| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

リリカルなのは~優しき狂王~

作者:レスト
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十八話~白騎士~

 
前書き
待ちに待った時が来たのだ。
落とした単位が、無駄死にでなかったことの証のために。
再び投稿の理想を掲げるために!
この物語を完結させるために!
暁よ!!私は帰ってきたーーー!!

 

 
ホテル・アグスタ


ライは裏手の警護に回るために移動していた。移動中、先ほどの戦闘の簡易データを蒼月に報告しておらいながらである。
全ての情報を聞いた後、ライは映像を呼び出す。その映像に写っているのは召喚魔法でガジェットを送り込まれた瞬間の映像。ライが注目したのはその魔法陣である。その魔法陣に彼には見覚えがあった。

ライ(さっきの召喚魔法……ルーがここにいるのか?)

それはライがこの世界で初めて見た魔法。自分にとっては信じていたい一人の少女の姿が彼の頭に過ぎる。

ライ「…蒼月、センサーの感度を上げて周辺の警戒を。」

思考の海に沈みかけていたが、作戦中であることを思い出し蒼月に指示を出す。

ファントム「イエス マイ ロード」

自分の相棒から帰ってきた言葉を聞き気持ちを切り替える。そして少し遅くなっていた歩調を早める。すると前方から合流しようとした内の一人が歩いてきた。向こうも気がつき小走りでライに近づいてきた。

スバル「ライさん。」

ライ「スバル。ティアナと一緒のはずじゃ…」

スバル「えー…と、周辺のチェックが終わったのでその報告を…。その間はティアに警備をお願いして…」

何かをごまかすような口調のスバルを見て、ライは先ほどのエリオ達の反応を思い出す。いつも明るい雰囲気を持ち、部隊内のムードメーカーであるスバルが目に見えて暗い雰囲気を纏っていたため流石にライも気になった。「ほんの数十分の内に一体何があったのか。」と、ライは疑問に思う。しかしいくら考えたところでその答えが出る筈がない。先ほどの報告にも『スターズF、後方待機』としか残されておらずその詳細までは分からなかった。だから彼は素直に聞くことにした。

ライ「…何かあったのか?」

スバル「えっ、いや、その………」

スバルは事実を口にするかどうか迷っていた。自分はティアナにさっきのミスを悔いてほしくないために彼女に「気にするな」と言った。それは間違いなく本心である。しかしそれを簡単に他人に話していいものではないことはスバルにもわかっていた。
それにティアナのパートナーは自分である事に少なからずスバルも誇りに思っている。だからこの問題も自分たちで解決したかったのだ。
ここでライに話すことは簡単である。そして「ティアナのことを頼みます」と言えればそれはどれだけ気が楽かと考えてしまう。だがそれは彼女のパートナーであるスバルにとっては裏切りになると思いその考えを否定する。
スバルが黙り込んでいるのを見かねたライは声をかけようとするがその前に別の声が割り込んだ。

蒼月「警告。こちらに接近する熱源多数。」

ライ・スバル「!」

蒼月「ホテルの正面側に機影9、背面側に機影1」

ライ「機種は?」

蒼月「移動速度から推測するに正面側の機影は全て月下タイプと予測されます。残りの一機はデータに該当するものがありません。」

スバル「じゃあ、それって新型?」

蒼月からの報告にスバルは思わず声を漏らす。ライはそれを聞いて一瞬罪悪感に囚われた。その新型も確実にライの渡したデータ内に存在する機体である。しかしそのデータを彼は機動六課、そして管理局に引き渡してはいない。それは事情を知っているはやてと話し合った結果であった。『犯罪者が作り上げた物』でなければならないナイトメアフレームのデータをライがこれ以上もたらすわけにはいかず、一時期は部隊内だけでも対策のためにデータ開示を検討したが危険度の方が高いために見送った。
そのためライは敵にデータを開示し、味方にデータを開示できないことに後悔と罪悪感を感じていた。

