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親友の彼女

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第一章

                親友の彼女
 親友の彼女を奪う、それは最低の行為だと李賢成もわかっていた。だからこそ高校からの親友であるドワイト=チャールスドンに言った。
「安心しろ、お前の彼女に興味はない」
「いや、ハニーは宇宙最高の美人だ」 
 チャールストンは李に真顔で答えた。
「そのハニーを好きにならないなんてな」
「そんな人はいないか」
「ああ、だからお前でもな」
 親友でもというのだ。
「ハニーのことはか」
「それはあれだろ」
 李はチャールストンに即座に返した。
「お前の主観だ」
「僕のかい」
「そうだ、主観と客観は違うだろ」
 こう言うのだった。
「そうだろ」
「それはな」
 チャールストンも否定しなかった。
「そうだな」
「それがわからないお前じゃないな」
「自分の頭には自信がある」
 チャールストンはこう返した。
「伊達に大学で教鞭を執っていない」
「それもやたら難しい日本語のことでな」
「日本文学専攻でな」
「僕はエンジニアだがわかるさ」
 李は自分の仕事のことも話した。
「日本語の難しさは」
「その日本の文学を学んで教えてるんだからな」
「頭には自信があるな」
「そうさ、だから主観と客観の違いもわかるさ」
「同じものを見てもだよ」 
 李は強い声で語るチャールストンに返した、今は共に街のレストランで一緒にステーキを食べている。ニューヨークの物価は高いがその店は幾分安くしかも美味かった。
「人それぞれでだよ」
「感じるものが違うよ」
「その通り、だから君にとって宇宙一の美人さんでも」
「君は違うのかい」
「僕のタイプはね」
 彼は笑いながら話した。
「清楚可憐、黒髪が奇麗で切れ長の目ではっきりとものを言う」
「そんな女性が好みだね」
「そうだよ」 
 小さなやや吊り目の目と分厚い唇が印象的な顔で言った、黒髪は短くしていてやや面長で背は一七六程だ。肌は黄色いと言っていい。
「僕はね」
「僕の好きな女性はハニーでね」
 チャールストンも話した。
「背は僕と同じ位で信仰心があって誠実な」
「君と同じ位がないよ」
 一九〇あるチャールストンに告げた、彼はアフリカ系で逞しい身体をしていてまるでフットボーラーの様である。
「そもそも」
「そうかな」
「そうだよ、その君のハニーの身長は何センチだい?」
「一八五だよ」 
 チャールストンは即座に答えた。
「僕と同じ位と言っていいね」
「うん、しかしね」
 それでもというのだった。
「そんな背の女の人はだよ」
「そうはいないかな」
「このアメリカでも他の国でもね。僕達の学校でもいたかい?」
「八条学園でだね」
「そうだよ」 
 世界中から人が集うということで知られているこの学園にもというのだ。 
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