スーパーヒーロー戦記
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第15話 脅威!日本攻略作戦
エーゲ海に浮かぶ絶海の孤島、バードス島。
その地下に建設された秘密の施設の中で、今あしゅら男爵の前では数体の機械獣が立っていた。
「おぉ! これは素晴らしき出来に御座います」
「その通りだ! この機械獣達には今までのマジンガーZの戦闘データを元にして作られたのじゃからなぁ」
自信をもってDr.ヘルが言う。
「まずこちらの機械獣はトロスD7。自慢の武器は頭部に取り付けられた巨大な角じゃ。この角を用いればマジンガーZの装甲をも容易く破れよう」
「何と! これで遂にマジンガーZのあの堅牢な装甲を破れると言うのですねぇ!」
「その隣に居るのはゴーストファイヤーV9。その両腕に取り付けられた鉄球と頭部から放たれる紅蓮の炎は日本を焼き尽くす事じゃろう」
「フフフ、遂にあの国を地獄に変えられると言うのですねぇ!」
「そして最後のこいつはキングダンX10。こいつの剣で今度こそマジンガーZの息の根を止めてくれよう!」
自信を持ってDr.ヘルが言い放つ。
その言葉を聞いたあしゅら男爵の顔にもメラメラと闘志が沸いて来た。
「それと、もう一つ言っておく事がある。今回の作戦ではこの機械獣を用いて思う存分に、出来るだけ派手に暴れるのだ!」
「派手に…ですと?」
「そうだ。奴等の戦力をなるだけバラバラにさせるのじゃ!」
「成る程、援護の受けられない状況の中で各個撃破すると言うのですね?」
あしゅらは理解出来た。
あれだけの強力な戦力が揃っているのだ。
纏めて相手にするのは幾らこの自慢の機械獣軍団と言えども苦戦は免れない。
ならば戦力を分散させて各個撃破するのが上策と言える。
だが、Dr.ヘルが考えていたのはそうではなかった。
彼が考えていたのはあしゅら男爵が考えているのとは全く違った事なのであった。
***
急な報せを受けたなのは達は急ぎアースラに戻ってきていた。其処には何時も余裕の笑みを浮かべているリンディは其処に居らず、皆の顔からも緊張の色が伺えていた。
その色が先ほどの呼び出された理由に繋がるのだろうと誰もが理解出来た。
「リンディさん、一体何があったんですか?」
「口で説明するよりこれを見て貰った方が早いわ」
意味深な発言をした後、目の前にあるモニターの装置をセッティングした。其処には画面一杯に一人の男、嫌、女…どちらも違う。
其処に映っていたのは男と女が一つに合さった化け物であった。
【聞け! 愚かな人間共よ。私の名はDr.ヘル様の右腕、その名もあしゅら男爵だ!】
画面一杯に映し出されたあしゅら男爵が勝ち誇ったかのように笑いながら名を名乗った。
「あしゅらの野郎! 一体何の真似だ?」
あしゅら男爵とは深い因縁を持つ甲児が不満そうに見ていた。
そんな甲児を無視するかの様にあしゅら男爵は話を続けた。
【今から1時間後、我等は自慢の機械獣軍団を操り、アジアの小さな島国、日本を攻略する!】
「何だと!」
【だが、この作戦はほんの前哨戦よ。日本を攻略した暁には、その地を拠点に全世界を侵略する事を此処に誓おう。日本国民よ、貴様等は一番早く地獄へ行ける事を幸福を知るが良いわぁ!】
その言葉を最後に映像は途切れてしまった。後にはブリッジの気まずい沈黙だけが残されるのであった。
「この映像が今から丁度50分前に送られた映像よ」
「つまり、後10分後にはあしゅら男爵が放った機械獣軍団が日本を攻撃するって事になるんですか?」
甲児の問いにリンディは静かに頷いた。
かなり不味い事になった。あしゅらがあそこまで自信を持って宣戦布告をすると言う以上、今までのとは桁違いの機械獣を繰り出してくるに違いない。
しかし、現状で機械獣に対抗出来る者と言えばマジンガーZ、そして二人のウルトラマンしか居ない。
だが、戦線が拡大すれば地球上で3分間しか戦えないウルトラマンでは無理がある。
せめてもう一人機械獣と対抗出来る力が欲しかった。
現状では明らかにマジンガーZ一体では戦力的に不足気味なのだ。
「リンディさん、現状だと我々だけで機械獣軍団と対抗するのは難しいと思われますが」
「確かに、ハヤタさんの言う通りね。でも安心して頂戴。今しがた頼もしい仲間が到着した所よ」
「頼もしい仲間ですって?」
ハヤタ達が首を傾げる。
丁度その時、後ろの扉が開き、誰かが入ってきた。
振り返った時、其処に居たのは三人の若者であった。
「あ!」
「お前等!」
その若者達を見て、なのはと甲児の二人は思わず声をあげた。
何しろ、其処に居たのは以前二人が会った事のある者達だったからだ。
「久しぶりだね。甲児君、なのはちゃん」
「フッ、此処に居るボインちゃんはまた格別だぜ」
「おいら達が来たからにゃ百人力だぜぇ!」
間違いなかった。其処に居たのは以前浅間山山中でメカザウルスとの闘いの際に共闘したマジンガーZに並ぶスーパーロボット「ゲッターロボ」のパイロットでもあるゲッターチームであった。
そしてそれは即ちあのゲッターロボが戦線に加わったと言う事になるのだ。
それは何よりも嬉しい事実でもあった。
「しかし武蔵よぉ、お前爬虫類嫌いは治ったのかぁ?」
「あぁ、お陰様で爬虫類を克服したぜ! もうメカザウルスだろうとなんだろうとドンと来いだぜ!」
今まで爬虫類を怖がっていた武蔵の姿は何処にもなく、今其処に居るのは自信に満ちた巴武蔵の姿が其処にあった。
「凄い自信ですね。一体どうやって克服したんですか?」
「フッ、なぁに簡単な事さ。こいつを丸一日トカゲだらけの部屋の中に閉じ込めておいただけさ」
シニカルに笑いながら隼人がそう言った。
が、それを聞いた女性陣は皆凍りついた。
もし自分がそんな事されたら間違いなく失神する。
っと、言うより男でも絶対にそんな部屋に入りたくない。
そう思えた。
しかしそのお陰でどうにか武蔵の爬虫類嫌いは克服できたようだ。
「これでもうトカゲを見ただけで逃げ出す事は無さそうだなぁ、武蔵」
