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ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》-

作者:地水
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第29話:蟒蛇からのサソイ

 
前書き
 幕間、一方その頃 

 
 東京・頼打地区。
無辜の人々が平和に行き交う光景が広がる中、近くに立っているビルの窓ガラスが怪しく光る。
人々が気付かないまま、その窓ガラス……その鏡面に映った緑の人影は高く飛び上がって別のビルの鏡面へと入り込む。
やがて街一番を争うほどの高層ビルへと辿り着くと、緑の人影は街の方へと振り向いた。
その緑の人影――仮面ライダーベルデは誰もいない屋上にて一人呟いた。

「未だに不明な点は多いが、ある程度集まったようだな」

ネオライダーに所属する一人であるベルデは自分達と敵対する異世界からの来訪者たちディケイド一行……特に、小狼と黒鋼とファイの3人を調べていた。
一体何者なのかと興味を持ったウワバミの命令により、ケタロス/武田の白井虎太郎の誘拐、サソード/紫電斬刃とドレイク/水野風嵐のエネルギー輸送作戦、謎の飛蝗の仮面ライダー(1号と2号)の戦いなど一行の静観しながら調査を進めていた。
彼らの事については何処から来たのか、出身地は何処なのか等の素性は湧かないままだが、それでも目的は分かった。

「どうやらディケイド達とあの4人は元々別の行動をしていたようだが、今まで集めた会話から察するに奴らは羽根なる何かを探しているようだな」

ベルデはライダー特有の強化された五感を駆使して、遠くの方にて歩いているとある人物達の姿を捉える。
それはサクラと士と夏海であり、どうやら他の仲間とは別行動のようだ。
ついでだ、小狼達の四人目の仲間である彼女のことももう少し調べよう。
そう思い近くの所まで歩み寄ろうとしたベルデ。

だが、足を踏み出そうとしたその矢先、足元が火花が散った。

いや、違う……直前に聞こえてきた発砲音がこれが威嚇射撃のものだとわかっていたのだ。
すぐさま銃撃が放たれた方向へ振り向くと、そこにはこちらを見てにやける一人の青年が近づいていた。

「やぁ、君がネオライダーのカメレオン君でいいかな?」

「貴様は……!?」

「海東大樹。君達ネオライダーに興味があってね、とりあえず士の周りにいるから聞きに来たんだ」

現れた青年・海東はディエンドドライバーを向け、ベルデへ問いかけてきた。
その手にディエンドのライダーカードを構え、ディエンドドライバーの装填口へと挿入する。

【KAMEN-RIDE】

「変身」

【DI-END!】

海東が変身したディエンドは銃口を向けると、その引き金を引いて発砲した。
放たれた光弾をベルデはバク転によって巧みに避けると、Vバックルに収められたカードデッキから一枚のカードを引き抜き、それを自身の召喚機であるバイオバイザーからワイヤーへセット。
ワイヤーは自動的に巻き戻って、そのままカードは挿入された。

【HOLD-VENT】

「シャッ!」

ベルデはカメレオンの目玉を模したヨーヨー・バイオワインダーを装備すると、すぐさま勢い良く投げた。
バイオワインダーは空を切って鋭く飛んでいき、ディエンドの胸部装甲へと掠る。
咄嗟に避けたにも関わらず攻撃が当たった事、相手がかつて"龍騎の世界"に巡った時に見たベルデというライダーでありながらその腕前は上という事にディエンドは驚いていた。

「なるほど、君は相当強い部類のようだね」

「強くあらねばならない……そうでなきゃ隠密担当は務まらない」

「言うねぇ。じゃあこれならどうだい?」

【KAMEN-RIDE…G3!】

「いってらっしゃい」

ディエンドは一枚のライダーカードを装填すると、そのまま引き金を引いて撃ち出した。
赤、青、緑の虚像が重なって出現したのは、青と銀色の装甲で彩られた仮面ライダーG3。
知ってか知らずか、かつてディエンド/海東自身が装着した"G3-X"の前身であり、この世界でディケイド達が共闘した仮面ライダーでもある。
召喚されたG3はサブマシンガン・GM-01 スコーピオンを乱射し、銃弾がベルテを襲う。

「ぐっ!?」

「次はコイツだ」

【KAMEN-RIDE…THEBEE!】

続いて召喚されたのは黄色と黒の装甲を身に纏ったハチのデザインが施された仮面ライダー。
"仮面ライダーザビー"は召喚を完了すると、左手に備えているザビーゼクターの針を向け、ベルテへと向けて接敵。
そのまま左手からいくつものジャブを繰り出していく。

