金木犀の許嫁
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第三十話 夢で会ってその十
「お歳よね」
「人間五十年だからね」
「そうよね」
「しかも結構衰えていたそうだし」
失禁までしていたという、梅毒説もある。
「ぼけてきたとかもね」
「言われてて」
「それでね」
その状況でというのだ。
「急によ」
「淀殿さんだけが、だったから」
「怪しいってね」
「言われてるのね」
「それもね」
真昼はさらに言った。
「当時からね」
「言われてたの」
「秀頼さん実はって」
「秀吉さんのお子さんじゃないって」
「そうね」
「じゃあ豊臣家は」
「秀頼さんを頼むって言ってたけれど」
それでもというのだ。
「実はね」
「違ったの」
「そうかも知れないのよ」
「そうなのね」
「そこはね」
どうにもというのだ。
「切ないわね」
「実は、ってなると」
「そう思うわ」
「というかです」
ここで白華は目を顰めさせてこう言った。
「それって不倫ですよね」
「そうよ」
真昼もその通りだと答えた。
「若し本当に秀頼さんが秀吉さんのお子さんじゃないとね」
「そうですよね」
「まさにね」
正真正銘のというのだ。
「不倫よ」
「最悪ですね」
「不倫は駄目よね」
「そんなことしたら切腹です」
真昼に真剣な顔で怒って言った。
「昔なら、今でもです」
「絶対に駄目よ」
「離婚で巨額の慰謝料です」
「そうよね」
「淀殿さんそんなことしたんですか」
「若しそうならね」
豊臣秀頼が豊臣秀吉の子でないならというのだ。
「そうなるわ」
「とんでもないことですね」
「当時から噂されていたらしいのよ」
「実は、と」
「周りでもね」
「徳川家康さんも聞いてましたか」
「そうじゃないかしらね」
その彼もというのだ。
「噂になってるなら」
「そうですか」
「正妻のねねさんも知っていて」
北政所と言われた彼女もというのだ、その彼女の実家が木下家で岸和田藩で代々藩主を務めていたのだ。
「あの人も離れたと言われてるわ」
「豊臣家から」
「あの人実際に離れたけれど」
秀吉の死後豊臣家から距離を置き家康に近付いたのだ。
「どうもね」
「それが理由ですか」
「秀頼さんを見てね」
「ご主人のお子さんじゃないとですね」
「わかったか感じたか」
「それで、ですか」
「離れたってね」
その様にというのだ。
「言われてるわ」
「そうですか」
「何でもそのお相手は」
その者はというと。
「大野治長さんと言われてるのよ」
「その人ですか」
「幼い頃から一緒にいてね」
大野治長の母が淀殿の乳母であったのだ。
「それでね」
「幼馴染みであって」
「頼りになる側近だったから」
「それで、ですか」
「大野治長さんと不倫してね」
「秀頼さんが生まれましたか」
「そうかもって言われてるのよ」
そうだというのだ。
「根拠はないけれどね」
「そういえば秀吉さんって小柄よね」
夜空は彼のこのことを話した。
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