ある白猫の生涯
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1-12
年が明けて、翌年の春。ミナツちゃんは高校を卒業したみたいで、庭でガーデンパーティが行われていた。バーベキューのコンロが置かれて、肉だの海老、貝が焼かれていて、時々、お父さんとかミナツちゃんが俺にもおすそ分けをしてくれていた。
「ミナツと こうやって居られるのも最後だもんなぁー なぁ 岩も寂しいよなー」
と、そんなこと 言われても 俺には 何のことかわからないのだ。
「お父さん 一度 夏には帰ってくるからー 岩ちゃんと仲良くやっていてね」
「そーだなー でも ミナツが居ないと 庭で目刺し焼くことも減るかなー」
「そんなのー 岩ちゃんが居るわよー ねっ! 岩ちゃん?」
『フニヤー』
そして、終わると少し薄暗くなっていたけど、ミナツちゃんが
「岩ちゃん お散歩行くよ」と、俺を誘ってきた。ついていくと、何件か先の家で、出てきたのは すずり って言う子だ。
「あらっ 岩ちゃんも 一緒?」
『ニャー』
「ミナツちゃん 寂しいなぁー 行っちゃうんでしょ アメリカ」
「うん 3日後」
「岩ちゃんも 一緒に行くん?」
「そんな訳ないじゃん だから 私が居なくなっても 岩ちゃんを可愛がってあげてね! その ご挨拶」
「うん 何だっらー ウチの子になってもいいよー」
「でも お父さんがますます寂しがるからー」
その夜は一緒にお風呂に連れて行かれて、次の日もその次の日も連続で洗われたのだ。
「私が居なくなったら、お母さんに入れてもらうのかなぁー おとなしく言うこと聞くのよ 多分 あんまり洗ってもらえないから、草むらとかに行って汚さないようにしなさいね」と、諭しているのだろう。
朝 ミナツちゃんは大きなカバンを車に積み込んで、俺の小屋に声を掛けてきた。クリーム色の長いズボン姿で俺を抱き上げて
「岩ちゃん しばらく お別れよ 元気で居てね」と、頬ずりをしてきた。今までと様子が違うのに初めて気が付いたのだ。
「ミナツ そんな 抱いたりしたら 毛がついちゃうよー」と、後ろからお母さんの声がして・・・。
「だって しばらく会えないんだものー」と、俺の大好物の目刺しをくれながら、ミナツちゃんは涙が出てきていたと思う。
『フガーナ フガーニヤ ニャーガ』『ダメー イクナヨー ヤーダ』俺は、精一杯 人間の言葉を発していた。
「なぁに 岩ちゃん 今 行くなよーって言ったの?」
「ミナツ 別れ惜しいだろうけど 出るよ」と、お父さんが
「お父さん 今 岩ちゃんがしゃべった!」
「何 言ってんだ 気のせいだろー 動転してるのか?」
「本当よ! 岩ちゃん お別れするね」
『フガーナ フガーニヤ ニャーガ』
「ほらっ ダメ 行くなヨー 嫌だ って」
「うー 岩・・・ わかるのかー お前にも・・・」と、お父さんは声を絞り出していた。
だけど、お母さんに促されてお父さんの運転でお母さんと3人で行ってしまった。ミナツちゃんは。車の窓を開けて、見えなくなるまで俺に手を振ってくれていたのだ。それが、ミナツちゃんの姿を見る最後になるとは、この時、俺にはわからなかったのだ。でも、嫌な予感がしていたので、止めたつもりだったんだけど・・・
俺は、ミナツちゃんはしばらく旅行で留守になるんかなー 程度に思っていたのだが、家の男の子達が学校に行き出しても、ミナツちゃんは帰ってこなくて、ご飯なんかもお母さんが持ってきてくれるといった具合だった。だから、俺は本家の家の中には殆ど入ることがなくなって、もっぱら俺の見張り小屋で過ごしていたのだ。きっと ミナツちゃんが現れるさー・・・
そのうち 近所のすずりちゃんが学校の行き帰りには、必ず俺に声を掛けてくれて、門のゲートを開けて入って来て、俺の頭を撫でてくれたりもするようになっていた。
「岩ちゃん ミナツちゃんが居なくって寂しいだろうけど すずりが代わりに可愛がってあげるからね ミナツちゃんと約束したし」
この頃から、ようやくミナツちゃんがどっかに行ってしまったんだと俺にもわかるようになってきていた。だけど、ミナツちゃんは元気で居てねと言っていたけど・・・この頃から、俺は、小屋に飛び乗るのも以前のように軽くというわけにはいかなくなってきていたし、真直ぐに歩くのも時々よろけるのだ。何となく、身体の変調を感じていたのだ。そんなに歳をとっている訳でも無いのに・・・。何かに侵され始めていると
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