ライ「蒼月、情報を部隊全体にリンクさせてくれ。スバル、君は正面の方に行け。副隊長達と合流して敵の迎撃を。」

自分の感情を抑えつつライは指示を出す。たとえデータを開示できなくても自分にできることを最大限するために。

スバル「ライさんは?」

ライ「僕は背面の一機を叩く。ティアナがいるのなら二人で叩ける。それに新型なら僕が行かないと。」

スバル「了解です!」

スバルは返事をするとマッハキャリバーのローラーを起動させ駆けていった。それを見送ったライもティアナと合流するべく駆けていく。

ライ「蒼月、敵の位置は?」

蒼月「ここから約3キロの地点を移動しています。」

ライ「スターズ4の位置は?」

蒼月「私たちと敵の直線状にいます。」

ライ「よし。回線を開いてくれ。」

ファントム「了解。」

ライ「こちらゲスト1。スターズ4聴こえるか?」

ティアナ『……ラ…イ………さ…ん?……』

通信は繋がったがそれはノイズ混じりで聞き取りにくいものであった。そこで疑問に感じたのは蒼月のスペックについてである。現在の蒼月のスペックはリミッターがかかっているとは言え他のデバイスよりも確実に高水準なセンサーと通信能力をほこっている。その証拠にシャマルのクラールヴィントのセンサーよりも先に敵の増援を探知できた。さらにガジェットのAMF内にいる味方に通信した時も特に問題なく交信はできていた。にもかかわらず今はそれができない。

ライ(新型のAMFはフィールド型?しかもガジェットよりも出力が格段に高いのか?)

蒼月「マスター、スターズ4との交信が途絶しました。」

ライ「!」

蒼月「徐々にAMFの濃度が上がってきています。原因はそのせいかと思われます。」

ライ「急ぐぞ!」

一瞬最悪の光景を想像してしまったが、蒼月の報告に少し安堵する。ライは声をかけると走る速度をさらに上げた。



ホテル・アグスタ裏側


ホテルの裏側。そこにあるのは正面の煌びやかさとは違い、暗いイメージを抱かせるような場所であった。そんな場所に現在立っている人物が一人。スターズ4、ティアナである。
ライからのノイズ混じりの通信が途切れたことで落ち込んでいた意識が若干なりを潜め、今は警戒心が戻っている。

ティアナ「クロスミラージュ、誰かと通信できない?」

クロスミラージュ「高濃度のAMFが展開されているため現状では不可能です。」

ティアナ「…」

現在彼女の心に渦巻いているのは不安という名の恐怖であった。いつもの彼女であれば冷静に判断を下し何らかの行動に移っていたかもしれない。しかし自分が何かの判断を下そうとすると、先ほどのミスが頭を過ぎる。
「本当にこの判断は正しいのか?」
「自分はまた失敗をするのではないか?」
「次は誰を傷つけるのか?」
そんな考えに至ってしまい、その結果彼女は何も出来ないでいた。

ティアナ「………ァッ、ハァハァ」

不安と焦りから自然と息が上がる。
そんな中いきなり背後にしていたホテル側から甲高い金属音が響いた。

ティアナ「ッ!」

咄嗟に両手のクロスミラージュを音のした方に向ける。だがそこにあったのはゴミとして集められていた空き缶の一つが転がっているだけの風景。それを見て一瞬安堵しそうになるティアナ。
それが命取りであった。

ライ「ティアナ!下がれ!」

ティアナ「え?」

突然かけられた怒声に呆けた声を出しライを見るティアナ。ティアナの目に映るのは焦った様子でこちらにかけてくるライの姿。
だがライの目に映るのはティアナだけではない。ライの目に写っているのは呆けているティアナと、手に持った剣を振りかぶりティアナに切りかかろうとしていた白いナイトメアフレーム。ランスロットであった。

