老人の性欲
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第五章
「そして健康だ」
「だったらな」
「そうしたことから楽しめるしな」
「それでいいな」
「枯れてもな」
性欲がというのだ。
「それでも人生やっていけるな」
「そうだ、それにな」
南は藤本に言った。
「人間百年とか言われてるな」
「今はな」
「だったらな」
それならというのだ。
「これからもな」
「長いな」
「あと四十年近くあるんだ」
「その間楽しまないとな」
「人生色々あるけれどな」
南はそれでもと言った。
「誰にも迷惑かけず楽しめたらな」
「それで勝ちだな」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「わし等はこれからもな」
「人生長いと思ってな」
「楽しまないとな」
「性欲がなくなってもだ」
藤本はここで笑ってこんなことを言った。
「子供の頃あったか」
「まだ小さなな」
「スカートめくりとかはしてもな」
「それ位だったな」
「そりゃあるさ」
子供にも性欲はというのだ。
「けれど毎日とかな」
「そういうのはないな」
「だからな」
それでというのだ。
「人間歳取ったら子供に戻るともいうな」
「いうな、童心だな」
「それを取り戻してな」
南にそれでと話した。
「そうなっていくってな」
「言うな」
「だからな」
それでというのだ。
「子供に戻る感じでな」
「楽しめばいいか」
「これからの長い人生もな」
「性欲が枯れてもな」
「世の中性欲だけか」
南にこうも言った。
「そう言うとな」
「違うな」
「これまで話したな」
「お互いな」
「だったらな」
「ああ、長い人生をな」
南も言った。
「ずっとな」
「楽しめばいいな」
「百年より短いかも知れないけれどな」
「人間何時死ぬかわからないからな」
「百歳より短いかも知れなくてな」
「もっと長いかも知れない」
こう言うのだった、南に。
「そこはわからないな」
「ああ、しかし古稀なんて言ってもな」
七十歳だ、そこまで生きる人は古来稀という意味であり人間の寿命が平均してまだそこまで長くなかった頃の言葉だ。
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