「嫌な記憶を掘り下げるなよ甲児」
武蔵にとっては嫌な記憶のようだ。
「何にせよ、君達が加わってくれればとても有り難いよ。ゲッターチームの皆、今度の戦いは是非頼らせて貰うよ」
「任せて下さい。機械獣如きに俺達の国を荒らさせたりはさせませんよ」
そう言ってハヤタと竜馬は互いに固い握手を交わした。
その時、激しい警報が鳴り響いた。
どうやら機械獣の進撃が開始されたようだ。
「エイミィ、敵の進撃図を」
「すぐに出します」
画面上に日本の図面と共に機械獣が出現したポイントを印で表した。
三体の機械獣がそれぞれ東京、大阪、名古屋の三つの都市に出現したのだ。
それぞれの地点で機械獣達が我が物顔で暴れまわっている。
「どうやら現れた機械獣は三体のみのようです」
「へっ、あしゅらの野郎たった三体で俺達を倒せるとでも思ったみてぇだな。その思い上がりを後悔させてやらぁ!」
自信たっぷりに甲児が言う。
今の彼等の元には新たにゲッターが加わった。
これなら多少は戦える。
そう思った矢先であった。
「待って下さい! 九州地方にメカザウルスが出現しました!」
「なんだって!」
これは予想外だった。
まさか機械獣の進撃を受けてメカザウルスまでもが出現したのだから。
「メカザウルスは俺達が食い止めます。各都市の方はお願いします」
「だったら僕は東京に行く、ダンは大阪へ行ってくれ」
「分かりました」
「そんじゃ俺は名古屋に行って来るぜ!」
甲児が意気揚々と宣言した。
だが、更に悪い事は立て続けに起こってきた。
「艦長、今度はショッカーが動き出しました!」
「何だって! 場所は何処だ?」
途端に本郷の顔色が変わりだした。
彼としてはショッカーを放っておく訳にはいかない。
故に切羽詰った心境になっているのだと言う。
「現在ショッカーは…原子力発電所を占拠した模様です」
「原子力発電所だって? 何でまたそんな所を?」
甲児が首を傾げた。
ショッカーの狙いは恐らくエネルギーの独占である。
未だ光子力やゲッター線が普及していない現代、人類は未だに古いエネルギーとして原子力に頼る他ない。
その原子力の中枢が原子力発電所なのだ。
其処を制圧されれば日本は大きなエネルギー問題に陥り、其処がもし破壊されようものなら放射能による影響は計り知れない。
「発電所には俺が行ってきます。奴等を許しておくわけにはいかない」
拳を握り締めて本郷が言い放つ。
結果として戦力を分断せざるを得ない状況に追い込まれてしまった。
しかし、泣き言は言ってられない。
一刻も早く敵を倒さなければそれだけ多くの犠牲者が生まれてしまうのだ。
「あのぉ、私は何処に向えば良いんでしょうか?」
なのはがそんな中、恐る恐る手を上げる。
今の所場所を割り当てられてないのだ。
かと言ってなのはで機械獣の相手はキツイ所がある。
それになのはの武器は砲撃戦が主なので発電所内での使用は無理が祟る。
悩みどころでもあった。
が、その悩みは案外すぐに消え去っていった。
「なのはちゃんにはすぐに海鳴市に飛んで貰うわ。あそこで今ロストロギアが起動したみたいなの。かなり大規模みたいよ」
「大規模なんですか? すぐに行かないと!」
こうして戦力は割り当てられた。
後は各々が現場に向かい敵を倒すのみとなった。
しかし、その中には彼等の知らない計画が着々と進められているのであった。
***
甲児はパイルダーを使い名古屋へと急行した。
其処では名古屋を火の海に変えた一体の機械獣の姿があった。
「ひでぇ、名古屋の町が見る影もねぇ…」
甲児の顔が曇った。
今目の前に広がっているのはかつての華やかな町ではなく、地獄と化した名古屋の町であった。
そして、その中心に巨大な剣を携えた機械獣キングダンが立っていた。
今は沈黙している。
まるでマジンガーZの登場を待っているかのようであった。
「上等じゃねぇか! ならばお望み通りマジンガーで登場してやらぁ!」
それが罠であろうとなかろうと戦わねばならない。
マジンガーを受け継いだ甲児がなさねばならない使命だと自分自身にそう言い利かせるように甲児はマジンガーZを呼び出した。
アースラから転送されたZが地面から生えてくるように現れてくる。
丁度その真上に旋回し、Zの頭部にぽっかり開いた穴を目指す。
後はその中へとドッキングするだけであった。
その時だった。
「ハッハッハッ! その瞬間を待っていたぞ、兜甲児!」
「何!」
突如起こった笑い声と共に二本の巨大な腕が宙を舞いパイルダーを弾き飛ばした。
視界がグルグルと回る。
一体何が起こったと言うのか。
「な、何だ? 巨大な腕が飛んできたぞ?」
「馬鹿め、腕を飛ばせるのはマジンガーZだけではないのだよ! 行けぃ! バルガスV5」
あしゅらが命じると残りの体の部位が飛んできた。
足が、胴体が、頭が、更に様々な部位が自由自在に飛んできたのだ。
そして、二本の巨大な腕がマジンガーZを持ち上げると空高く連れ去ってしまった。
「何しやがる! 俺のZをどうするつもりだ?」
「フン、確かに貴様のマジンガーZは無敵よ。だが、貴様の乗らぬマジンガーZなど人形同然」
「何!」
「貴様がドッキングする前にマジンガーZを奪ってしまえばこうして光子力エネルギーと超合金Zが我等の物となる訳よ!」
「そうか、その為の作戦だったんだな!」
完全に嵌められた。
Z無き今では機械獣と戦う事など出来ない。
まして今の甲児はパイルダーの状態なのだ。
Zが無ければ甲児は超人になれない。神にも悪魔にもなれる力を手に入れられないのだ。
そんな甲児の前に二体の機械獣が立ち塞がった。
その上空ではマジンガーZが沈黙を保ったままバルガスの腕に抱えられて飛び回っている。
「冗談じゃねぇ! マジンガーZはお爺ちゃんの残してくれた大切な形見なんだ! 俺にとっちゃ命と同じ位大切な物なんだ! てめぇらに奪われて溜まるか!」
「貴様は此処で名古屋港の藻屑となれ、兜甲児!」
突如、バルガスの胸から超音波砲が発せられた。
更にキングダンの胴体からは猛烈なミサイルが発せられてきた。
