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オズのヘンリーおじさん

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第五幕その四

「そうよね」
「はい、鬼が凄く出ます」 
 恵梨香はその通りと答えました。
「あと狐や狸が悪戯をして」
「化かしてよね」
「ばれて懲らしめられます」
「そうなるわね」
「ですが」
 それでもというのです。
「狼が出ることはです」
「ないわね」
「そうした童話は知らないです」
「うむ、狼は人を襲わない」
 こう言ったのはおじさんでした。
「わしも今は知っているよ」
「ヘンリーさんもですか」
「昔は怖い悪い生きものと思っていたけれど」
「今はですね」
「むしろ親しめる」
 そうしたというのです。
「生きものだとね」
「思われていますか」
「そうだよ」
 恵梨香に微笑んでお話します。
「今はね」
「あら、お話をしていると」
 おばさんは自分達から見て左手の木々が茂っている方を見ました、そうして皆に笑顔で言うのでした。
「出て来たわ」
「ああ、そうだな」 
 おじさんはおばさんの言葉に頷きました。
「ここでな」
「そうね」
「何十匹もいるな」
「結構な群れね」
「狼の森というからな」
「あれだけの狼がいるのね」
「ここは狼の村なの」
 ドロシーがお二人にお話します。
「だからね」
「あれだけの狼がいるのか」
「そうなの」
「そうよ、けれど何もしてこないでしょ」
 ドロシーは微笑んでお話しました。
「私達を見ているだけで」
「ただな」
「そうしているだけね」
「襲うことなんて」
 そうしたことはというのです。
「絶対にね」
「しないな」
「平和なのね」
「オズの国だし狼という生きもの自体がね」
 まさにというのです。
「安心していいわ」
「そうだな、むしろな」
「前足を振ってきているわね」
「ええ、黄色い煉瓦の道を歩いていたら」
 森の中を通っています、皆はその上を歩いて先に進んでいます。
「これといってね」
「何もしてこないな」
「別にね」
「そう、この森は狼の森でね」
「狼の村だな」
「縄張りね」
「だから煉瓦の道を出るとね」 
 そうすると、というのです。
「よくないの」
「そうだよ」
 その狼から言ってきました。
「ここは僕達の村だから」
「それでよね」
「黄色い煉瓦の道は通っていいけれど」
 それでもというのです。 
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