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金木犀の許嫁

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第三十七話 織田作好みのカレーその一

                第三十七話  織田作好みのカレー
 二人は自由軒に入った、店の中は昭和の趣がそのまま残っていた。そうしたノスタルジーを感じさせる店の中に向かい合って座ってだ。 
 二人はそれぞれ注文した、その注文したメニューは決まっていた。
「やっぱりね」
「名物カレーよね」
「それを食べる為に来たし」
「それならね」
「何かね」
 佐京は微笑んで話した。
「このお店の雰囲気いいよね」
「昔のね」
 夜空は微笑んで応えた。
「雰囲気がそのままね」
「残ってるね」
「昭和、それも戦争前の」
「懐かしい感じだね」
「それで織田作さんがね」
 その彼がというのだ。
「このお店で毎日みたいにね」
「名物カレー食べていたんだね」
「そうだったのよ」
「だからだね」
 佐京は店の中にある彼の写真を見て言った。
「織田作さんの写真もあるんだね」
「この店に来てね」
「書いている場面だね」
「ええ、確かにね」
「織田作さんはこのお店に通っていたね」
「毎日みたいにね」
「そうした織田作さんの足跡がある」
 そうしたというのだ。
「お店だね」
「ここはね」
「そうだね、何かこの雰囲気だけで」 
 佐京は微笑んで言った。
「俺好きになったよ」
「このお店が」
「うん」
 そうだというのだ。
「本当にね」
「私もよ、この雰囲気だけでね」
「いいよね」
「好きになれるわ、それでね」
「カレーも食べたら」
「尚更ね」
 それこそというのだ。
「好きになれるわ」
「そうなんだね」
「だからね」 
 それでというのだ。
「今からね」
「食べようね」
「夫婦善哉の主人公二人みたいに」
「一緒に食べるんだね、カレーを」
「名物カレーをね」
 こう話してだった。
 二人はそのカレーが来たのを見た、最初からご飯とルーが混ざっている。そして円形に盛り付けられたカレーの真ん中にだ。
 くぼみがありそこに生卵がある、夜空はその生卵を見て佐京に話した。
「ここにおソースかけてね」
「かき混ぜて」
「そうしてね」
「食べるんだね」
「そうなの」
 こう話すのだった。
「このカレーはね」
「そうだよね」
「ええ、それでね」
 佐京に笑顔で話した。 
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