それらが全てパイルダー目掛けて飛んできたのだ。
「うわっ、ととっ!」
どれも一発でも当たれば粉微塵となってしまう。
しかし、何時までもこうしている訳にはいかない。
あしゅらの事だ。きっとマジンガーZを運び出す算段を考えてるに違いない。
恐らく海底要塞サルードだろう。
アレに運び込まれたら手遅れになる。
そうなる前にドッキングしなけれなならない。
「それ、今の内にマジンガーZを海底要塞サルードへ運び込め! 我等が主Dr.ヘル様への最高の手土産よ」
「そうはさせるか!」
勢い良く突っ込んだは良い物の、やはりZに近づくのは困難であった。バルガスからは超音波砲が、キングダンからはミサイル攻撃が、止め処なく放たれてくるのだ。
せめて片方だけでも大人しく出来れば何とか出来ると言うのだが。
そう思っていた時だった。
突如キングダンの後方から何かが当たり爆発を起こした。
その衝撃でよろけるキングダン。
「何だ?」
「あれは!」
甲児は見た。
其処に居たのは見覚えのある女性型のロボットが立っていたのだ。
アフロダイAであった。アフロダイAが救援として駆けつけてくれたのだ。
「さやかさん! 久しぶり」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ! 片方の機械獣は引き受けるから早くドッキングして」
「おう! 分かってらぁ」
言われずともである。これでどうにか合体できる。
バルガスが必死に超音波砲を放ちパイルダーを牽制しようとしている。
だが、どんなに早くても単発では速度の速いパイルダーを仕留めるのは難しい。
「へっ、とろくせぇんだよ!」
鼻で笑いつつZの頭部に難なく辿り着いた。
パイルダーの両翼を折り畳みZの頭部へとドッキングを果たす。
「パイルダーON!」
ドッキングと同時に甲児は叫んだ。
Zの両目が激しくスパークし全身にエネルギーが行き渡っていく。
パイルダーの操縦桿を通じてマジンガーZのパワーが甲児に伝わってくるのが分かる。
両手を振り上げて雄叫びを挙げるZ。
バルガスの両手を振り払い地面へと舞い降りた。
「こんにゃろう! よくも人のZを盗もうとしやがって!」
まず最初にバルガスに向かい猛烈なタックルを浴びせた。
諸にそれを食らったバルガスは数十メートル吹っ飛んだ後地面へと激突した。
相当の衝撃だったのだろう。
暫く起き上がりそうにない。
その内にもう一体の機械獣を仕留めなければ。
「あ、アフロダイAが!」
甲児が見た先ではキングダンの巨大な剣がアフロダイの右腕を切り裂く場面が見られた。
恐ろしい切れ味だ。
合金Zで身を固めたアフロダイを易々と切り裂いたのだ。
もしかしたらあの剣はZの超合金ですら切り裂くのかも知れない。
油断は出来なかった。
「さやかさん、下がるんだ! そいつは俺とマジンガーZが片付ける」
「えぇ、お願いするわ」
片腕がなければ不利だ。
仕方なくさやかとアフロダイAは一旦下がり、入れ替わりでマジンガーZが機械獣の前に立った。
「さぁ来い機械獣! 今度はこのマジンガーZが相手をしてやるぜ!」
悠然と機械獣を指差すZ。
そのZに向かい機械獣が剣を振り下ろしてきた。
真っ直ぐにZの頭部を目指している。
「危ねぇ!」
咄嗟にバックステップでそれを避ける。
が、掠めたのだろうか右の放熱板に縦一文字の傷が出来上がっていた。
それを見た甲児はギョッとした。
(間違いない。この機械獣の武器は超合金Zを破る力があるんだ。下手に食らったらアフロダイの二の舞になっちまう。どうする…)
甲児は悩んだ。マジンガーZには武器はあるが刀剣はない。
つまり素手が基本なのだ。
故に武器を持った相手には苦戦を強いられる。
それを知ったのか機械獣が猛然と武器を振るってくる。
まるで勝ち誇ったかの様にだ。
その様が甲児には腹が立った。
しかし現状を打破できなければ一向にこのままが続く。
「そうだ、剣の達人の世界では真剣白刃取りって言う奥義があった筈。それを使えば…」
これは甲児の賭けであった。
果たして自分の操縦の腕前が何処まで行っているか。
そして、達人の技を使えるのか。
もし一瞬でもタイミングを踏み違えた時は、Z諸とも自分が真っ二つになる。
固唾を飲み、甲児は操縦桿を握り締めた。
Zが大地に両足を叩き付けて悠然と構える。
そんなZに向かい機械獣がZの頭部目掛けて真っ直ぐ剣を振り下ろしてきた。
唸りを上げて剣がZの頭部へと迫る。
「今だ!」
一瞬のタイミングを見切り甲児は操作を行った。
甲児の思った通りの操作であった。
目の前ではZの両腕が機械獣の剣を挟みこんでいた。
はさまれた剣は押しても引いてもビクともしない。
ギチギチと剣を引き離そうとする機械獣の手の動きが伝わってきた。
「この野郎! こうなりゃこっちのもんだ! その武器よこしやがれ!」
機械獣のドテッ腹に蹴りを叩き込み海面へと押し倒す。
その際に挟んでいた剣を奪い取り手に持つ。
形成は一気に逆転した。今のZの手にはキングダンの剣がある。
Zの超合金のボディを傷つけた剣がもたれているのだ。
反対にキングダンの手には武器がない。
武器を持つ機械獣故に内臓武器は乏しいようだ。
やけっぱちにと内臓型のミサイルを放とうとしたが空しい音と共にミサイルは一発も出なくなった。
「へっ、どうやら弾切れのようだな。あんだけバカスカ撃ったんじゃそうなるもんだぜ! これでも食らいやがれ!」
持っていた剣を逆手に持ち替えて機械獣目掛けて思い切り投げつけた。
投げられた剣は機械獣の胸部に突き刺さり地面へと刺さる。
百舌のはやにえを彷彿とさせる光景が目の前に映っていた。
それでもまだ生きている機械獣は剣を抜こうと必死に剣の柄を握り締めていた。
「そうは行くか! これで粉々になりやがれ!」
Zの口から銀色の風が放たれた。ルストハリケーンだ。
それを浴びた機械獣は装甲も剣も揃ってボロボロになりこの世から消え去ってしまった。
残るはバルガスだけである。
が、見ればバルガスは体を分離させて海岸へと逃げて行ったのが見える。
