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今度こそ、成し遂げてみせる【未完】

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第12話「兆しの行方と謎の女性」

 クリスは湖畔の桟橋の上で黄昏ていた。

 服装は主の趣味であるのか、胸元が大きく開いたような赤く薄い服装にガーターベルトを身に纏っていた。
 そして胸元にはシンフォギアのペンダント。

 手にはソロモンの杖を両手で持ち、考え事をしている。

 それはクリス自身が達成するための目標につい。

 そして目標となった【過去】を振り返っていた。

 「…そして、またっ、あたしはひとりぼっちになるわけだ」

 ふと、背後から気配を感じたクリスは後ろを振り返る。

 「………」

 クリスから離れた距離に、【彼女】は居た。

 黒いコートを羽織り、黒いハットフェルトつば広帽子を被る、長い金髪の若い女性だ。

 「分かっている、自分に課せられたことくらいは。こんな物に頼らなくてもあんたの言うことくらいやってやらぁッ」

 こんな物とはソロモンの杖の事だろう。
 証明するかのように、ソロモンの杖を金髪の女性へと投げつけた。
 
 ソロモンの杖をキャッチする金髪の女性。

 「………」

 視線での問いかけに苛立った声で返した。

 「あいつよりもあたしの方が優秀だってことを見せてやる。あたし以外に力を持つ奴は、全部この手でぶちのめしてくれる!それがあたしの目的だからなぁッ!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ーーー市街街からそう遠く無いとある森林公園ーーー

 私は驚いている。何故ならば…、

 「くたばれやッオラァァア!」

 「うわぁーッッ!」

 「立花ァアッ!?」

 大乱闘が行われていたからだ!…何が起きているのだ。

 しかし、響が言っていたのってコイツのことだったのか。クリスだったのか。
 
 はぁ〜、なんでっ、なんでこんな事に…。

 ーーー時は少〜し遡るーーー

 未来と響からの相談が完了したヒルデは、やっと家に帰れると想いながら帰路についていた。

 その際、通行する道が工事の関係で通行が出来なくなり、彼女は到着する時間は遅くはなるけれど某森林公園方面から帰ろうと決め帰路へ着く。

 帰路中、某森林公園から何か音がした。鼓膜が壊れる程では無いが遠くにいる彼女でも分かるくらい爆発音のような音が耳に入った。

 ヒルデの近くにいる人達は「凄い音だわ」「工事かしら?」「早く終わって欲しいわ」と迷惑そうに言いつつ、自分の用事を済まそうと歩行を再開。
 
 普通なら違和感どころのことでは無いが其れも仕方が無いだろう。

 規模にもよるが爆発した後は目に見える程の火を発するし衝撃波もする、そして黒煙へと変わっていくがソレが無かった。

 ヒルデはコレを「(何か催し物をしているのか?)」と内心で思うが、実際には催し物なんぞしていない。

 催し物ならどんなに良かったことか…。

 ヒルデは森林公園へと足を進めてゆく。
 
 この先が気になる?…では彼女、ヒルデの視点へと移ろう。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ーーーそして時は戻りだすーーー

 〈ヒルデSIDE〉

 まさかクリスって敵対存在だったとは…。
 であれば風鳴も他も言ってほしいものだ。はぁ〜。

 あ、それにしてもクリスのバイザー、素晴らしいな。鎧の方も褒めておこう。
 
 ……いやいや、何呑気な事を考えてしまっていたんだ、私は!?
 早く退避しなければいけないというのに!!

 
 ……ん?戦闘が、止まった?

 ・・・・・・

 ・・・

 よし!このままそ〜とこの場を離れよう、幸いにも距離は少しであるものの離れている。

 では、私は退場させてもらう。

 「っ!…そういうことか」

 さらば、クリスよ。
 今何か言っていたような気がするが、気にするまでもない。

 シュン
 ……?

 バキ、バキ!

 ……?

 ド〜ン

 …………?

 隣にあった木とその延長線にあったとされる樹木が真っ二つになったり、木片になっていた。

 ………は?

 「おい、お前っ、ふざんけんなッ!?」
 
 それは此方のセリフだ。

 いったい何が起きた?
 というかまさか私の位置が分かったのか!

 「…フっ、アハハハッ!」

 気の所為であって欲しいのだが、眼と眼が会っている。

 『眼と眼が会う♪〜〜〜♬』

 違〜が〜う!そんな意味の訳があるかッ!?

