野球チームの月刊誌
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第五章
「それだけで悪くてね」
「暗い世の中ね」
「そう、そして暗くなると」
そうなると、とだ。寿はさらに話した。
「笑う門にはっていうね」
「福来るたるね」
「明るいとそこにいいことが来るよ」
「そうなるから」
「だからね」
それでというのだ。
「世の中明るいに越したことはないんだよ」
「明るいからいいことも起こるし」
「それでだよ、けれど」
「巨人が勝つとね」
「もう皆暗い気持ちになるから」
「悪いことも起こるわね」
「実際巨人が強い時は」
実に忌々しいことにとだ、寿は言葉の中にこの言葉も含めて話した。
「世の中悪いことが多いね」
「そうね、景気が悪かったり」
千佳も確かにと頷いた。
「災害が起こったりね」
「悪いことが起こるね」
「世界でも戦争が酷くなったり」
「感染症が流行したり」
「巨人が強いと」
「悪いことが起こるんだ」
世の中が暗くなりというのだ。
「だからね」
「巨人は負けるべきね」
「ずっとね、、もうそれこそ」
寿は本気で言った。
「勝率一割台で百二十敗はね」
「しないと駄目ね」
「千佳もそう思うね」
「ええ」
その通りだとだ、兄も頷いて答えた。
「もうね」
「そうでしょ」
「強い巨人じゃなくて」
「弱い巨人だよ」
「そうでないと」
まさにというのだ。
「お兄ちゃんの言う通りよ」
「弱くないとね」
「ええ」
まさにとだ、千佳はまた頷いた。
「ずっとね」
「そして月刊ジャイアンツは」
先日本屋で見た邪悪を喧伝するおぞましく雑誌はというのだ。
「有害図書に指定して」
「読めない様にすべきね」
「普通に売られて」
世の中でというのだ。
「皆が読める様にするものじゃないよ」
「本当にそうね」
「言うならだよ」
寿は真剣な顔と口調で言った。
「北朝鮮の将軍様の言うことをだよ」
「そのまま言ってるのと同じよね」
「そうだよ」
まさにというのだ。
「巨人のいいことを言うなんて」
「そのものよね」
「巨人は北朝鮮と同じだよ」
「悪いことしかしないから」
「もうね」
「巨人のことを宣伝するなんて」
「北朝鮮のことを言うのと同じだよ」
この国のプロパガンダと、というのだ。
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