「逃がすもんかよ! てめぇを叩き潰さにゃ寝覚めが悪いってもんだぜ!」
「ちょっと、待ってよ甲児君!」
海へと飛び込もうとするZをアフロダイが止める。
「何だよ、さやかさん?」
「マジンガーZが海中で戦えるの? もし戦えなかったら袋叩きにあうだけよ!」
「へっ、大丈夫さ。お爺ちゃんの作ったマジンガーZは何処だって無敵なのさ。心配してないでさやかさんは名古屋の消火作業でもしててくれよ! 機械獣を叩きのめすのは俺の仕事だぜ!」
「あ、もう!」
さやかの静止も効かず、Zは海へと飛び込んでいった。
深海の海は暗く、視界も悪い。
しかも、さやかの予想した通りの結果であった。
「う、動きが重い…水圧のせいか…幸い押し潰される心配はなさそうだけど、こりゃ苦労しそうだぜ」
今更ながら自分の行いを後悔した。
だが、それも全て後の祭りだ。
今は逃げた機械獣を倒す事だけを考えるべきだ。
そう思い深い海底の地面へと舞い降りた時、Zの両足が突如砂に埋もれてしまったのだ。
「やべぇっ、これじゃ身動き出来ねぇぞ!」
舌打ちを打った。
そんなZに向かいバルガスが分離状態で迫ってくる。
凄まじいスピードだった。
海底をあそこまでのスピードで泳げるとは以外だった。
「どうする? 海底じゃ使える武器は限られる。その上この状態じゃまともに動けそうにない……ん」
ふと、甲児は海面の砂に目をやった。
粒が細かい。これは使えるかもしれない。
「よぅし、見てろよ機械獣。一泡吹かせてやらぁ!」
ニヤリと微笑み甲児は海底の砂目掛けてルストハリケーンを放った。
勿論海底なので強酸の能力は失われている。
しかしその猛烈な風は海底の砂を舞い上がらせるには充分であった。
一瞬にして海底の砂は自然の煙幕となりZの体を全て覆い隠してしまった。
こうなっては機械獣でも見つけるのは困難であった。
その時、煙幕の中からロケットパンチが飛び出し、バルガスの頭部と両腕を破壊した。
このままでは狙い撃ちだと判断したバルガスは一旦巨大な岩盤の上に立ち、煙幕が引くのを待った。
その直後、Zに向かい超音波砲を当てる算段だったのだ。
だが、煙幕が晴れた時、其処にZの姿は何処にも無かった。
その直後、乗っていた岩盤が持ち上がる。
煙幕が張っている間に岩盤の下へと移動したのだ。
バルガスが乗っていた岩盤を放り投げる。
水圧の影響か思うように分離が出来ない。
今のバルガスは只の機械獣と何ら変わらない状態だ。
「てこずらせやがって! これでお仕舞いだぁ!」
Zが両腕を振り上げる。胸の放熱板が真っ赤に輝き其処から数万度の熱線が放たれた。
ブレストファイヤーを浴びた機械獣は瞬く間に溶けて爆発した。
「ざまぁ見ろぃ! マジンガーZは誰にも負けない無敵のスーパーロボットなんでぃ!」
鼻を摩り勝ち誇る甲児。
だが、其処で一つの誤算があった。
それは、自力で海面に上がれない事であった。
「流石にこれは予想外だったなぁ…誰か助けに来てくれないとこのまま海底に居る羽目になっちまうぜ」
どの道自力で上がれない以上どうしようもない。
とりあえず救難装置を作動させておいたので後は誰かが助けに来てくれるのを待つしかない。
やる事が無くなった甲児はシートに深く腰を掛けて操縦桿から手を離し楽な姿勢をとる事にした。
***
東京に向ったハヤタのビートルが見たのは巨大な角を生やした機械獣だった。
その角を生かし次々とビルを薙ぎ倒していく機械獣。
どうやらあの機械獣の武器はその巨大な角の様だ。
「Dr.ヘルめ。今は同じ人間同士が争っている場合じゃないと言うのに」
ハヤタは呟きながら懐からベータカプセルを取り出した。
ウルトラマンは常識を超えた力だ。
使い方を間違えれば世界を破壊しかねない恐ろしい力となる。
だが、ハヤタは間違えない。
彼の心に正義の心が宿っている限り、彼は間違った使い方をしないのだ。
「ビートルの自動操縦モードセット。行くぞ!」
決意を固め、ビートルから飛び降りたハヤタはベータカプセルを天高く振り上げてボタンを押す。
眩しいフラッシュが放たれ、その光を浴びたハヤタは光の巨人ウルトラマンへと変身した。
地面に降り立ったウルトラマンを確認した機械獣が今度はウルトラマンを標的に定めて突進してくる。
凄まじいスピードであった。
咄嗟にかわしたウルトラマン。
微かに掠った箇所に僅かな痛みを感じた。
(恐ろしい威力だ。まともに食らえば私とて危ないな)
ウルトラマンはヒヤリとした。
あの機械獣の突進をまともに受けてしまったらウルトラマンと言えども串刺しになるのは間違いない。
そんなウルトラマン目掛けて再び機械獣が突進してきた。
地上では不利と判断したウルトラマンが上空へ飛び出そうとした。
だが、その直後機械獣トロスD7の背中の棘がミサイルとなって襲い掛かってきた。
(何!)
完全に予想外の攻撃だった為に対応に遅れてしまいミサイルを全段その身で受けてしまった。
煙を巻き上げながら地面へと激突するウルトラマン。
(くっ、何て威力だ…間違いない、この機械獣は確実に私達の戦闘データを元に作られた機械獣だ)
片膝をつきながらウルトラマンは機械獣を見た。
今までの機械獣よりも遥かにパワーが増している。
それだけでなく、戦闘方法もより獣らしくなっている。
これでは怪獣と戦っているのと何ら変わらない。
嫌、下手したら怪獣よりも厄介な相手かも知れない。
そう思っていた時、胸のカラータイマーが激しく点滅しだした。
(時間がないか…仕方ない…出来れば使いたくなかったが…スペシウムで仕留めるしかない)
ウルトラマンとしては出来れば肉弾戦で倒したかった。
その後に他の場所へ救援に向いたかったのだ。
だが、相手がこれだけ強い以上最早手段は選んでられない。
突進してくる機械獣に向かいウルトラマンは両腕をクロスして十字型に象った。
その手から白銀のスペシウム光線が放たれた。
スペシウム光線は突進してくるトロスD7に命中する。
しかし、それでもトロスは突進を止める事はなく、ドンドンウルトラマンへと接近してきた。
(こうなったら、フルパワーで!)
