人にも是非
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第一章
人にも是非
冥府そして豊穣の神オシリスはこの時大麦と葡萄を育てていた、緑の肌を持つ端正な人間の男の顔を持つ神はその二つを見て隣にいる妻のイシス若く美しい人間の女の姿をしている彼女に対して話した。
「この二つを使ってだ」
「どうするのですか?」
「酒を造るか」
「酒といいますと」
「実は以前この二つの作物を甕の中に多く入れてな」
そうしてというのだ。
「そのままにしていると腐って汁の様になったが」
「そうなのですか」
「その腐った汁を間違えて従者達が飲むとな」
そうすると、というのだ。
「身体がふらふらとして赤くなった」
「そんなことがあったのですか」
「それを酔うと言ってな」
そうした状態になることをというのだ。
「そしてその汁をだ」
「酒とですか」
「名付けたのだ」
「そうですか」
「そしてだ」
「これよりですか」
「この麦と葡萄からな」
イシスにあらためて話した。
「酒を造る、そして皆でな」
「飲みますか」
「そうしよう」
こう言ってだった。
オシリスは麦と葡萄からそれぞれ酒を造った、それを神々の宴の場で出して共に飲むと誰もが酔ってだった。
楽しい気持ちになった、主神であり太陽神であるラー人間の老人の姿をしている彼も飲んでだった。
そうしてだ、こう言ったのだった。
「これはまたいいな」
「酒はですね」
「実にだ」
まさにというのだ。
「いいものだ、だからこれからもな」
「飲まれますか」
「皆で飲もう」
こう言うのだった。
「宴の時にな」
「普段も飲めますが」
「ではその時も飲もう」
ラーはオシリスに大喜びで話した、こうしてだった。
神々は酒を楽しむ様になった、だが。
オシリスはその中でだ、ふと思ってイシスに話した。
「酒を人間達にもだ」
「飲ませますか」
「酒は実にいいものだな」
「飲めば気が楽しくなります」
「酔ってな、こうした素晴らしいものをだ」
イシスに真顔で話した。
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