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老人の性欲

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第六章

「今じゃ七十もな」
「まだまだこれからだな」
「だからな」
 それでとだ、南は言った。
「長いと思って」
「楽しんでな」
「生きていこうな」
「そうしような」
 藤本も言った。
「性欲がなくても」
「他のことを楽しんでな」
「一日一日な」
「生きていこうな」
「それでだけれどな」
 藤本は南にあらためて話した。
「最近面白いドラマがあってな」
「どんなドラマだ?」
「人気の女優さんが出ていてな」
 そうであってというのだ。
「そしてな」
「そのうえでか」
「ああ、そしてな」
 それでというのだ。
「毎週金曜にやっててな」
「ネットでもやってるな」
「アベマでな」 
 こちらでもとだ、藤本はすぐに答えた。
「やってるよ」
「じゃあな」
「あんたはそっちで観るか」
「テレビだとな」
 苦い顔で言うのだった。
「観られる時間限られてるだろ」
「ああ、どうしてもな」
「けれどな」
 それがというのだ。
「ネットだと好きな時間に観られるだろ」
「ああ、視聴出来る期限内だとな」
「だからな」
「それでか」
「わしはな」
 こう藤本に話した。
「ネットだよ」
「まあわしもネットでな」
「よく観るな」
「ドラマもアニメもな」
「そうなんだな」
「じゃあわしも今秋からな」
「そのドラマネットで観るか」
「ああ、そうしてな」
 そのうえでというのだ。
「楽しむな」
「ネットはいいな」
「ああ、年寄りにもな」
「色々勉強になってな」
 そうであってというのだ。
「何時でも観られる」
「本当にいいな」
「世の中よくなったな」
「わし等が若い頃は」
 丁度就職したての頃を思い出して話した。
「ネットなんてなかったな」
「やっとビデオが普及してきた頃だったな」
「ああ、VHSとかな」
「懐かしいな」
「それじゃあ今はな」
「ネットでも観ような」 
 こうした話をしてだった。
 二人はそれぞれドラマ等を視聴した、性欲はなくなったがそれでも人生を満喫していた。それだけが人生ではないので。


老人の性欲   完


                   2024・5・28 
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