ウルトラマンのスペシウム光線の出力が更にアップした。
光線の幅も更に大きくなり、トロスD7を覆い尽くす勢いで放たれた。
それを浴びたトロスD7も流石に耐え切れなくなったのかウルトラマンの目の前で爆発し果てた。
しかし、ウルトラマンも殆どのエネルギーを使い果たしガックリと肩を落としていた。
(エ、エネルギーを使いすぎた…これでは暫くは動けそうにない……)
無念の思いを胸にウルトラマンは大空へと飛び去っていった。
***
大阪に向ったダンは早速ウルトラセブンへと変身し機械獣と対峙した。
だが、そのセブンも機械獣を相手に苦戦を強いられていた。
(強い…これが機械獣なのか? 今まで戦ってきた怪獣よりも遥かに強い)
セブンが思っていた通りだった。
この機械獣の武器は両手の鉄球と頭部の炎だ。
それらを巧みに操りセブンを苦しめていた。
(余り光線は使いたくなかったが、此処は一旦距離を開けて…)
光線を使えばそれだけエネルギーを消耗してしまう。
そうなれば他の場所へ救援に行く事が出来なくなってしまう。
そんな思いの為躊躇していたが最早そんな事を考えていられない。
一旦距離を開けて両腕をL字型に象る。
ワイドショットを打とうとしたのだ。
だが、そんなセブンに映ったのは機械獣の放った鉄球であった。
(ぐはっ!)
鉄球を諸に食らってしまい吹き飛ばされてしまった。
当たり所が悪かったのか体が思うように動かない。
そんなセブンに向かい機械獣が頭部の炎を放ってきた。
(ぐっ! これが機械獣の戦い方か…名前の通りだとは)
今更ながら機械獣の名前の由来に納得するセブン。
その時、額のビームランプが点滅しだした。
エネルギーを消費し過ぎたようだ。
(此処で倒れたら大阪が壊滅してしまう。それだけはさせん!)
トドメとばかりに機械獣ゴーストファイヤーV9が両手の鉄球を一斉に放ってきた。
セブンは頭部のアイスラッガーを手に持ち鉄球の鎖の部分を断ち切る。
鎖から切り離された鉄球が宙を舞い、やがて地面に突き刺さった。
鉄球を失ったゴーストファイヤーがうろたえる。
そんなゴーストファイヤーに向かいセブンはアイスラッガーを投げた。
光に包まれながらアイスラッガーは機械獣を縦一文字に切り裂く。
やがて機械獣を切り裂いた後、戻ってきたアイスラッガーをセブンは頭部に戻し、今度こそワイドショットで機械獣にトドメを刺した。
真ん中から真っ二つにされた後、ワイドショットによって粉々にされた機械獣の残骸が辺りに散らばる。
しかし、セブン自身の消耗も相当であった。
(ぐっ、これではウルトラマンやスーパーロボット達の所へ行くのは無理か…無念だ)
苦虫を噛み締める思いを胸に、セブンもまた大空へと飛び去っていった。
***
九州へと急行したゲッターチームが見たのは九州を蹂躙している最中のメカザウルスの姿があった。
「なんてこった! あの九州が此処まで酷い有様になってるなんて…」
「リョウ! ショックを受けるのは後だ! 今はこいつらを叩きのめすのが先決だ!」
「分かってる」
隼人が言うまでもなかった。
こんな行為を許す訳にはいかないのだ。そう思うと竜馬中で激しい闘志が湧き上がってきた。
怒りの闘志だ。
「行くぞ! 隼人、武蔵」
「おう!」
「お、おう!」
三人が同時に言う。
三機のマシンが縦一列に並ぶ。
色合いからしてゲッター1の順序だ。
まず最初にベアー号とジャガー号の二機が連結して最後にイーグル号が合体して完成する形態だ。
だが、肝心のところで武蔵の操るベアー号の合体タイミングがずれてしまい、二機の軌道がずれて飛行して行ってしまった。
「何やってんだ武蔵!」
「わ、悪ぃ! も一回頼む!」
「待て、お前等!」
再度合体をしようとした時、空中型メカザウルスが合体出来ていない三機に向かい攻撃を仕掛けてきた。
三機のマシンに向かい猛烈な攻撃が開始される。とても合体出来る状態ではない。
「わわぁぁぁ! どうすんだよぉリョウ! ハヤトォォォ!」
「落ち着け武蔵! 今はチャンスが来るのを待つんだ!」
「そ、そうは言ってもよぉ…やっぱトカゲはこえぇぇ!」
どうやらまだ完全に克服は出来ていなかったようだ。
やがて、完全にパニック状態に陥った武蔵のベアー号が軌道をずれて完全に孤立状態になっていった。
「待て武蔵! 勝手に飛び回るな!」
「駄目だリョウ。アイツ完全にパニックになっちまってる!」
「くそっ、俺達で助けに行くぞ!」
急ぎ武蔵の救援に向おうとするもそれも飛行型メカザウルスの軍勢の為に思うように出来ない。
やがて、武蔵のベアー号の回りをメカザウルスが取り囲みだしている。
「ひえぇぇぇぇぇ! おおお、お助けぇぇぇぇ!」
「武蔵ぃぃぃ!」
誰もが武蔵のベアー号が撃墜される瞬間が脳裏に映し出されていた。
正にその時であった。突如ベアー号の周囲を一機の小型戦闘機が縦横無尽に飛び回り、メカザウルス達を蹴散らしていってしまった。
「な、何だあれは?」
「お、俺を助けてくれたのか?」
「フッ、別に礼は要らないぜ。正義の味方として当然の事をしたまでだからな」
戦闘機から声が聞こえた。
かと思うとその戦闘機は突如姿かたちを変えて人型となったのだ。
「君は一体何者なんだ?」
「俺の名か? 人呼んで、ブルージェット! 天空真剣の使い手だ」
「て、天空真剣?」
聞いた事のない流派だった。
あのブルージェットの外見から察するに恐らく地球上の流派ではないと察する事が出来た。
「雑魚は俺が相手してやる。その間にお前達は合体を済ませな」
「すまない、ブルージェット。よし! 行くぞ」
竜馬の激を受けて隼人と武蔵がもう一度隊列を組む。
再びゲッター1の陣列だ。
「武蔵、今度はミスるなよ」
「おう! 男巴武蔵! 何時までもトカゲに舐められて溜まるかぃ!」
どうやら武蔵も腹を決めたようだ。
これなら以前よりも合体の成功率は高くなりそうだ。
「行くぞ! チェンジゲッター1、スイッチ・オン!」
怒号と共にスイッチレバーを引く。
まず最初にベアー号とジャガー号が合体し、ゲッター1の手足が現れた。
其処にイーグル号が合体しゲッター1が遂に此処に完成した。
「合体完了! 行くぞ、メカザウルス」
