私 あの人のこと 好きなのかも やっぱり好きなんだよ 昔からー
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4-8
6月になって、同じクラスの仲良くなった天野アキちゃんから
「マオ ウチに遊びにおいでよー 苺が食べ放題だよー」と、誘われていた。彼女の実家は苺のハウス栽培をやっていると言っていたから・・。宇都宮からJRで1駅乗ったところ。土曜日に、伊織利さんはバイトって言っていたから私は空いていたのだ。
駅に着くと、アキちゃんが迎えに来ていて
「歩いて30分ぐらいなんだけど 平気?」
「うん それっくらい 平気」
駅前のお店が何軒かあるところを過ぎると、田舎の道になって徐々に家も少なくなってきて、そのうち畑とかビニールハウスが目立つようになってきた。そして、比較的新しいといえば新しい現代風の家に、その奥には古い農家のような家と倉庫みたいなのが建っているところで
「ここよ 苺とかさつま芋をやってるの」と、新しい家のリビングに通されて、麦茶を飲みながら
「さっきまで、朝の収穫と出荷作業やってたのよー 今は、お母さんとお兄ちゃんが、昼からの出荷の準備なの」
「へぇー アキちゃんは手伝わなくていいの?」
「うん 朝だけ 小さい頃から学校行くまでは手伝ってる 今の時間は朝より数は少ないからね 二人だけで大丈夫 後で、食べに行こうね おじいちゃんが、今 配達に行ってるのよ 道の駅とか地元のスーパーに つぅーと 昨日の売れ残りとかを持って帰ってくるだんべ だからね 3年前ぐらいから、それと出荷出来ない傷物と形の変なのをジャムとかペーストに炊きあげてるのよ」
「そうなん 大変なんだね」
「まぁ ウチの収入源よー 私達が大学に進めるのも 苺があるお陰!」
そして、アキちゃんは私に練乳を紙コップに半分くらい入れたのと小さなポリ袋を渡してきて
「苺を付けて食べるの 袋はヘタを入れて! みんなはそのまま食べるんだけど、アキだけはこれを付けるの」と、倉庫に案内されて、苺の選別作業をやっているお母さんとお兄さんに紹介してくれていた。
「奥浦真織ちゃん 大学一の美人なのよ」
「アキちゃん! やめてよー」
「あぁー 評判になっているよ! 声を掛けようと思ったら 残念! どうも彼氏が居るみたいだって みんな言っている」
「お兄ちゃんなの 同じ生物資源科学科の3年生」と、アキちゃんが言っていて、
「あっ 先輩ですね 奥浦真織です よろしく」と、改めて頭を下げていると
「天野カツです よろしく なるほど 近くで見ると確かに美人だわー 俊平が入学式の時 大きな魚を釣り逃したって残念がっていたよー あげくの果て 藤井朋子に横取りされたって」
「あっ あの剣道部の人ですか?」
「そぅー 同じ高校なんだ!」
「お兄ちゃんねぇー 剣道やってたんだよ! 去年まで だけど、膝を痛めたからって 辞めちゃったの でも、本当は後輩に負けたから、限界感じたのよねぇー 根性無いんだからー」
「バカ アキなぁー そーやって 兄貴を見下すような言い方するな!」と、言い返しているのを背中にアキちゃんは私の手を取って足はハウスのほうに向いていたのだ。
ハウスの中では、大きそうな形の良いものを2粒だけだよって言われて、ヘタを取ってそっちから食べたほうが甘いよ。先っぽのほうが甘いからーと教えられて、後はお爺さんがもう帰って来てるはずだから、売れ残ったのをねと言われた。倉庫に戻って、それを食べていたのだけど、別に私には違いも分からなかった。それよりも、こんなに苺を食べたのっても初めてだったのだ。
その間にお兄さんは、庭でカンカンに火をくべて上に鉄鍋のようなものを置いて、木の蓋を被せて、さつま芋をアルミでくるんだものを焼いていてくれた。
「お昼ご飯のかわりネ ウチでとれた紅はるか おいしいよー」と、アキちゃんは塩も用意していてくれた。アツアツでねっとりしていておいしいぃー。アキちゃんは少量の塩をかけていたけど、私はそのままでよかった。
「ねぇ 彼とはいつから?」