 「なぁ〜んて悠長♪、…この期に及んでッ!!」

 紫色に近い刺々しい鞭が、クリスから放たれた。
 よし、響を盾にしよう。

 丁度響達はクリスの方に向いているし、何よりも響が私の目の前に居る。

 悪いな、響。私の為に盾となってくれ。

 さて、よし、そのまま、そのまま!…ん?

 盾となっていた筈の響が、ジャンプして避けた。…は?
 後ろには私が。

 あ、ヤバっ。こっちにやってきた!【ひらりマント】間に合うか?いや、間に合せてみせる!

 「(うおぉぉぉおッ)」

 よし、なんとか鞭を跳ね返せたか。

 響よ、フェイントをしてぽんと斜め後ろに威力を逃がして避けるとは…。
 いや避けるのは当たり前か。

 しかし、だ。…鞭凄いな、自在にコントロール出来るとは。

 まぁ、流石にこれ以上は、な?

 「気に入らねぇ気に入らねぇ気に入らねぇ気に入らねぇ気に入らねぇ!」

 呪詛のように強く言い放つクリス。
 クリス?落ち着こうじゃあないか。

 まさか鞭が私に当てれなかったから気に入らないのか?
 
 …普通に泣きそうになるのだが。

 クリス、深呼吸して落ち着こうっ。
 ほんの少しとはいえ、話し合った仲じゃないかっ。

 「分かりあえるものかよっ、人が、人がっそんな風に出来ているものか!」

 分かり合えよ、私の為に!

 「出来ているとも、雪音クリスよ。私は最初、奏や立花ともそう上手く仲はよく無かった」

 そうか、翼は何をしている?

 「付き合いの長い奏とは時には喧嘩もしたし、立花にだって今では恥ずかしいが少し刺々しい態度を取ってしまったことがある」

 だから翼は何をしている?

 「けれど、何度も話し合っていくうちに相手のことが理解できて、仲良くなったのだ」

 翼は相手に向かって剣を突きつける。
 …切っ先を何故下ろす!?
 剣を構え続けろよ!!

 「どうやら立花の気が当たってしまったからか自己紹介をしたくなる衝動が発しってしまっているようだ。私の名は風鳴翼、防人であり奏の親友であり立花の、いや、響の友人だ!」

 「翼さんっ…!」

 …自己紹介をしたくなる衝動?
 フフフ…ふざけているのかこの剣は?

 「アホなことを抜かすなッ!!」

 荒くなった息を整えるクリス。

 「融合症例第一号、このバカ女を引きずって来いと言われたがもうそんなことはどうでもいい! お前等を叩き潰すッ、今度こそ全てを踏みにじってやる!!」

 凄まじい怒りの表情をし、瞳がギラギラと光り今まで抑えていたものを更に吐き出す。この場の空気を震撼させた。
 お前落ち着けよ、な?

 「私だってやられる訳にはっ…!」

 「その通りだ」

 戦闘が再開した。
 クリスは飛び、鞭の先端で大きなエネルギーの球体が黒い電撃を包み込んだ。大技か?

 「うぉぉおッ、ぶっ飛べ!」

 その球体を響に投げつけた。
 響は両手でエネルギーの球体を受け止めることに成功。

 よくやった。
 まぁ二発目は流石に来ないだろう。

 「持ってけ、ダブルだ!」

 …フラグを建築してしまったか。
 くそっ、この場にウォッチがあれば!?
 …まぁ、有ったとしても自分はこの場から逃げるの一択だが。

 き、来たー!?
 手に持っていた【ひらりマント】は風に乗って飛ばされていた。おのれっ!
 
 「「させるかー!」」

 翼と奏が飛来中の二発目を叩き押した。
 よくやった二人とも。褒めてやろう。

 「クソがァァあッ」

 口が悪いぞ、あぁ、鞭がまたっ…。

 「ふんぬっ」

 お、響が掴んだか、凄いな。

 それを利用してなのか…。
 鞭を掴んだ響は全力で引っ張り、クリスは響の方へと身を任せてしまう。

 「なっ!」

 「最速で!最短で!真っ直ぐに!一直線にッー!!」

 両方の鞭を伸ばし切り、宙に浮いて防御も回避も行えない完全無防備な状態のクリス。

 そこへーーー

 「ガハッ!」

 ドゴオッーン!
 