「なんのっ!!」

ザビーから繰り出された針をベルテは躱していくと、地面を蹴り上げて高くジャンプ。
急降下しながらの踵落としを叩き込もうとするが、ザビーは咄嗟に右手でベルテの蹴りを受け止める。
暫しの間拮抗した後、ディエンドとG3の繰り出した銃撃を体を捻って避け、バク転しながら着地。
自分の周囲を一瞥すると、目の前にはディエンド・G3・ザビーと並び立つ三人のライダーが並び立っている。
三対一という不利な状況にベルテは小さくつぶやいた。

「貴様、人海戦術が得意と見た」

「おや、そこまで見抜くなんてすごいね君。どうだい? 僕のお願いを聞く気になったかな」

「貴様の話を聞くかどうかはコレを見切ってからにしろ」

【CLEAR-VENT】

ベルテがバイオバイザーへ新たなるカードを装填、その効果を発動させる。
電子音声が鳴り響くと、ベルテの体は周囲の景色を溶け込むように透明化し、その姿は消えた。
すぐさま周囲を探るザビーとG3……だがその直後、ザビーが首を抑えて苦しみだす。
気付いたディエンドがザビーの足元へ乱射すると、その粉塵がザビーの体……否、ザビーを締め付けていた不可視の糸へ付着して 気づく。
それはベルテのバイオワインダーのワイヤーであり、ザビーの首に巻き付いて食い込んでいたのだ。

「これは……!」

「――シャッ!!」

驚きの声をディエンドの横で、クリアーベントの透明化を解いたベルテがG3の首を両脚で締め上げる。
暫しの間抵抗されながらも、バキリと嫌な音を立ててG3は地面へと倒れ込んだ。
まるで力尽きたように動かなくなると、空気に溶けてその姿が消えていった。
ディエンドの呼び出したライダーの一体を始末すると、次はザビーへと標的を変えて、更なる猛攻を仕掛けてくる。

「タァッ!!」

ベルテの手刀がザビーの首元へと迫り、そして直撃。
常人なら胴体と頭が泣き別れするであろうその一撃によって、ザビーは先程のG3と同じ光景で消えていく。
早くも手駒のライダー2体を倒されたディエンドはベルテの向かってある種の関心を覚えた。

「へぇ、すごいねぇ。本来の仮面ライダーベルテにそこまでの戦闘能力はなかったはずだが」

「まるで他のベルテの事を知っているのうな口ぶりだが、生憎俺はお前が言っている奴らとは違う。俺は俺だ」

「言ってくれるねぇ、君」

ディエンドのお世辞にも聞く耳を持たず、達弁で返すベルテ。
二人の間にただならぬ緊張感が支配し、今にも相手を狩らんとする一手を繰り出そうとした。
それぞれのカードを自身の武器へと装填しようとしたその時だった。


「ちょっとその勝負、水を差させてもらうぜ」


その瞬間、紫の巨大な影が二人の間を通り過ぎた。
這いずるような移動音と甲高い蛇の鳴き声に気づいたベルテは咄嗟に振り向くと、そこへ一人の男が現れた。
その帽子を被った黒服を纏ったウワバミはニヤリと不敵な笑みを向けながら、ベルテとディエンドの両者に立った。

「異世界のライダー相手に白熱してるじゃないか。お兄さん妬けちゃうねぇ」

「ウワバミ様、アナタがわざわざ起こしに来るなんて……」

「面白い事やってる君が言う立場じゃないでしょ? 月虹殿よ」

「……その名前、敵の前で口に出していいのですか?」

ベルテ――"月虹"と呼ばれた変身者はディエンドの前に姿を現したウワバミを心配する。
だがウワバミはそんな事など気にもかけず、ディエンドへと話を持ち掛けた。

「お前が仮面ライダーディエンドこと海東大樹、で合ってるよな?」

「そう言う君は確か、ネオライダーの……」

「ウワバミと気軽に呼んでくれ。とりあえずだ、酒でも飲んで会話するか?」

ニヤリと口元を歪ませ、何処からともなく一升酒を取り出しすウワバミ。
何かある、と思いながらもディエンドは変身を解くと、彼から受け取ったグラスを掴む。
渡されたグラスに何も無い事を確認すると、視線をウワバミへと戻して言葉を紡ぐ。

