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四輪の薔薇

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第二章

 息子はまだ独身でその中で舞踏会の場で一人の若い美女と出会った、それで彼は父親譲りの思い立ったらの行動でだった。
 プロポーズした、するとその南部の雰囲気の強い美女は彼に答えた。
「今は待って」
「今すぐに返事は出来ないか」
「考えさせて。あなたのことは聞いているわ」
 彼のことはというのだ。
「アトランタからこちらに来てバーボンを造っているわね」
「そうしているよ」
 息子はその通りだと答えた。
「実際にね」
「真面目に働いているわね」
「そのつもりだよ」
「人柄も。いいと思うわ」
「それでもなんだ」
「まずは私自身考えて」
 そうしてというのだ。
「親や周りともお話して」
「決めるんだ」
「次の舞踏会までに決めるから」
 そうするからだというのだ。
「待ってね、イエスなら」
「その時は」
「四輪の薔薇を付けて出るから」
「そうしてくれるんだ」
「次の舞踏会までね」
「待つよ」
 彼はそれならと応えた、そうして次の舞踏会まで待った。まさに一日千秋の思いで待ち一刻一刻が待ち遠しかった。
 だが時は何があっても進む、そしてその舞踏会の時にだった。
 彼女は四輪の薔薇を身に付けていた、彼は彼女のその姿を見て微笑んだ。
 こうして彼は伴侶を得たがその話を聞いた父は笑顔で言った。
「うちの酒の名前が決まったぞ」
「そうなのか」
「お前達の結婚でな」
 息子夫婦を前にして話した。
「そうなったぞ」
「そうなんだな」
「ああ、四輪の薔薇がイエスの返事だったからな」 
 息子の新妻を見つつ話した。
「だからそれだ」
「薔薇を酒の名前にするか」
「ああ、どうだ?」
「いいな、やっぱり薔薇はな」
「印象がいいな」
「それも四輪となるとな」
 息子は父の言葉に頷いて述べた。
「尚更な」
「そうだろ、だからな」
「ここはか」
「その名前にする、それでいいな」
「それじゃあな」
 息子もそれならと頷いた、そうしてだった。
 酒の名前が決まった、まさに四輪の薔薇となった。そうして今に至る。
 ケンタッキー産のバーボンの中でも名ブランドとして知られるフォア=ローゼズにはこうした歴史がある。恋愛と結婚がその名前になったのだ。そのことを意識しながら飲むとこの酒は尚更美味いという。ケンタッキー州とバーボンに伝わる一つのロマンスの歴史である。


四輪の薔薇   完


                   2024・6・13 
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