 響の必殺の拳が直撃し、鎧に穴を開けた。
 クリスは地面を抉り吹き飛ばされながら石垣に激突し、叩きつけられる。
 
 必殺の拳、か。

 「ねえクリスちゃん。もうやめようよ!ノイズと違って私達はこうやって言葉を交わせるんだよ。ちゃんと話し合えば分かり合えるんだっ」

 ん?だが響、話し合うって言っていたのに殴ってる…。

 ・・・・・・

 ・・・

 今度、響が超食べたいって言っていたプリンを奢ってやろう。
 その拳が此方にやって来ないように。

 「・・・」

 クリスは無言だ。
 ふらつきながらも顔が赤くなって睨んでいる。

 「…むなくせぇんだよ、嘘くせぇ…アホくせぇッ…信じられるかよっお前等が、お前の言うことなんてッ!!」

 鞭を仕舞うクリス。
 なんだ攻撃しないのか。口と行動が逆だな。

 まぁだが、これで戦いが終わった。さぁて、早く帰って…。

 「…吹っ飛べよっ。アーマーパージ(装甲分解)だ!!」

 アーマー、なんだって?
 そうクリスが叫んだ瞬間、彼女が纏っているネフィシュタンの鎧が輝き、自身をも光に包み込まれた。

 次の瞬間、鎧が砕け無数の破片へと変えて辺り一帯を襲った。

 咄嗟に響はガードするが、ガードするよりも先に、翼は空から巨大な剣を私達の前に突き刺し守った。それにより、私達が立っている場所の被害は微被害となっている。

 守りきった巨大な剣は役目を果たしたのか、砕け散った。

 樹木が貫通したり、
 折れたり、
 地面に穴を開けたり、
 などなど、周囲の被害は目に分かる程、視界に映っている。

 私は唖然としてしまう。まさかこれだけでこれとは・・・。
 幸いにも自分は被害が無かったからよかったが・・・。

 『Killter Ichaival tron』

 土煙が続く中で、私は詩を聞いた。

 「聖詠、だと!?」

 まだ何かあるというのかクリス!…聖詠だと!?

 土煙が晴れると赤を主調としたドレスのようなスーツ…シンフォギアを纏うクリス。

 …第二ラウンドの始まりか。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 響達とクリスは戦闘を再開した。

 ヒルデは彼女達より離れた距離で少し唖然と驚愕をしながら成り行きを見ていた。

 距離離れてるんなら帰ればよいと思うがソレが出来なかった。

 秘密道具が入ったスペアポケット落としたから。

 このままでは帰ることは出来なかった彼女は事の成り行きが収まるのを待った。

 クリスの攻撃のアレは…凄まじいの一言だ。

 矢での攻撃、ボウガンでの攻撃、銃での攻撃、ガトリングでの攻撃、時にはミサイルをも放つ。
 
 ヒルデが見たミサイルはスカート型のミサイル発射ポッドが横に開いて撃っていた。

 矢ですら小さなクレータを作っていた。

 その時である、なんと空中から飛行型ノイズが降って来たのだ。

 ドリルのように回転して数体のノイズが、響達とクリスに向かって落ちてくる。

 クリスを襲うノイズに体当たりを仕掛けて倒し、そのままの勢いでクリスに響は倒れ掛かる。

 突然の事態に驚きの色を隠せない両陣営であるが、翼は響とクリスを守る形で武器を構え、周囲を睨みつける。

 その時であった。

 「命じたことも出来ないなんて……あなたは私をどこまで失望させるのかしら」

 海の見える丘の上に、その人は居た。

 夕日を背に向けて、手すりにソロモンの杖を押し付けている人物がいたのだ。
 服装は黒いコートに黒いハットフェルトつば広帽子、黒いサングラスをした金の長髪の女性だ。

 「フィーネ……!」

 「(フィーネ…?終わりの名を持つもの……)」

 翼はその姿を確認すると警戒をより一層強めた。

 クリスは響の体を突き放す。
 突き飛ばされた響はこれまでの戦闘に負担が掛かったのか意識が失いそうになっていた。

 そんな響を翼が受け止める。

 「こんな奴が居なくても戦争の火種くらい私一人で消してやる!そうすればあんたの言うように人は呪いから解放されてバラバラになった世界は元に戻るんだろう!?」

 クリスの言葉に対してフィーネは溜息をつく。

 それはまるで失望したと言っているよう。

 「もう貴女には用は無いわ」

 その一言でクリスは狼狽あえる。

 フィーネが言ったことを証明するかのように操作された残りの5体のノイズが向かってきた。

 2体がクリスへと。
 3体が二課装者達へと。

 クリスと二課装者は向かってきたノイズを倒したがフィーネは海の先へと逃げた。

 フィーネを追うようにクリスは慌てて追いかける。

 海の先へと逃げた方向を少女達は見つめる。

 フィーネとは一体何者なのか?

 一つの謎を残し、戦いが終息した。 
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