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父親はそんなもの

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第二章

「結局は」
「家庭に不満あるか?意地悪されてるとか不倫とか浪費とか」
「ないよ」
 全くという返事だった。
「仲いいよ。奥さん真面目だし娘達もな」
「奥さんの影響受けてか」
「四人共性格も外見も母親似でな」
 そうであってというのだ。
「全くな」
「問題なしか」
「そうだよ」
「じゃあそれでいいだろ」
 長内は自分の酒の肴のハンバーグを食べつつ言った。
「もうな」
「家族に問題ないならか」
「お前も離婚とか考えてないだろ」
「全くな」
「じゃあそれでいいだろ、旦那そして父親としてな」 
 家のというのだ。
「俺はまず息子で次に娘でな」
「二人だったな、そっちは」
「だから女の子四人はわからないけれどな」
 その状況はというのだ。
「家族の構成のことはな」
「受け入れるしかないか」
「稲尾さんだってそうだっただろ」
「みたいだな、いい人だったそうだしな」
 温厚な人格者だったことが知られている。
「だったらか」
「稲尾さんみたいにな」
「やっていくことか」
「そうしたらいいしそうするしかな」
「ないか」
「そうだよ、疎外感味わってもな」
 家では男一人でもというのだ。
「そこは受け入れてな」
「やっていくことか」
「ああ、そうしろ」
「それじゃあな」
 上田もそれならと頷いた、そうしてだった。
 自分の酒を飲んだ、その赤ワインは先程よりも美味く感じた。それは酒の友のチキングリルも同じだった。
 そして彼は定年になった時に長内に笑顔で言った。
「四人共結婚してな」
「娘さん達がか」
「皆最初は男の子だよ」
「へえ、そうなのか」
「子供は娘ばかりでもな」
「お孫さんは違ったか」
「ああ、それで四人共可愛くてな」
 孫達がと満面の笑みで話した。
「ついつい甘やかしてな」
「奥さんと娘さん達に言われてるか」
「娘達の旦那さん達にもな」
 その満面の笑みで言うのだった。
「そうだよ、けれど孫がそうなるなんてな」
「世の中面白いな」
「ああ、こうしたこともあるんだな」
 すっかり皺だらけになった顔で言うのだった、そして長内に孫の話を目をキラキラとさせて話した。もうそこに疎外感はなかった。


父親はそんなもの   完


                2024・3・18 
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