ライ「アクセル!」

ライは反射的に叫びティアナとランスロットの間に割り込み、斬撃を蒼月で受け止める。辺りに金属同士が擦れる擦過音が響く。ライの背後でティアナが状況を把握し何かを言っているが聞き取る余裕がライにはなかった。
蒼月の刀身とランスロットが持つ剣の刀身が接触している箇所を見る。蒼月の刀身はMVSのおかげでランスロットの剣に食い込んでいるが途中で止まっていた。そこでライは気付いた。フィールド型のAMFを展開していたのはランスロットではなくホテルの正面に現れた増援の方であると。
MVSが刀身に食い込んだ瞬間、MVSの出力が落ちた。それは剣にAMFが展開されている証拠である。これまでの敵機のデータから収束型とフィールド型のAMFを同時に展開するのはエネルギーの問題で不可能であると判明している。その為、ライはその予測にたどり着いた。
攻撃を防がれたことを確認したランスロットは一度離れ距離をとった。それを機にライはティアナに話しかける。

ライ「スターズ4、怪我は?」

ティアナ「えっ、わ、私は大丈夫です。」

ライ「ならここから離脱して隊長の誰かに増援の要請を―」

ライが全て言い終わる前に再びランスロットが突っ込んでくる。先ほどの攻撃を受け止めた際、その重さを考え避けようとするが後ろにティアナがいることを思い出し踏みとどまる。ランスロットの攻撃を受け止める瞬間、蒼月の声がライの耳に届いた。

蒼月「敵AMF、フィールド型に変異。」

ライ「!」

蒼月「出力が集束型と同じレベルです。」

ライ「なっ!しま…」

蒼月が言い終わると再び刀身同士がぶつかり鍔迫り合いになる。しかし先ほどのものと違い今回は明らかにライが押されている。
ライは高出力のAMFによる負荷のせいで身体強化の出力が下がっていることに内心舌打ちした。
苦悶の表情を浮かべながらもライは刀身を押し返そうとする。自分の身体が軋む音を耳にしながらも力を込めていく。
しかしその均衡は唐突に崩れた。

ライ「くっ!」

いきなり身体強化が解け身体が重くなる。突然のことで蒼月を握る力が瞬間的に緩まる。
均衡が崩れた瞬間、ランスロットは剣を振り抜きライを切りつけると同時に吹き飛ばした。そのままライはホテルの壁に叩きつけられ倒れる。

ティアナ「ライさん!このっ!」

目の前でライが倒されたことで闘争心を蘇らせたティアナはライからの指示も忘れクロスミラージュを構えた。



ホテル・アグスタ正面


正面からの増援は蒼月の予想とは違い月下ではなかった。ナイトメアのデータが少ないため最も移動速度の酷似していた機体が月下であったために、蒼月は敵の種別を月下であると予測していた。
しかし実際に敵の増援として現れたのはグロースター。そしてその手には大型のランスを携えていた。増援の九機は全て同じ武装を装備し射撃用の武器は装備していなかった。そのことに当初は安心していた機動六課であったが、戦闘が長引くにつれ焦り始めた。
グロースターはそれぞれ三機編成で動いておりその内の二機はランスに収束型のAMFを、残りの一機にはフィールド型のAMFを実装されており攻守のバランスに優れていた。敵がフィールド型のAMFの効果範囲から出てこないため魔法の効力が弱った状態で戦わなければならないのだ。
現在はなのはとフェイトの二人が合流し、防衛線を維持していた。

シグナム「紫電一閃!」

AMFの効果範囲内にありながらカートリッジシステムを最大限活かしながらシグナムは奮闘していた。居合抜きの要領で放たれた斬撃がAMFを纏ったランスに食い込み、AMFの出力を鈍らせる。

シグナム「テスタロッサ!」

シグナムの掛け声を聞き、近くにいたフェイトはサイズフォームのバルディッシュを構える。

フェイト「バルデッシュ!」

バルディッシュ「ブリッツ・アクション」

カートリッジを消費し高速移動用の魔法を発動させシグナムと、シグナムと対峙している敵機を通り抜けその奥にいたフィールド型のAMFを展開している機体に迫る。
近づいてきているフェイトに気付いた敵は手にしたランスを構え、迎撃しようとするが既に背後に回り込んでいたフェイトはコクピットブロックを切り裂いた。

