夢幻水滸伝
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第三百四十話 もう一つの勢力その十六
「それでや」
「戦になればですね」
「攻めるで」
「わかりました、では今はこのまま」
「三州掌握を完成させるで」
コロラド州、カンザス州、ネブラスカ州をというのだ。
「そうするで」
「完全にですね」
「まずはな、今デリーロ達は三州に手が出せへんで苦い顔してる」
このことを読んでの言葉だ。
「事実上の緒戦やったが」
「その緒戦を制することが出来ましたね」
「このことが大きい、そやからな」
だからだというのだ。
「そのことも活かすで」
「緒戦の勝利をですね」
「緒戦は緒戦とも言う」
トウェインはこうも言った。
「最後に勝ってこそほんまの勝利や」
「最後に笑っていればよし」
ヘミングウェーが言ってきた、トウェインに話してから白ワインを飲みそうして喉を潤したのだった。
「戦でも何でも」
「そや、最後でダンクシュート受けてな」
「負けたらあきませんね」
「戦もスポーツも何でもな」
「最後がどうかですね」
「終わりよかったらや」
それまでがどうであってもというのだ。
「全てよしでや」
「戦は最後に勝っていることですね」
「ほんまな、そやけどな」
それでもというのだ。
「やっぱり緒戦に勝てるとな」
「大きいですね」
「勢いもつくしな」
「そやからですね」
「これは大きいわ」
三州掌握がほぼ確実になっている現状はというのだ。
「ほんまな」
「そうですね、ほなですね」
「緒戦の勝利をや」
即ち三州の完全掌握をというのだ。
「完成させるで」
「そうしましょう」
ヘミングウェーは微笑んで応えた。
「ここは」
「そうしよな」
「是非、あと宜しければ」
微笑んだままこうも言った。
「ステーキをもう一枚」
「おっ、いくか」
「固いですが美味しいですね」
「こっちの世界のアメリカでは鯨食うしな」
「そうしていますね」
「それでな」
そうしていてというのだ。
「こうしてわい等も食べてるが」
「美味しいですね」
「これがフライにしてもカルパッチョにしてもや」
「和食のお刺身やはりはり鍋にしても」
「美味いさかいな」
だからだというのだ。
「ええな」
「はい、皆食べてます」
「白鯨やとな」
アメリカ文学の代表作の一つである、ただし作品は作者の生前はほぼ皆無であったことは驚くべきことであろう。
「鯨油だけ取ってな」
「後は捨てていましたね」
「そうせんでな」
「油だけやなくて」
「肉も皮も骨もや」
「全部利用することはええことですね」
「そや、そしてこうしてや」
その肉を食べつつだ、トウェインは笑ってわした。
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