ボーイズ・バンド・スクリーム
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第25話 宵闇に消える
前書き
みなさん、こんばんは!今回はワンクラ回です!ワンクラ→ダイダス→トゲトゲと繋げていく予定です!よろしくお願いします!
ベイキャンプ1日目のトリ。ONES CRY OUTの時間である。大きいほうのライブ会場だ。最終演者であるためか、はたまたワンクラの知名度のためか客は寿司詰め状態だ。茹だるような熱気に包まれている。観客の盛り上がりは最高潮。名前を売るには絶好のタイミングだ。
「みんな来てくれてありがとう!ONES CRY OUTです!初めましての人も、そうでない人も是非聞いてください」
ワンクラの代表曲である『終わりの先へ』。王道ロックが会場を駆け巡る。客の反応は悪くない。曲に合わせて身体を揺らしたり、手を振ったりしている。
「フェスの終わりって、なんか寂しい気持ちになるよな。まだ1日目だけどさ…ちょっとだけ俺たちと“しんみり”しないか?」
一曲目を終え、一瞬の静寂の中、瑞貴が観客に語りかける。春樹のピアノが静寂を破り、瑞貴の歌声が観客を優しく包む。新曲『宵闇に消える』は重低音のロックバラード。ピアノとボーカルから流れるように金清のギター、俊哉のベース、健斗のドラムが加わる。
「これは…失恋?いや、別れの歌かな?」
「けっこう切ない感じだよね」
「もうすぐ2枚目のアルバム、発売するだろ?きっとアザレアに繋ぐためにバランス考えたんだ。けど白石のやつ、いったい誰のこと歌ってんだよ…」
観客の中にはトゲナシトゲアリのメンバーもいる。仁菜とすばるが曲の感想を言い合っていると桃香が会話に加わる。
「桃香さん、めっちゃ意識してんじゃん!」
「うっ、うるせえなっ!」
そして案の定、すばるに揶揄われていた。
(ふーん。結構、楽しそうに叩いてるのね)
会場の後ろのほうにはヒナたちダイヤモンドダストの姿。ヒナは腕組みをしながらも自分のファンだと言っていた健斗のほうに目をやる。八重歯を覗かせながら無邪気にドラムを叩いていた。
「やっぱり気になるの?ドラムの健斗君…だっけ?犬みたいで可愛い子だよね」
「ぜんっぜん、違いますっ!」
「まあまあ。ファンの子は大事にしないと、ね?」
「そういうんじゃないですから」
まるで聞く耳を持たないナナに呆れ気味のヒナ。そんな2人をアイとリンは微笑ましく見守っていた。
序盤から終盤にかけて曲調が徐々に激しくなる。そして減速。ライブの終わりを告げる新曲が夜に溶けていく。最後は再びピアノとボーカルで終わった。転調とは少し違うが今までのワンクラにはないテイストの曲だ。瑞貴の表現力がライブごとに増していくとファンの間で話題である。『演歌ロイド』『おじいちゃんの七光り』等、散々ネットで叩かれており悔しい思いをたくさんしてきたのだろう。他の楽器隊も確実に演奏のレベルが一段上がっている。きっとアザレアや既存の曲も進化しているはずだ。
「瑞貴さん、また歌、上手くなってる…」
「…私たちも負けてられないな」
「はい!」
ワンクラのライブを観てトゲナシトゲアリのメンバーも翌日のライブに向けて気持ちを後にするのだった。
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