フェイト「これで全部。なのは!」

グロースターが停止したのを確認したフェイトは上空で待機しているなのはの方に振り向き声を上げた。
なのははレイジングハートの先端をシグナムと斬り合っているグロースターに向ける。

なのは「行くよ!レイジングハート!」

レイジングハート「カートリッジロード」

なのは「ディバイ~~ンバスターーー!」

掛け声と共に直径が人と同じ程の収束砲が放たれる。着弾する瞬間シグナムは咄嗟に離脱する。離脱したシグナムには目もくれず自身に迫る魔力砲を自分の持つランスで受け止めようとする。だが先ほどシグナムが与えた損傷で本来の出力のAMFが展開されていないため、受け止めきれずに直撃をくらい大破する。

なのは「さぁ、どんどん行くよ!」

自らを鼓舞するように声を出し次のターゲットに向けレイジングハートを構える。
なのはとフェイトが合流してから開始したのがフィールド型のAMFを装備している敵機の排除である。敵機に対しての最大のアドバンテージである遠距離攻撃はAMFによって弱体化されてしまう。ならばその原因を排除しそのアドバンテージを取り返そうとしたのだ。
先ほどフェイトが破壊したのが最後のフィールド型を搭載した機体であった。そしてそれらが破壊されたことで戦局は掃討戦の様を呈していた。
 苦戦していた戦局をひっくり返すことに成功した一同は心の余裕を取り戻していた。
 しかしだからこそ気付けなかった。ホテルの裏手側の通信が途絶していることに。



ホテル・アグスタ裏側


 戦闘の破壊音が響く中、ライの意識は朦朧としていた。

ライ(……ぼくは…なにを……して…)

 霞んだ視界に映るのは土煙。そして耳を打つのは戦場で聞きなれた音。

ライ(…爆発……戦場…そうだ…ぼくは戦っていたんだ…家族を守るために……)

 ライの脳裏に過るのは最愛の母と妹。そしてその笑顔を壊そうとする敵。

ライ(戦わないと……敵を全て………倒さないと……)

はやて『過去は変えることは出来ん。でも未来を変えるために今を生きることは出来る。』

 自分の意識に介入するように新しい声が響く。

ライ(…敵を…滅ぼさないと……)

フェイト『もうそんな悲しい目をしないで。苦しければ正直に言ってもいいんだよ。』

 響いてくる声は優しい言葉を紡いでいく。

ライ(守らないと…)

 そして自身の体に走る鋭い痛みでライは意識をハッキリさせた。


ティアナ「きゃあ!」

 ライの負傷により頭に血が上ったティアナはランスロットと戦闘していた。だがティアナ一人では敵うはずもなく追い詰められていた。
 尻餅をついた彼女はすぐに立ち上がろうと顔を上げる。だがそこには手にした剣を振りかぶる白騎士の姿があった。

ティアナ「あっ…」

 それを見たティアナは恐怖し、目を瞑る。そして数秒の後、自分に暖かい液体が掛かる感触があった。

ティアナ(私、死ぬんだ。)

 その液体が自分の血だと思ったティアナはどこか他人事のようにそう思った。

ティアナ「………?」

 しかしいつまで経っても痛みを感じない事に疑問を覚え、目を開ける。
 そして彼女の視界に映ったのは血を流しながらもランスロットの剣を受け止めているライであった。

ティアナ「ライ…さん?」

 ティアナの言葉には返事をせずにライは動いた。蒼月の刀身を少し引き先ほど入れた罅に斬撃を入れる。その結果、罅が大きくなりその剣は折れた。
 剣を折られ一度距離をとるランスロット。すぐにもう一本の剣を取り出そうとする。
 それを眺めつつライがティアナの方を一瞥し言葉をかける。

ライ「スターズ4、これからクロスミラージュにあの機体のAMFについてのデータを送る。そのデータを持ってホテルの前面の部隊に合流。隊長陣の誰かを応援で呼んで来てくれ。」

