インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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VTシステム、起動
そして数日が過ぎ、いよいよ最終日。
「やっとだな。やっと………」
ボーデヴィッヒが一夏と戦えることを喜んでいた。
ちなみに今日は決勝戦。昨日は準決勝で篠ノ之・鷹月ペアだったが、暴虐的なボーデヴィッヒが篠ノ之を倒し、俺が優しく鷹月に対応したために鷹月に深い傷を負わせないですんだ。
月曜のあの後だが、教官に言われたからを理由に手を出してきていない。
「風宮」
「何だ?」
「お前は手出しするな」
「………前から思っていたんだが、そんなに大事なのか?」
「ああ。これは私たちの問題だ」
それだけ重要なんだろう。まぁいいけど。
俺たちはISを展開してアリーナに入った。
■■■
「ようやく会えたな。待ちくたびれたぞ」
「そりゃこっちもだ」
お互いが涼しく、そして殺気を帯び始める。
―――試合開始まで、5、4、3、2、1―――始め!
「「叩きのめす」」
試合開始と同時に俺は後ろに下がる。
一夏は一夏で瞬時加速を行ってボーデヴィッヒに接近した。
「おおおっ!」
「ふん……」
ボーデヴィッヒがAICを発動して一夏の動きを止める。
「開幕直後の先制攻撃か。わかりやすいな」
「……そりゃどうも。以心伝心で何よりだ」
「ならば私が次にどうするかもわかるだろう」
そしてレールカノンを発射しようとすると、
「させないよ」
デュノアが割って入り、アサルトカノン《ガルム》で爆破弾の射撃を浴びせる。
「ちっ……!」
射撃によってレールカノンをずらされ、一夏に向かった砲弾は外れる。さらにデュノアは続けて射撃を行うが、ボーデヴィッヒが間合いを取って躱す。
「逃がさない!」
デュノアはそれでも追う。
すると、ボーデヴィッヒはくるりと反転してワイヤーブレードを展開して牽制しつつ、一夏に接近する。
『………風宮』
通信が入った。相手は織斑先生だ。
「何ですか?」
『何故お前は参戦しない』
「一人で決着つけたいだと。まぁ、俺は優勝できればなんだっていいし、特に触れません―――けど、どうせボーデヴィッヒは負けると思いますので」
『ほう。なぜそう思う』
「一夏とデュノアは昨日の凰とオルコット相手でもそれにあったコンビネーションで抑えています。それ故に強い。それに―――ボーデヴィッヒ如きに負けるコンビなら、俺の相手は務まらないと思いますので」
『……随分と天狗になったものだな』
「これでもそれなりに世界を歩いているので」
だからこそ。その貧しい国から金なんて貰ったことないけどな。
『まぁいい。動いたぞ』
言われて視線を戻すと、大奮闘したおかげか一夏とデュノアがボーデヴィッヒを追い込んでいた。
(……デュノアもパイルバンカー持っているのか)
そんな感想を持つと同時に俺は体の節々を動かして準備する。
「「おおおおっ!」」
「ハーレムキングは死ね!!」
「はぁっ!?」
俺は一夏を追いかけ始める。
「お前、参加しないんじゃ―――」
「誰もそんなことは言っていない! 人海戦術というやつだ!」
デュノアの攻撃音をBGMに俺はクローで攻撃しようとすると、
「―――あああああああっ!!!!」
ボーデヴィッヒが叫び、それと同時にISが溶けて再融合を始める。
「………ちっ」
俺は誰にも聞こえないように舌打ちした。
「…何で消えたはずなのにあるんだよ」
■■■
―――とある女性side
「さぁ、やっちゃいましょう! 偽物君!」
天才、篠ノ之束が満面の笑みで投影されたキーボードを叩く。
「とても不本意だけど、仕方ないしね! ほら、殺っちゃえ!」
だから、興奮してたが故に気づいていなかったのだろう。
(……なるほど、こいつが因子か)
別の存在がここにいることに。
■■■
「なんだよ、あれは……」
隣で一夏が呟く。だが俺は―――
「一夏。お前は今すぐエネルギーを―――!!」
俺は一夏を蹴り飛ばすと同時にその場から離れる。
(今、俺に向かって刀を振るった?)
少しした違和感とシュバルツェア・レーゲンの姿が変わった時から鳴り響く頭痛。
(………しかも、最悪じゃねぇか)
徐々に蘇る記憶。その中には―――篠ノ之束に関することもだ。
(どうしてVTシステムは消したはずなのにあるか、もうわかったな)
おそらく篠ノ之束が俺を消すために仕組んだ事だろうな。だったら、
「それがどうしたああっ!」
―――ドスッ
俺は一夏の鳩尾にパンチを入れる。どうやら一夏のところに行くと狙われることはないようだな。
「何するんだ祐人! 邪魔するならお前も―――」
―――ゴスッ
「目、覚めたか?」
「……ああ」
鼻を殴って黙らせた。
「大体、お前は馬鹿か? お前の姉の複製に勝てるわけがないだろ」
「……やっぱり、あれは千冬姉の………」
「そういうことだ。だから―――テメェはとっととシールドエネルギーを回復させろ」
そう言って俺はピットの方を指す。
「でも、そうしたらさっきみたいに―――」
「その前にさっさと補給。こいつを抑えるのは俺がやる」
それが相手が望んでいることだろうからな。
「あ、ああ。わかった」
確か、VTシステムの稼働時間は30前後。それにボーデヴィッヒの身体能力も比例すると、
「25分。俺が待てるのは15分までだ。もしそれができないなら俺が独断でアイツを倒す。それでいいな」
「わかった」
一夏が承諾してデュノアに運んでもらうと、
―――ブンッ
俺に向かって雪片を振り下ろしてきた。
「………その程度か」
そして俺は――――笑っていた。
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