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金木犀の許嫁

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第五十話 汗水流してその六

「そのワイン」
「あったかな」
 佐京はこの時は今一つはっきりしない返事で応えた。
「ひょっとしたら」
「ひょっとしたらよね」
「うん、ただ俺は飲んだこと自体ははっきり覚えてるから」
 だからだというのだ。
「言えるよ」
「美味しいって」
「そうね」
 実際にというのだ。
「俺は」
「そうなのね」
「覚えてないなら」
 そのワインを飲んだことをというのだ。
「それならね」
「尚更よね」
「そう、もう一度ね」
 それこそというのだ。
「飲もう」
「それじゃあ」
「そして」 
 さらに言うのだった。
「美味しいことを知るか思い出すか」
「どっちかね」
「そうなるよ」
「そのワインはいいですね」
 幸雄はカツ丼を食べつつ言った、見れば五人共それぞれのメニューのボリュームは相当なものである。
「私も好きです」
「そうなんですか」
「兎角甘いです」
 そのランブルスコワインはというのだ。
「その甘さが好きです」
「そうですか」
「それで佐京君が言った通り発泡性で」
 そうしたワインでというのだ。
「美味しいですから」
「だからですか」
「是非です」
「買ってですね」
「飲まれて下さい」 
 こう言うのだった。
「その様に」
「そうさせてもらいます」
 夜空は幸雄にも応えた。
「私も」
「それでは」
「それとです」
 さらに言うのだった。
「ランブルスコはお肉にもパスタにもチーズにも合います」
「赤ワインだからですね」
「そうです」 
 だからだというのだ。
「ロゼの方もそうです」
「じゃあ白は」
「魚介類や和食です」
 こちらだというのだ。
「合うのは」
「そこは同じですね」
「他のワインと」
「そうですね」
「本当にお勧めなので」
「美味しくて」
「是非です」  
 こうまでだ、幸雄は夜空に言った。
「召し上がられて下さい」
「そうさせてもらいます」
「それじゃあ」
「ワインを飲みますと」
 白華はにこりと笑って話した。
「大人になった気分になれます」
「それはあるわね」
 夜空も確かにと笑って頷いた。 
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