 ライが早口で指示を出す。
 ティアナはそんなライを見て青ざめていた。ライのバリアジャケットは前面が破れ、その奥から溢れ出すように血が流れている。そしてライの表情は苦悶を滲ませ、その銀髪は自らの血で赤く染まっている。自分にかかったのはあれであると彼女は理解する。
 彼女は武装隊の一員ではあるが、非殺傷設定の存在であまり血に慣れていなかった。
 彼女が呆然としている中手元のクロスミラージュが光る。

ライ「データの転送が終わった。行って。」

ティアナ「えっ…あぅ…」

ライ「早く!」

 呆ける彼女に怒鳴りつける。肩を一瞬大きく震わせ立ち上がりティアナは駆け出す。
 ライは蒼月を握り直しランスロットを見据える。

ライ「蒼月…僕の体の状況は?」

蒼月「右胸に致命傷。現在、傷の手当てに魔力を大幅にまわしています。」

ライ「両腕と両足は?」

蒼月「軽傷。深刻なダメージではありません。」

ライ「……傷の手当を中止。生命維持レベルを最低値に設定。使える魔力は全て戦闘にまわしてくれ。」

蒼月「警告。それではマスターの命にかかわります。」

ライ「僕が生き残れても、守りたいモノが守れなければそれこそ意味がない。ここで僕が退けば、オークションの出席者が死ぬ危険がある。だからこいつはここで倒す。」

蒼月「…わかりました。」

ライ「ありがとう。」

蒼月「しかし、約束してください。絶対に死なないでください。」

 蒼月の言葉にキョトンとしてしまうがすぐに表情を変え、力強い言葉を返す。

ライ「もとよりそんな気はないよ。」

 ライが言い終わるタイミングでランスロットがこちらに向かってくる。それと同時にライは叫ぶ。

ライ「リミッターリリース!」

 そう叫ぶとライから蒼月に注がれる魔力量が増える。それと同時に応急処置に回していた魔力がなくなり出血量も増える。
 それを意に介さずさらにライは叫ぶ。

ライ「フォルム、セカンド!チューニングシステム起動!」

 ライが両手で持っていた蒼月が一瞬光を放つ。光が収まるとライの両手にはそれぞれひと振りずつの刀が握られる。その刀身は赤く染まりMVSが起動している。
 ランスロットが間合いに入り剣を振り下ろしてくる。
 ライはそれを受け流すようにそらし細かく移動していく。

ライ(同じ轍は踏まない。)

 先ほどライの身体強化がいきなり解けた原因を蒼月が既に解析していた。硬直状態で立ち止まっていたライを中心にAMFが収束されたのだ。その為魔力を分解され身体強化が解けた。
 厄介な能力ではあるがティアナとランスロットの戦闘を記録していた蒼月はその性質を見抜いた。ティアナは基本的に射撃魔法で中、遠距離から攻撃していた。その為彼女とランスロットの距離はある程度開いていた。しかしそれでもティアナにむけてAMFを収束させればすぐに無効化できるがそれをしなかったのだ。このことから『自機からある程度近い位置でないと収束ができない』と予測ができる。
 さらにライと斬り合っていた時のタイムラグから『収束するのに少し時間が掛かるということ』。
 以上の予測からライが選んだ戦闘方法は『高速戦闘』であった。

ライ(もっと早く!)

 ライがランスロットの背後に回り込むがランドスピナーを使った中心地旋回ですぐに対峙する。その勢いを利用し横凪ぎの斬撃をライに向ける。
 ライから向かって右から来る斬撃を右手の刀で受け止め刀身を剣に食い込ませる。食い込んだ瞬間ライの足元に魔法陣が広がりライの動きが加速する。食い込んだ刀身の上から膝蹴りを叩き込み、剣を再び折る。
 折れた剣を投げ捨て、スラッシュハーケンを射出してくるランスロット。だがランスロットが射出しようと構えた時点でライの姿は既にそこにはなかった。代わりにそこに残るのは白銀の魔法陣。
 さらに加速魔法を発動させたライはランスロットの右斜め後ろに立つ。左手に持った蒼月を右足の駆動系に差し込む。ランスロットがライの位置を認識し行動しようとするがライの動きの方が早かった。
 そのまま差し込んだ刀を起点に体を持ち上げそのまま右手の刀をコクピットのある位置に差し込む。差し込んだ箇所にあるのは制御系と駆動系をつなぐケーブルがある部分。そこを寸分違わずに狙い、切断されランスロットは動きを止めた。

