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仮面ライダー エターナルインフィニティ

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第七話 義の戦その十二

「彼はどうもな」
「鈍感なんだ、宗朗は」
「そう。それもかなりの」
「それさえなければ完璧だというのにね」
「完璧な人間なんてこの世にはいないさ」
 響鬼はここでは自分の人生経験から答えた。
「神様だって完璧な神様もいないさ」
「全てはなにかしらの欠点がある」
「そういうものさ。だから彼は鈍感なんだ」
 その鈍感さをだ。響鬼は笑顔で受け入れていた。
「それでいいじゃないか」
「それはいいとしても」
 だが、だった。今の慶彦はだ。
 そのことを受け入れてもだ。まだあるというのだ。
「千姫は純情で一途だから」
「彼じゃなければ駄目だっていうのか」
「幼い頃からそう決めているんだよ」
 兄だけあってだ。千姫のそうしたところはわかっていた。
「宗朗じゃないと駄目なんだ」
「難しいな、そこは」
「どうしたものか」
 慶彦は自然にだ。苦笑いになって言った。
「その辺りは」
「彼が気付くことを待つべきだろうな」
 これが響鬼の解決案だった。
「女の子達のそれぞれの気持ちに」
「では千姫が選ばれないかも知れない」
「その可能性は否定できないね。君には悪いことだが」
「ははは、その時はその時だよ」
 慶彦は今の響鬼の言葉には笑ってこう返した。
「宗朗が選んだ相手ならそれでいいさ」
「そしてそれは君だけじゃないか」
「千姫も。いい娘だ」
 妹のこともだ、胸朗は話した。
「その辺りはわかっているさ」
「わかっているんだったら」
「確かに嫉妬して暴れることがあってもそれでも」
 千姫はだ。どうかというのだ。
「宗朗が選んだことなら」
「受け入れてくれるか」
「うん、そういう娘だから」
 それでいいというのだ。
「だから。全ては宗朗を信じるさ」
「それが君の考えか」
「そうだよ。それじゃあ」
「西瓜はこんなにあるんだ」
 見れば数個分の西瓜が切られている。その西瓜の山を見てだ。
 響鬼はその気さくな笑みでだ。慶彦にこう言った。
「二人だけで食べるのは勿体ないよな」
「二人だけで食べられる量でもないし」
「そう、だからな」
「うん、じゃあ皆を呼ぼう」
「そうしよう。しかし」
「しかし?」
「河豚鍋の後で西瓜というのはな」
 それはどうかとだ。響鬼が今度言うのはこのことだった。
 彼は笑ってだ。こう言った。
「冬と夏だな」
「それが共にある」
「あちらの世界じゃ技術の進歩でそれが味わえるようになったんだ」
「この世界でもだ」
「それは同じか」
「基本的な技術の進歩は同じだ」
 こちらの世界にもテレビもあればクーラーもあるのだ。当然発電所もだ。違うのはまだ徳川幕府があり日本の文化が色濃いということだ。
 だからだ。冬も夏もこうして同時に味わえるというのだ。それでだ。
 慶彦はだ。こんなことも言った。
「昔は氷は夏に将軍や限られた者だけが食べていた」
「そうだったな。氷は滅多に手に入るものじゃなかった」
「しかし今は違う」
 どう違うかというと。
「誰もが氷に甘い蜜をかけて食べられる」
「夏も冬もな」
「いい時代になった」
 慶彦はそのことを笑顔で受け入れていた。
「徳川幕府は贅沢を独り占めにする趣味はない」
「むしろその逆だな」
「誰もが美味いものを食べられいい服を着られる」
「そうした国にしたいんだな」
「ひいてはそうした世界にな」
 これは響鬼の世界の徳川幕府も同じだった。この政権は決して強欲ではなかった。むしろ節約を重んじ民生に心血を注いだ政権だったのだ。
 それはこの世界でも同じでだ。次期将軍たる慶彦も言うのだった。
「だからこの世界を守りたい」
「それで戦うんだな」
「そういうことだ。では皆も呼んでか」
「この西瓜を食おう」
「千も呼ぶか」
 慶彦はここでも妹のことを思い出し言う。
「そして宗朗も呼んでな」
「おいおい、また騒ぎを起こすつもりか?」
「だがそれがいい」
 あえてそうするというのである。
「それを見るのもまた楽しみだ」
「それはちょっと趣味が悪いな」
「自覚はしている」
「それでもなんだな」
「そう。だから呼ぼう」
 こうした話をしてだった。彼は実際に全員呼んでそうしてだ。宗朗と千姫、そして幸村達のやり取りを見て笑うのだった。兄の目で。


第七話   完


                         2011・9・21 
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