけど
「うん 担任の先生が良かったしね 席の後ろの子ともお友達になったの 橘美里ちゃん 電車で1駅通うんだってー 大変だよね」
「そう 良かったわね 今日は お赤飯炊かなきゃぁね お祝いだもの」
だけど、家に帰るとおばあさんが、お赤飯を持ってきて
「すぐりちゃんが中学に入ったお祝いだから、炊いたんだよー 食べてくれゃー ありゃー すぐりちゃんも もう お嬢さんだねー その制服姿」お母さんが受け取っていたんだけど、おばあちゃんが帰った後
「どーしょーぅかなぁー 炊くつもりだったんだけどー」
「いいじゃん 手間 はぶけたんじゃぁないのー」
「でも 大家さんとこにも持って行くつもりしてたのよ」
「なんで 大家さん?」
「だって 入学のお祝いも貰ってるのよー いろいろと揃えるものに出費も多いだろうからって」
「そーなんだ でも 普段から お母さんはいろいろとお世話してるヤンかぁー」
「それはね あの旦那が居なくなった後 大家さんには お世話になったからー でなきゃー お母さん 途方にくれていたわよー すぐりだって 小さかったから・・・」
「だけどさー ・・・ お母さんは・・・」
「やっぱり 少しだけ 炊くね 明日の朝とお弁当もあるしー」
「どうぞ 気のすむようにしてよー」 と、私 着替えて ハンガーの制服にブラシをかけながら (お母さん せめて 今日は 届けたら、直ぐに 帰って来てよね)と、願っていた。
だけど、届けただけの割には時間がかかって帰ってきた。
「お風呂も洗ってあげてたから、遅くなってしまってね すぐり 今度 中学の制服姿 見せにいってちょうだいよ! 大家さんも楽しみなんだって 自分の孫みたいなもんだからーって」
「うん」と、私は、その時 少し鳥肌が立っていた。だって、お母さんがちゃんとお父さんと離婚していたら・・・私、あいつの家の子になっていたのかと思ったら・・・そんなことになっていたら、いつも 隣の部屋からのお母さんとあいつがあんなことをやっている声を聞かされるのかと、恐ろしいことが頭に浮かんできていたのだ。
「すぐり 中学は 何かクラブ活動するの?」
「うん 生物クラブにしようかと思うの 理科室にね 琵琶湖のスジエビとかワカサギと水草を飼育してるんだよ その観察日記つけたり、新しい生き物を採りにいったりするんだってー それに 三倉先生が顧問なんだぁー 私 あの先生 だぁーい好き」
「三倉先生って 担任の? もしかして いつか イワナのお礼だって 卵のキッシュ持ってきてくれた人?」
「そーだよ だから 先生と私は 特別な関係なの」
「そーなんだ 妙に 入学式の後 すぐりがはしゃいでいるからー そーいう訳なの・・・」
次の朝 私は仕方なくて、登校前に庄爺の家に行って、制服を着た私の姿見せていた。
「おぅ おー すっかり娘になったのー 楽しみだわい」と、何かぞぉーとするような言葉を掛けられたまま、坂道を降りて行くと・・・来た あいつの気配 貫次だ 私は背負っているリュックの下のお尻を手で防ぐようにしていたら、頭の後ろでゴムでまとめて止めている髪の毛をポーンと払うようにしてきた。
「へっへー 尻かくして頭隠さずだなー」
「なんやねん それっ 逆やろー」
「まぁな お前 クラブ 決めたんか?」
「うん まぁ 生物クラブに・・・」
「そーかーぁ 野球のマネージャーにでもと思ってたんやけどなー」
「けっこうです! いつも お尻触られたら たまらんですからね!」
「そーゆうなよー お××ことち××を見せ合った仲やんかー」
「・・・私 そんなん 知らんゆうてるやろー! 変なこといわんとってやーー しばくでー」
「おぉー こわー お前 それより いつも 歩きか?」
「うん 駅で降りて来る友達と待ち合わせるしー それに、自転車は危ないやんかぁー」
「そんなことないぞー 独りで歩いていると、いきなり おケツ触られたり、スカート捲られたりするぞ」
「そんなんするの お前しかおらへんわー 今度 お尻触ったりしてきたら 先生に言いつけるからな! 変態やって!」
「そーゆうなって 愛情表現やんかー」
「なにが 愛情やねん 私は 拒否しますからね!」
「へっ まだ あそこの毛も生えそろってへんのに いっちょ前やのぉー」
「・・・やかましいわー」と、私は貫次の自転車の後ろを蹴とばしていた。
「なにすんねん 危ないやろー 危険な女やなー」 貫次は一瞬よろけたが、そのまま走り去っていった。
そして、駅で電車から何人かが降りて来て、美里ちゃんと連れ立って、もうひとり 菅井花乃ちゃん 隣のクラスで美里ちゃんとは同じ小学校だったということだ。だから、3人で連れ立って登校したのだ。だけど、確かに3人とも、貫次が言っていたような、スカートが歩いているよーな。上級生たちはもっとスッとしている。何んなんなのだろうと思っていた。まぁ ともかく 私の新しい世界が始まっていくのだ。
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