蒼月「敵機の停止を確認。生命維持を最優先。リミッターを再設定。」

 戦闘が終了したため蒼月は自分の設定を元に戻していく。そこで蒼月は気付く。ライの反応がないことに。

蒼月「マスター?」

 蒼月が声をかけると同時にライがランスロットから崩れ落ちる。

蒼月「マスター!大丈夫ですか?!」

ライ「うん……なんとか…」

 弱々しい声ではあったがしっかりと返事をする。

蒼月「立てますか?」

ライ「少し難しい……かな。」

蒼月「周辺にナイトメアの反応はないのでしばらくじっとしていてください。」

 ライはそう言われると緊張を解く。今は生命維持に魔力を回しているため先ほどよりも幾分か楽にはなっていた。

蒼月「敵使い魔の反応数は1、敵機に接触します。」

 蒼月のその報告でライは視線を少し動かす。その視線の先には確かに小さな虫のようなモノがあった。

ライ(敵の偵察か?)

 血を流して、少し朦朧としている頭でそう考える。だがその予測は裏切られる。その使い魔がランスロットに沈みこむ。

蒼月「敵、再起動。」

ライ「な!」

 いきなり動き出すランスロットに驚愕する。

ライ「くっ―」

 痛みをこらえ右手に持つ刀を支えに立ち上がろうと体に力を込める。

ライ「ぐっ、ゲホ、ゲヒ…」

 ライの口から血が吐き出される。その不快感をねじ伏せランスロットを見据える。敵はこちらに手を伸ばしてきていた。

蒼月「マスター。」

ライ「止めるな、蒼月。」

蒼月「違います。間に合いました。」

ライ「?」

 蒼月の言葉を疑問に思った瞬間ライの視界の端に金色の光が映った。

フェイト「うち抜け雷神!」

バルディッシュ「ジェット・ザンバー」

 打ち出された魔力の刃に飲まれランスロットは今度こそ大破した。
 そしてライのそばにフェイトが駆け寄る。

フェイト「ライ!」

ライ「フェイト?」

フェイト「ティアナに頼まれて応援に来たよ。他に敵は?」

蒼月「敵の反応はありません。」

フェイト「そう…ライ。」

 そこまで聞きフェイトはライに声をかける。だが返事の代わりに帰ってきたのはライがフェイトに倒れこむ音であった。

フェイト「え?」

 ライの血で自分のバリアジャケットが汚れたことを頭が理解するのを拒否しようとした。

蒼月「警告!失血量が危険域です!早急に手当を!」

フェイト「!シャマル、ホテル裏手にすぐに来て!ライが負傷してる!」

シャマル『わかったわ!』

フェイト「蒼月、君はライのバイタルデータをシャマルに転送して!」

 蒼月の報告で弾かれたように声を上げるフェイト。
 こうしてホテル・アグスタの襲撃は幕を閉じた。
 
 

 
後書き
お久しぶりです( ´ ▽ ` )ノ
やっと更新できました。

いきなり9000字近くなってしまいました。早くアグスタの戦闘を終わらせたかったのですが、『戦闘描写』『心理描写』を両立させながら書こうとしたらガンガンかさばりこんなことになってしまいました。(--;)

アンケートですが様々な意見をくださりありがとうございました。
意見を参考に考えた結果、StS編が完結してからもう一本書く事にしました。
ちなみ書くとしたら「加速世界に正義の味方を入れる話」かもしくは「愛と勇気のおとぎ話に機動戦士の主人公を介入させる話」、または「医学生兼格闘家の少年を無印の世界へ」のどれかになると思います。
………予告編だけならそのうちするかも(ボソッ)



ご意見・ご感想をお待ちしておりますm(_ _)m 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