「ほぅ、それが噂のゲッターロボか。中々いかしてるじゃないか!」
「嬉しく思うよ。共に戦おう! ブルージェット」
「おう! 天空真剣の奥義の数々を見せてやるさ。ジェェェェット!」
***
本郷猛こと仮面ライダーは一人原子力発電所内を走っていた。
中にはショッカーの戦闘員達でひしめきあっていた。
それらを蹴散らしながら奥地へと進んでいく。
最終的に辿り着いたのは発電所の中枢部であった。
其処は比較的広い作りとなっており巨大な機械があちこちに建てられていた。
あれが一つでも破壊されれば日本は放射能に苦しめられる事となる。
そんな事を断じて許す訳にはいかない。
「待っていたぞ、仮面ライダー!」
「むっ!」
見上げれば其処には幾体もの怪人が揃っていた。
その総数は実に11体は居る。
当然殆どが始めて見た怪人達だ。
「ショッカー。貴様等がこの発電所を占拠した理由は何だ?」
「決まっているだろう。この研究所を占拠すれば日本は深刻なエネルギー問題に陥る事間違いなし。更にこの発電所を破壊すればこの国は殺人的な放射能に犯される事となる。そうなれば改造された我々以外は生きていける事は出来ない。即ち人間達は自ずと我等ショッカーに改造される運命しか生きる道がないと言う事になるのだ!」
恐ろしい考えであった。
人間の住めない国にしてしまえば人間たちは自ずと改造人間にならなければ生きられない国にするのが狙いだったのだ。
そうなれば日本の人達の多くは悲しき末路を辿る事となる。
そんな事を許す訳にはいかない。
人類の自由を守る為にこの発電所を守らなければならない。
そして、その為には目の前に居る11体の怪人を倒す必要があるのだ。
「ショッカー! 貴様等の好きにはさせん。この俺が居る限り人類の未来は守ってみせる!」
「フンッ、威勢が良いな本郷猛。だが、これでもそんな事が言えるかな?」
中央に居た怪人がそう言うと、奥から一人の女性が連れて来られた。
それは本郷の知る人物であった。
「ル、ルリ子さん!」
「猛さん!」
「フフフ、この女も悲しい女よ。我等を裏切った緑川博士の娘だと言うだけで殺されねばならないのだからな」
「父が、父がショッカーの一員だったというんですか?」
「ルリ子さん! 聞いちゃ駄目だ!」
本郷は叫ぶも、構わず怪人は話を続けた。
「貴様の父緑川博士は其処に居る本郷猛を改造した張本人よ。奴が本郷猛を売ったのよ。緑川ルリ子。貴様を救うと言うそれだけの理由の為にな」
「そ、そんな…」
初めて知った驚愕の事実にルリ子はショックを受けた。
考えてみれば本郷猛が緑川博士を殺すのも頷ける。
自分の父は彼の人生を身勝手な理由で踏みにじってしまったのだ。
そうとも知らず、自分は本郷猛を責め続けてきた。
自分は彼を責める事など出来ないと言うのに。
「猛さん、御免なさい…私と、私の父のせいで、其処まで苦しんでしまったなんて…」
「違う! 俺は博士に恨みなんて抱いていない! あの人のお陰で俺はショッカーの魔の手から逃げられたんだ! だからこうして人類の平和の為に戦えるんだ!」
「何を言う! 貴様を見て人間達はどう思う? 貴様は、我等ショッカーと同じ人知を超えた化け物よ!」
「うっ!」
その言葉は本郷にとってとてもショックであった。
彼も人間とは違う。
力の制御が出来ず子供と戯れる事すら出来ない。
それは人間ではない、正しく化け物その物であった。
「哀れ本郷猛。我等と同じ脳改造を施されていれば苦しむ事も無く生きていられたというのに。貴様は緑川博士に恩義を感じているだろうが、それは全くの逆だ。緑川博士は貴様を苦しめる為に逢えて逃がしたのだ。貴様は緑川親子に踊らされた哀れな化け物よ」
「違う…俺は…俺は…」
「化け物め! 貴様は誰も味方してくれない孤独な怪物だ。だが、我等ショッカーは違う。今、この場で緑川ルリ子を殺して貴様の無念を晴らしてやろう」
そう言うと怪人の鉤爪がルリ子に迫ってきた。
ルリ子は抵抗しなかった。
自分達親子の為に本郷は人生を狂わされ、誰からも愛されない孤独の存在となってしまった。
その償いがしたかったのだ。
だが、
「止めろ!」
その場から跳躍し、怪人を蹴り飛ばす。
「猛さん!」
「ルリ子さん、例え俺が化け物だとしても。俺は人類の為に戦いたい。それが、生まれ変わった本郷猛…嫌、仮面ライダーの使命なのだから!」
「フンッ、馬鹿な奴よ。我等栄光あるショッカーに戻る最後のチャンスを与えてやったと言うのにそれを自らの意思で捨てるか?」
ライダーとルリ子を囲むように怪人達が集まってくる。
流石のライダーも11体の怪人相手に、それもルリ子を守りながらと言うのは分が悪かった。
だが、ライダーは逃げない。
彼は例え孤独であろうと誰からも愛されないであろうとも、彼は人類を愛している。
愛する人類の為に命を捧げることが出来るからだ。
「来いショッカー! 例え貴様等と刺し違えてでも人類の平和は守って見せる!」
「猛さん、無茶よ!」
「良いんだ。例え俺が倒れようとも、俺の仲間達が俺の意思を告いで世界の平和を守ってくれる。ならば、俺は命の限り戦い続ける。仮面ライダーとして!」
「言いたい事はそれだけか? ならば死ねぃ! 仮面ライダー!」
怪人達が一斉にライダーとルリ子に迫ってきた。
だが、その刹那、突如眩い光が怪人達の目をくらませる。
「な、何だこの光は?」
【貴様等悪党にその光を見る事は出来まい!】
「何?」
声は天井近くから聞こえてきた。
見上げると其処には一人の青年が立っていたのだ。
青年は怪人達を見下ろし淡々と言葉を放った。
【例え誰からも愛されず、孤独に生きようとも、人々の未来の為、そして愛の為に戦い続けるもの…人、それを『ヒーロー』と言う!】
「な、何者だ貴様!」
「お前達に名乗る名前はない!」
名乗りを終えた青年は二人の近くに降り立った。
「君は一体?」
「貴方と同じ、孤独と戦う戦士です。此処は共に戦います」
「有難う。助かる」
戦士、ロム・ストールが剣狼を構えて怪人達を見る。
「ええぃ! 相手はたかだか二人だ! 叩き潰せ!」
「おいおい、二人だけとは悲しい事を言うじゃねぇか。俺も居るんだぜ!」