「う~ん いつからというかー」と、私は伊織利さんとの駅での出会いから入学するまでの全てを話したのだ。
「すんごいねぇー マオちゃん 根性あるよねー アキには とても そんなこと出来ない」
「ふふっ 何かに憑りつかれたみたいでしょ アキちゃんは 彼氏は?」
「ううん 今は居ない 高校のときは付き合ってた子居たけど 別れた というより振られたのかなー」
「そう アキちゃん いいのにねー」
「ふっ アキは あんまりベタベタするのって 嫌だからね そのうち 他の子に乗り換えられたの 高校3年の秋だったわ でも それで良かったんだと思ってるの あいつ あいつは根性無いんだものー」
「ふ~ん アキちゃんって 厳しいんだね!」
「そんなこと無いけど お兄ちゃん見てきているからね」
「だって・・・ さっき 根性無いってー」
「違う! あれは お兄ちゃんは もっと 根性あるはずでしょ! って意味」
「好きなんだ お兄さんのこと」
「そりゃー 優しくて、賢くてー 膝さえ痛めてなきゃーな 俊平さんよりも実力はあるはずだ それにぃー この焼き芋だってぇ~ 何にも言って無いのに 用意してくれていたのよ 優しいんだんべ?」
「んぅだ!」と、私はアキちゃんのお兄さん思いに感心していたのだ。
帰りには苺パックとかジャムをお土産に貰ってきたので、ひとりじゃぁと思って、朋子先輩の部屋を訪ねて、ピンポンしてドァを開けるとごっつい男の人がふたりして現れたのだ。
「あっ あー リーダー居ますかぁー」と、私は驚いてしまって、大声で叫んでいたら、奥の方から
「うえぇー マオウかぁー ふぁいりなよー」と、朋子先輩の声がした。酔っぱらってる。
「おぉー うわさの美少女 真織ちゃんかぁー」という声を横目に身体を避けながら奥に入ると、ピンクのタオル地のルームウェア姿の朋子先輩が崩れ落ちそうに座っていた。
「あのー 苺 いっぱい貰ってきたんで・・・リーダーにもって思って・・・」と、言いながら二人の男の人を見ていたら
「怖がらなくていいよ 両隣の ウチの用心棒達だりゃー 今日は酒盛りしてたんだはぁー ちょうどいいちぁー その苺 フェタとって洗ってちょー」と、先輩はもうヘロヘロなんだ。私が、ヘタを取ってお皿に乗せて出すと、先輩は3ッ掴んで一気に口にほおり込んで、だらだらと果汁が流れだすのも構わずに・・・。私は、ティシュで先輩の口元を拭いて
「大丈夫ですか? こんなに飲んでしまっていて 男の人を前にして・・」
「なんなん? マオは 心配すてんのぉー でぇーじょーぶだよ この二人はウチのこと 女って思っとらんからー なんなら 脱いで見せたろーかぁー」
「もう やめてくださいよー」と、私は先輩の手を押さえていると
「いつも 飲むと こんなだから 平気だよ 心配しないでも おとなしく、ちゃんと寝かせるから・・ 真織ちゃんはイオの彼女だろう? 俺は、桾沢慎吾ラグビー部4年 イオは高校の時の後輩なんだ 君達が仲良くやってるの見てるよー あいつは腰が弱いから、もっと鍛えてやってくれよなー」
「はぁ? ・・・? ? ? 鍛える???」
「今の わかんないなら いいよー その様子じゃあ まだ、してないみたいだなぁー さぁ そろそろ コイツをベッドに運んで、お開きにすっか」
朋子先輩は、もう、寝っ転がっていて、ひょいと抱え上げられてベッドに寝かされていた。その後、二人は私が洗い物を終わるのを待っていてくれて、部屋の外に出て鍵をかけていた。そして、ドァの小窓から鍵を投げ入れて
「真織ちゃん 遅いし、送って行くよ 襲われたら大変だからー」
いいです 大丈夫です という私を、寮のところまで送ってくれたのだけれど、幸い、私のことは聞かれず、朋子先輩の今までの武勇伝の話題だった。彼等が真面目な人で良かったのだけど、私は部屋に戻ってから・・・彼の腰を鍛えてくれよって何?・・・まだ、してないみたいって何?・・・まさか あれのこと? と 独りで勝手に火照っていたのだ。
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