インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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専用機VS訓練機
6月も最後の週を迎え、IS学園は月曜日から学年別トーナメントが始まる。
ちなみにだがこのトーナメント、俺がボーデヴィッヒと戦った日から2人組で出場することを義務付けられた―――のはいいが、俺のところにはまったく来なかったので相手がいない。本音にも聞いたが簪さんと組むらしい。そして俺が簪さんと呼ぶ理由は―――そう呼んでおかないと後が怖いからそう呼べと、本音に言われた。まぁ、苗字じゃないだけマシなのだろう。
そしてさっきまで準備に駆り出されていた俺たちは、更衣室で着替えていた。
「しかし、すごいなこりゃ……」
一夏が声を漏らしていた。
「三年にはスカウト、二年には一年間の成果の確認にそれぞれ人が来ているからね。一年には今のところ関係ないみたいだけど、それでもトーナメント上位入賞者にはさっそくチェックが入ると思うよ」
「まぁ、少なくともこの三人目当てってのもあるだろうな。なにせ俺たちは貴重な男性操縦者。どんな戦績でもチェックされるだろう」
俺の説明を―――一夏は聞いていなかった。
だから俺もその後は無視して準備体操を行っていたんだけど、
「風宮君。トーナメント表が出たよ」
「え? どれどれ……マジ?」
自分の顔が歪むのを感じる。そりゃそうだ。何故なら、敵が簪さんと本音、味方がボーデヴィッヒだったのだから。
■■■
「おいボーデヴィッヒ」
「何だ」
「いい加減に殺気を向けるな」
「……………」
こいつコミ障か何かか?
俺たちはフィールドに入ると、そこにはラファール・リヴァイヴを纏った簪さんと打鉄を纏った本音がいた。
「ほう。対戦相手は代表候補生と言っていたが訓練機とはな。私も舐められたものだ」
そのことが気に障ったのか、簪さんが下唇を噛んでいるのが見える。一方俺たちは、
『かざみん、よろしくね~』
『ああ。それはいいが、何で簪さんが専用機じゃないんだ?』
確か専用機を持っていたはず……?
『実はね~、まだ完成していないんだよ~』
そこでふと思い出す。
確か今回のトーナメントは強制参加。それに専用機持ちなのに専用機を持っていない簪さんからしてみれば屈辱でしかないだろう。
それなのに今周りから罵倒。さらにボーデヴィッヒからぼ罵倒され―――
『これだからクズは―――』
―――ブチンッ
……………名案が浮かんだ。
『では、試合開始!』
スピーカーから審判の声が聞こえるとすぐに―――俺はボーデヴィッヒを鎖で拘束すると、
『え?』
―――ドガッ!
壁に蹴り飛ばし、何重にも拘束した。
「貴様! どういうつもりだ!?」
「―――うっせぇ」
《炎閃》を展開し、俺は身動き取れないボーデヴィッヒの首に当ててシールドエネルギーを切らせた。
そして騒ぐボーデヴィッヒを無視して二人に向き直る。
「……どういう、つもり?」
「いや。ここは確かに静観するべきだったんだろうけど、ちょっとムカついたから」
「……どれくらい?」
「あいつの四肢を抉った挙句に内臓を出したくなるぐらいに」
「「………………」」
俺のコメントにどう突っ込んでいいかわからず、二人とも沈黙した。
「まぁ、こっちとしてはムカついただけだから手加減しようとかそんなことは考えてないから」
そう言って《メタルクロー》を展開した。
「さて、邪魔は入らないから―――来い」
その声を合図に、本音が近接ブレードを展開して接近してきた。
そして何回かクローで弾いてわかった。篠ノ之みたいに優勝はしていないだろうが、それなりの力はあると。
クローでブレードの刃を引っ掛けて奪い、後ろに放る。
すぐに本音は諦めて後ろに下がると同時に俺に銃弾の雨が降り注いだ。
(うわぁ。このコンビマジスゲェ)
それが開始してから数分経過した俺の感想だった。
それもそのはず、訓練機は専用機とは違い、スペックではどうしても差が出てしまう。だけどこの二人はお互いが通じ合っていると言えるほどに連携が取れ、俺は苦戦を強いられている。
(仕方ない。不本意だが、少し本気を出させてもらおう)
《ストライクバンカー》を展開して本音に接近する。
「え?」
「落ちろ」
―――ズガンッズガンッズガンッズガンッズガンッ!!
五発お見舞いして吹き飛ばすと同時に打鉄のシールドエネルギーが切れた。
「本音!」
「砕け散れ!」
《インパクト・スラッグ》を展開と同時に発射し、強烈な一撃をお見舞いした。だが、
―――シャキンッ
近接ブレードを展開して横にし、スラッグ弾を斬った。
俺は《エネルギーサイズ》を展開してぶった斬る。
『ラファール・リヴァイヴ、シールドエネルギーemptyにより、勝者、風宮祐人・ラウラ・ボーデヴィッヒペア』
俺は簪さんの無事を確認すると同時に目を回している本音を抱えてBピットに運んだ。
「なぁ、簪さん」
「………何?」
「もしよければ、簪さんの専用機の開発を手伝いに派遣させてくれないか?」
「……それは、私がしたいから、いい」
「へぇー。そうなん―――ってええッ!?」
あまりにも衝撃的な言葉に、俺は思わず驚いてしまう。
いくらディアンルグを基礎から造ったとはいえ、早く完成させたいがために作業員を動員したのに。………まさか、
「……まさか、一人でやっているなんて言わないよな?」
「……そのまさか」
ああ、それで罵倒なら―――
「なんだ。それなら潰してよかったな」
「―――何が潰していいだ。馬鹿者」
―――パシッ
降り下ろされる出席簿を受け止める。
「何ですか? というかアンタの教え子だろ。ちゃんと常識を習わせた方がいいぞ。まぁ、アンタの教え子はほとんどがそうか」
「それに関しては否定しないが、味方を倒すなんてこの企画が始まって以来だぞ」
「悪いな。ああいう自己中心的な人間は大っきらいなんだよ。殺したいぐらいにな」
「「「………………」」」
俺の言葉に黙った三人。
俺はこの場にいてはいけないと思ってAピットから出ると、
「かざみん!」
案の定、本音がやってきた。
そして本音を撫でていると、
「貴様!!」
「何をしている」
「きょ、教官!?」
そしてボーデヴィッヒは怒られたとさ。
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