「その声は!」
その声と共に現れたのは紅い戦闘服を纏ったもう一人のヒーローであった。
「快傑ズバット! 此処に参上!」
「ズバット、来てくれたのか?」
「フッ、何時ぞやの借りを返しに来たぜ。仮面ライダー」
背中を向けながらもライダーに語るズバット。
かつて彼はライダーに窮地を救ってもらった。
その恩返しのつもりだったのだろう。
だが、それでも今はとても有り難い事だ。
「貴様等! 誰を味方しているのか分かっているのか? 其処に居る男は我等と同じショッカーに改造された哀れな怪物なのだぞ!」
「確かにそうかも知れない。だが、彼は違う。それは、彼には心があるからだ。人間を愛する心が有る限り、お前たちの様な化け物になりはしない」
「そして、その心が有る限り。俺達はヒーローとなり貴様等の悪行を叩き潰す!」
ロムとズバットが拳を握り締めて言い放った。
それは先ほど本郷猛が言ったのと同じ言葉だった。
「ロム、ズバット…」
「共に戦おう。仮面ライダー」
「お前は化け物じゃない。お前には微笑んでくれる仲間も居れば守りたい者も居る。お前は俺達と同じヒーローだ!」
「あぁ…あぁ! そうだとも。俺は仮面ライダー。人類の自由と平和を守る為に生まれた正義のヒーローだ!」
完全に立ち直った本郷が立ち上がり、三人が並び立つ。
その雄雄しき姿に11体怪人達がたじろぐ。
「猛さん」
「ルリ子さん、見ててくれ。これが俺の宿命。そして、俺の戦いなんだ! 行くぞショッカー!」
「おのれぇ、裏切り者諸とも殺してしまえ! 掛かれぇ!」
三人のヒーローと11体怪人の激闘が始まった。
数ではショッカーの怪人達が勝っていた物の、三人の固い絆で結ばれたヒーロー達の前では無力であった。
「天空真剣。稲妻二段切り!」
「ズバットアタァァァック!」
「ライダァァァキィィィック!」
三人のヒーローの前に次々と倒される怪人達。
遂には一人だけとなってしまった。
「くっ、こうなれば発電所を爆破してこの国を放射能で汚染してくれる!」
「そうはさせるか! ロム、ズバット、頼む!」
「分かった!」
「任せろ!」
二人は頷きライダーの前で肩を組み土台となる。
その土台を踏み越えてライダーが空高く飛翔する。
「なにぃ!」
「トドメだ! 俺達三人のヒーローの一撃を受けろ! ライダー三倍キィィィック!」
三人のヒーローの合体技とも言える蹴りが炸裂した。
それを食らった怪人は部屋の最果ての壁にまで吹き飛ばされてそのまま地面へと崩れ落ち、やがて灰となり消え去ってしまった。
残ったのは仮面ライダーと怪傑ズバット、そしてロム・ストールの三人となった。
「有難う。ロム、ズバット」
「気にしないで下さい。共に正義の為に戦う同士を放ってはおけなかっただけです」
「それにさっきも言っただろう。何時ぞやの借りを返しに来たってな。これでお互い貸し借りはなしだぜ」
ロムは丁寧に答え、ズバットこと早川健は多少皮肉掛かった言い回しをした。
そんな二人に本郷は一言礼を言い、そしてルリ子の元へと歩み寄った。
「ルリ子さん、怪我は無かったかい?」
「猛さん、何故、私の事を守ってくれたの?」
「俺は、貴方にも、貴方のお父さんにも恨みなんて抱いちゃいない。只、俺は誰も殺したくなかったんだ。これ以上、俺みたいな犠牲者は出したくない。その為にも、俺はショッカーと戦う」
猛は拳を握り締めた。
晴れてルリ子の誤解も解け、改造人間としてのジンクスを乗り越えた本郷猛。
だが、彼が元の人間に戻る事はない。
彼は未来永劫孤独のままなのだ。
だが、彼は決して嘆きはしない。何故なら、彼は人類の自由と平和を守る正義の『ヒーロー』なのだから。
***
ユーノと共に海鳴市に戻ったなのはが見た物は、全長約20mはあろう巨大な木になったロストロギアであった。
「す、凄い大きい」
「多分、人間が起動させちゃったんだ。あれは今まで以上に強大なロストロギアだよ」
とんでもなかった。
今までなのはが戦って来た相手でも動物が憑依したロストロギアだけでも苦戦を強いられていると言うのに今度の相手は人間が起動させてしまったロストロギアである。
果たして自分だけでどうにか出来るのだろうか。
そう思っていた時だった。
次々とロストロギアの枝を切り裂いていく少女の姿があった。
以前木曽谷で出会った金髪の少女だ。
その少女はなのはの存在に気づかずにロストロギアとの戦闘に集中していた。
だが、そんな少女の背後からロストロギアの鋭い枝が襲いかかって来た。
「危ない!」
咄嗟になのはは砲撃を当てた。
なのはの砲撃を食らった枝は驚き引っ込む。
それと同時に少女もなのはの存在に気づき振り返る。
「君は?」
「良かった。あと少し遅かったら大変な事になってたよ」
「何で助けたの?」
返ってきたのは以外な返答であった。
少女からして見れば折角の大事な場面を邪魔された様な感じなのだろう。
助けた筈のなのはに対し不満そうな視線をぶつけていた。
その視線からユーノは彼女は危険な存在と思えた。
「なのは、この子がそうなの?」
「うん、前に私を助けてくれた子なんだ。ちょっとキツイかも知れないけどきっといい人なんだよ」
ユーノと話し合うなのは。
だが、一向に少女の痛い視線は無くならない。
「何しに来たの? ジュエルシードは渡さないって言った筈だよ」
「今はそんな事言ってる場合じゃないよ。まずはあのロストロギアをどうにかしないと!」
なのはの言うのも一理あった。
このまま放っておけば確実に大災害になるのは間違いない。
そんな時にジュエルシードを巡って争ってはいられない。
「此処は一緒に戦おう。私と君ならきっと何とか出来る筈だよ」
「…分かった。でも、私の言う通りにしてね」
「うん!」
なのはは嬉しそうに頷いた。
初めて彼女と一緒に戦う事が出来る。
あの時は一方的に突き放されてしまったが、あの時とは自分は違う。
少しは彼女に追いついたと思えるのだ。
だから、今度は絶対に彼女の足を引っ張らないように戦おうと思った。
「私が中枢まで行く。君は遠くから援護して」
「うん!」
フェイトが近距離で光の刃を振るい、なのはがその後ろからアクセルシューターを使い援護を行う。
