真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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第45話 張飛と義姉
「お姉ちゃんは鈴々の隣なのだ。お前達はそこに座るのだ」
張飛は私達に席を勧めました。
麗羽にだけ張飛が友好的な気がします。
揚羽を見ると張飛と麗羽を見て含みのある笑みを見せました。
私も合点が行きました。
張飛が急に大人しくなったのは、麗羽のことを気に入ったからです。
今まで、街で盗みを一緒に働いた仲間はいたでしょうが、心を許せる家族とは言えなかったと思います。
幼くして両親を失い天涯孤独な身の上の張飛は家族の愛情に飢えていたことでしょう。
そんなとき、自分のことを懸命に庇ってくれる人物が現れれば、心を許す可能性があります。
今の張飛は完全に心を許してはいないでしょう。
ですが、麗羽に対し家族の愛情に似たものを期待したい気持ちがあるのかもしれません。
張飛の性格は捻くれている訳でも、歪んでいる訳でもないです。
これは自然な反応なのかもしれないです。
張飛に促されるまま席に着きました。
「こうしてお前の家に入れてくれたということは、食べ物を盗むのはやめてくれるのだな」
「お前じゃないのだ!鈴々は鈴々なのだ!」
「それはお前の真名だろう。・・・・・・悪かった。張飛と呼ぶことにする」
「それでいいのだっ!」
張飛は笑顔で返事を返してきました。
先程まで、一騎打ちをしようした人物とは思えない態度です。
張飛は原作通り根は素直な子なのだと思います。
「仲直りできたようですわね。正宗様、話を進めてくださいまし」
「ふふ、雨降って地固まるといいますが、荒事にならなかったのは幸いです」
揚羽が私と張飛を見ながら笑いました。
その後、張飛と私達は話をして決まったことがあります。
街の人に食べ物を盗んだことの謝罪をすること。
張飛が麗羽に士官すること。
張飛の飼っている豚を旅に同行させること。
この三点について決まりました。
士官が決まったこともあり、私達は張飛と真名を交換しました。
鈴々は私のことをお兄ちゃん呼ぶようになりました。
鈴々に言わせるとお姉ちゃんである麗羽の許嫁だからお兄ちゃんらしいです。
私はオマケみたいなような気がするのは気のせいでしょうか?
話が終わるころ、空は既に暗くなっていました。
夜間に山を降りるのは危険と思い、その日は張飛の家で一夜を過ごすことになりました。
張飛が川の字になって寝ることを望んだので、麗羽と私の間に鈴々が寝ました。
揚羽は最初私の隣に寝ようとしましたが、麗羽が猛反対し彼女の隣で寝ることになりました。
よく考えたら4人なので川の字ではないと思いました。
これは気分的なものでしょう。
今日は山登りで疲れました。
鈴々もぐっすり眠っていますので私も寝ることにします。
「お兄ちゃん、起きるのだ!」
熟睡していた私は腹に激痛を覚えました。
眠い目を擦り前面を見ると鈴々が私の腹の上に乗っています。
何という起こし方をするんでしょう。
「鈴々さん、何て起こし方をしますの!はしたないですわよ。正宗様、もうしわけありません」
麗羽が鈴々を怒っている声が聞こえました。
「お姉ちゃん、ごめんなのだ」
鈴々はシュンとして、麗羽に謝りました。
「麗羽、別にかまわない。鈴々も次は気をつけてくれればいい」
私は痛む腹を擦りながら置きました。
「麗羽、もう朝なのかい」
私はこの家の窓から入る光を見て麗羽に聞きました。
「ええ、今日も良い天気ですわ。鈴々さん、旅の支度を一緒にしますわよ。この家にはしばらく戻れないと思いますの。だから、必要な物を全て荷造りしますわ」
「お姉ちゃん、分かったのだ」
鈴々が麗羽に言われて、一緒に荷造りを初めています。
揚羽はどこに行ったのでしょうか?
この家にはいないのは確かです。
部屋の片隅でブヒブヒと鈴々の豚が土を掘っています。
どうでもいいです。
「麗羽、揚羽は何処に行ったんだい?」
私は麗羽に聞きました。
「揚羽さんは朝餉の食材を探しにいくと行っていましたわ」
「そうか・・・・・・。じゃあ、私も行ってくる。麗羽、揚羽が何処に行ったか分かるかい?」
「早めに山を降りたいので、揚羽さんのことですから、そう遠くには行かないと思いますの。行き違いになると面倒ですわ。正宗様はここでゆっくりとしてください」
麗羽にそう言われた私は、揚羽を探しに行くのを止めて外で槍の修練をすることにしました。
半刻位して揚羽が戻ってきました。
手には野ウサギが二匹と山菜を持っていました。
「正宗様、起きてらしたのですね」
揚羽は私に笑顔で話しかけてきました。
「揚羽だけに手を煩わせてごめん。しかし、揚羽は狩猟もやれたとは意外だな」
「正宗様、それは心外です。私を頭だけの文官と思いですか?こう見えて、文武両官そつなくこなせると自負しています」
揚羽は少し怒っているようです。
私は揚羽は文武に優れた人物と知っているのでそういう意味で言ったつもりはありません。
「引きこもりが長い揚羽が狩猟が出来るというのが意外と思っただけだ」
「そうですか」
揚羽は言葉少なに応えていましたが、機嫌を直したようです。
「正宗様、朝餉の仕度をしますね。手伝ってくださいますか?」
「分かった。暇を持て余していたところだ」
私と揚羽は朝餉の仕度をすることにしました。
一つ気がかかりなことは、鈴々がいるのであれだけの食材で足りないことです。
揚羽にそのことを言うとにっこりと微笑み懐から小さい袋を取り出しました。
袋の中身は米でした。
「私はいつも食料を常備しています。これを粥すれば良いと思います」
「揚羽は本当に気が利くな」
私は本当に揚羽を関心しました。
「常に、不足の事態に備える性分なだけです」
揚羽は笑顔で応えました。
これで朝食は足りる事でしょう・・・・・・、やっぱり足りないかな・・・・・・。
私達は鈴々と一緒に街に戻ってきました。
まだ、昼まで二刻程あります。
「お姉ちゃん、お腹が空いたのだ・・・・・・」
鈴々はお腹を空かせています。
彼女は今朝食べた朝食だけでは足りないようです。
「もう少しの辛抱ですわ。迷惑を掛けた人達に謝りに行くのが先ですわ。その後で、好きなだけ食べさせてあげますわ」
麗羽は鈴々を甘やかすことなく、嗜めた。
謝るなら早いことにこしたことはない。
「鈴々、腹が空いているだろうが、我慢して謝まりに行こう」
「お姉ちゃん、お兄ちゃん。分かったのだ」
鈴々は渋々ながら分かってくれた。
私達は気を取り直して、謝罪行脚をすることにしました。
意外なことに怒りを露にする人はいませんでした。
中には鈴々の頭に拳骨を食らわす人はいました。
その人も「これで許してやる」と笑顔で話していました。
私が側にいることも関係しているのかもしれないですが、この街の人達も鈴々のことを心配していたことの証ではないかと思います。
街の人達が良い人達で良かったです。
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