「僕はこの世界でお宝になりそうなものを探っていただけなんだけどなぁ」

「お宝、ねぇ……生憎とココはいわば玩具箱みたいなもんだ」

「玩具箱だって?」

「楽しくて愉快な面白い物がいっぱいあるからね。華麗なる怪盗である君が狙うお宝なんて検討がつかないさ」

ケラケラと笑いながらウワバミは一升瓶の蓋をあけ、自分のグラスに酒を注ぎ始める。
目の前にいる彼が以前何を考えているのか分からないと思った海東だが、底知れない何かを感じるとウワバミへとグラスを差し出した。
目の前へ出されたグラスへ半透明の酒を注ぐと、海東は恐る恐る口をつける。
酒特有の甘い香りと苦みを含んだ独特の美味さが口内に刺激する中、幾分か警戒していた海東の眉がピクリと動いた。

「これ、大吟醸じゃないのか? それもとてもいいものじゃないか」

「正解! ネオライダーになれば高い酒の一つや二つ入手の融通が効くんだぜ?」

「きっとロクでもないルートなのは言うまでもないが……たかがお酒のために暴れているわけでもないんだろう?」

チビチビと飲む海東の前ではグビグビと飲み進めるウワバミ。
彼はグラスの中に入った愉快そうに訊ねた。

「そりゃなぁ……ところでなぁ海東大樹、お前さんも気になるんじゃないか? お前さんも狙われたアイツ(・・・)の事を」

「あぁ、彼の事か。最初は信じられなかったが、実物を前にすると信じざるおえないさ」

「だろうねぇ。特にお前さんらは驚くだろうなぁ」

「やれやれ。その笑みはどうにも気に食わないねぇ」

海東は目の前で座ったウワバミがニヤケ面を絶やさない事に若干の不満を持ち始めた。
この男が自分が欲しがりそうな何かの情報を隠し持っている事は明らかだ。そうでなければ自分の前で酒を飲みかわすなんて余裕のある事をしないはずだ。
現に先程まで戦っていたはずのベルテもあきれた様子で戦闘態勢を解いていた……つまるところ、身構える必要がないほどこの男は手練れだという事の表れだという事を悟った。
今はむやみに手を出さない方がいいと悟ると、何処からともなく取り出したのは一つの干し肉だった。

「今はこれしか持ち合わせがなくてね」

「ほーう、いいじゃないか。それは?」

「自家製の保存食さ。前の世界で捕った鹿肉で作ったものなんだが、酒の肴には丁度いいんじゃないかな」

「いいね、ああとってもいいね。ありがたく頂くとするよ」

差し出された干し肉を遠慮なくもらうと、ウワバミはそのまま口に運んでかっ食らう。
少し強い塩気と歯ごたえのある感触にある種の満足感を味わうと、再び酒を煽った。
ある程度食べると、満面の笑みで感想を口にした。

「中々いい出来じゃないか。いいねえ、異世界のライダーも味がわかるやつがいるとは上々だ」

「そうかい。気に入ってもらえて何よりさ」

「そうだねぇ、上手いモン食わせてくれたお礼だ。情報の提供と一つの取引をしようじゃないか」

「……へぇ」

不敵な笑みを浮かべるウワバミの言葉を聞いて、海東は感心した。
彼はいかにも含みのある笑顔で提案の続きを語ってくれた。


「まずはお前さんが欲しがりそうな宝になりそうなアイテムの情報をいくつか提示しよう。ネオライダーの情報網で集めた限りのな」


「そんでもって、俺達との取引なんだが……」


「――俺達ネオライダーと一度だけ手を組まないか?」


ウワバミは酒を片手に飲みながら、ニヤリと笑う。
その目の前に極上の宝があるような魅惑的な悪魔のような誘いが海東の前に迫るのであった。 
 

 
後書き
前回は士達とエンプティの話でしたが、今回は変更してネオライダーのウワバミと海東のお話。
腹の探り合いまさぐりあいは難しいですね、まったく←

ディエンドVSベルテ、3対1でも相対できるほどベルテの()ペック強し。
これは13RIDERSのベルテや後年のRIDERTIME龍騎のベルテとはまた違った強さを差別化するべく演出したものです。
当人は一体なんなんだろうか……。

差し出された取引の条件は【ネオライダーとの共闘】、果たして受けるかどうかは今後次第。

次回、正真正銘の異世界からの奇妙な旅人が参上します。 
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