金木犀の許嫁
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第三十話 夢で会ってその九
「あの方もね」
「和歌お好きでしたね」
「それで謙信さんも」
武田信玄のライバルである彼もというのだ、尚守護であった武田家と守護代の長尾家の家の格の違いはあった。
「漢詩をね」
「詠まれていますか」
「お酒のことをね」
「謡っていますか」
「辞世の句を用意していたけれど」
「その辞世の句がですか」
「一酔夢ってね」
その様にというのだ。
「一文入れているのよ」
「そうでしか」
「秀吉さんだってね」
豊臣秀吉もというのだ。
「あの人学問はね」
「苦手でしたね」
「読み書きは苦手だったみたいだし」
「それで、ですね」
「そっちは苦手だったらしいけれど」
それでもというのだ。
「ちゃんと歌をね」
「謡っていますか」
「辞世の句をね」
「あの人もですね」
「なにわのことは夢のまた夢って」
「謡っていますか」
「天下人になったけれど」
それでもというのだ。
「何か最後切ないのよ」
「そうよね」
夜空もまさにと応えた。
「あの人って」
「最期はね」
「秀頼さんを頼むって必死に言って」
「そうしてだったしね」
「しかも豊臣家表向きは滅んだし」
夜空はこのことも話した。
「実際はお孫さん生き残ってたけれど」
「秀頼さんのお子さんがね」
「木下家の分家ね」
「岸和田の方のね」
「そうだったけれど」
それでもというのだ。
「表向きはね」
「滅んだし」
「切ないわね」
「ええ、その秀頼さんもね」
ここで真昼はこんなことを言った。
「本当に秀吉さんのお子さんか」
「わからないの」
「あの人ずっと子供出来なかったでしょ」
「凄い女好きなのに」
「あっちの趣味なくてね」
同性愛のそれがというのだ。
「当時は普通でも」
「女の人だけね」
「あの人はね、けれどね」
それでもというのだ。
「物凄い数のお妾さんいても」
「それでもよね」
「一人もね」
「お子さん出来なかったわね」
「それがよ」
その状況でというのだ。
「淀殿さんだけはね」
「お二人出来て」
「秀頼さんもそこに入っているけれど」
「何でずっと生まれなかったのに」
「しかも五十過ぎてよ」
「当時で五十過ぎって」
夜空は少し考えて言った。
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