二人の戦いは正に息の合ったものであった。
とても今回初めて一緒に戦う関係とは思えない動きであった。
しかし、幾ら枝を切り落とそうとも、幾ら外壁を破壊しようとも瞬く間に再生してしまうロストロギアが相手ではとても部が悪い。
これではイタチゴッコだ。
そうなれば先に魔力が尽きてしまい封印できなくなってしまう。
「こうなったら、レイジングハート! ディバインバスターならどう?」
【魔力設定を非殺傷設定にすれば憑依者を傷つけずに封印出来ます。ですが、あれだけの規模を封印破壊するには相当の魔力を用います】
「つまり出来るんだね?」
なのはが知りたいのは其処であった。
要は出来るのか出来ないのか。その二つに一つなのだ。
だが、レイジングハートの口から確かに出来ると聞いた。
ならばする事は一つしかない。
「あの、私が収束砲を撃ちます。だから、時間を作って貰えますか?」
「あれを封印出来ると言うの?」
「多分」
「…」
少女は悩んだ。
このままジリ貧の闘いをしていてはその内魔力が尽きて自分達もロストロギアの餌食となるだけだ。
だったら僅かながらも可能性のある方法に賭けてみる方が良さそうだ。
「分かった。時間稼ぎは任せて!」
「有難うね。えぇっと…」
「フェイト。私の名前はフェイト・テスタロッサだよ」
「うん、お願いね! フェイトちゃん」
なのはは頷き収束砲の発射準備の為に魔力チャージを行った。
その間、フェイトはなのはに迫り来る枝を切り払っていった。
(フェイトちゃんが頑張ってる。私も頑張らないと…)
レイジングハートの穂先をロストロギアの中心部へと差し向ける。
チャージ時間からして撃てるのは恐らく一発。
それを外せばロストロギアの猛反撃を受けてお陀仏は目に見えている。
現に目の前で戦ってるフェイトの顔色からも疲れが見えていた。
これ以上は長く戦えない。
絶対にこれで仕留めなければならない。
【チャージ完了! マスター、いけます】
「うん。行くよ、ディバインバスター!」
なのはが叫ぶと共に桜色の巨大な魔力砲が巨大なロストロギアを覆い尽くしていった。
その姿はミルミル内に崩壊していき、やがて姿形は完全になくなってしまった。
そして、その中から二人の少年少女が気を失って倒れており、その近くにジュエルシードが転がっていた。
「や、やった! やったよ」
「凄い…あれだけの魔力を持ってるなんて…」
なのはは喜んでいたがフェイトは内心恐れていた。
これだけの強大な魔力を持った者と戦って果たして勝っていけるのだろうか?
今でこそ技術面で勝っているだけでありそれで追いつかれたら恐らく勝ち目は薄い。
ならば今の内に亡き者にしておくのが利口と言える。
「やったよフェイトちゃん。私達の勝ちだね」
「え? う、うん…そうだね」
だが、フェイトはそんな事出来なかった。
こんなにも無邪気に接してくるなのはを傷つける事がフェイトには出来なかったのだ。
だが、ジュエルシードともなれば話は別だ。
彼女に渡す訳にはいかない。
「なのはって、言ったよね」
「え? うん」
「なのは…ごめん!」
そう言ってなのはを激しく突き飛ばす。
空中の為バランスを崩しながらもなのははフェイトを見た。
視線の先でフェイトはジュエルシードに手を伸ばしていたのだ。
だが、その直後、彼女の足元から何かが現れようとしていたのを見た。
「フェイトちゃん! 危ない」
後先考えず、なのははフェイトを思い切り突き飛ばした。
その直後、なのはの足元から現れたのは先ほどのロストロギアよりも巨大な機械獣であった。
上半身と下半身に分かれた寸胴型のその姿の機械獣の腹の部分からは獲物を捕らえる為に捕獲用の電磁ネットが張られており、なのははその中に閉じ込められてしまった。
「なのは!」
「こ、これは!」
ユーノは叫び、フェイトは驚愕していた。
あの時なのはが突き飛ばしてくれなければ今頃自分がこの檻の中に閉じ込められていたのだ。
【フハハハハハ、作戦成功! 二人一緒に捕獲と行きたかったが、まぁ片割れだけでも捕まえられただけでも良しとするか】
「誰!」
声は空の方からした。
見上げると其処には何時の間にか巨大な飛行機が浮かんでいた。
嫌、それ以上の大きさだ。
海鳴市全域を影で覆える程の巨大さを誇ったその姿は正しく空飛ぶ要塞である。
そして、その空飛ぶ要塞の先頭部分にその声の主は居た。
其処に居たのは片目を眼帯で覆った中年の男の生首が宙に浮いていたのだ。
「な、生首!?」
【失敬な! 生首などではない! 我輩はDr.ヘル五大軍団の一つ、鉄十字軍団を任される『ブロッケン伯爵』なるぞ!】
男は大層不満そうに言う。
その後でその生首が分離した体にもたれている事が分かった。
だが、やはり見てて怖い物だ。
自分の首を持つ人間など今まで見た事がないのだから。
「ユーノ君! フェイトちゃん!」
「なのは! なのはをどうするつもりなんだ!」
【ふん、全てはDr.ヘルの御心のままよ。今回の作戦の本当の目的は貴様等のどちらかを捕らえる事。日本攻略はそのついででしかなかったのよ!】
「なっ!」
ブロッケンのその言葉にユーノは驚かされた。
全てのあの機械獣の侵攻の真の目的はなのはかフェイトのどちらかの誘拐だったのだ。
そして、それはなのはを捕まえた事により達成された事になる。
【これで我が主Dr.ヘルもお喜びになるだろう。引き上げるぞ。機械獣ノナカーゴH2よ】
ブロッケンが杖を振りかざして叫ぶ。
それを受けた機械獣はなのはを中に入れたまま腹部を閉じて空を飛ぶ飛行要塞グールへと入っていった。
ユーノは後を追おうとしたが無駄だった。
今行けば自分もあの電磁ネットに捕まってしまう。
それでは本末転倒であった。
そして、そんなユーノとフェイトの見る前で、なのはは機械獣に捕まりそのまま連れ去られてしまったのであった。
つづく
後書き
次回予告
少女は一人悪の巣窟へと連れて行かれてしまった。
其処で聞かされるのは父の思いがけない記憶であった。
次回「救出!バードス島」
お楽しみに
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