色々と間違ってる異世界サムライ
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第17話:月鍔ギンコ対デルベンブロ(前編)
セツナperspective
「月鍔ギンコ推参!雑兵では相手にならん!命を惜しむ者はこの場を去って某に道を譲れー!」
ツキツバがそう言うと、魔族達は最初の内は「そんなの知るか」と言わんばかりに嘲笑いながら私達に襲い掛かるが、ある者は投げ飛ばされ、またある者は地面に叩き付けられ、そのどれもがツキツバの足を止めるに至らない。
そんなツキツバの想定外の強さに、集めた金品を片手に笑い死体をなぶり楽しんでいた魔族達はみるみる顔を青くする。
無論、ツキツバはそんな雑魚には目もくれない。
現在進行形で起こっているこの街を襲う惨劇を終わらせる為に、大急ぎでこの街を襲っている魔族の大将を討伐しなければならないからだ。
だからこそ、ツキツバは必死に襲い来る魔族達を掻き分けながら敵の大将の許に急ぎ、私とフラウはツキツバの左右を護る様に並走する。
と言うか本当に退け!邪魔なんだよ!
と、こんなに忙しい時に、
《報告:レベルが上限の280に達しましたので、レベル上限達成者の称号が贈られます》
今はそんな報告どうでもいいよ!
とかなんとか言ってる間に、街の中心である広場に到着。
そこには、身長が4mはあろうかと思われる両手がアンバランスに大きくて異様な鎧に身を包んだ人型のモンスターがいた。
それを見つけると、ツキツバは先手必勝とばかりにさらに加速し、鞘から聖剣を抜きながら聖剣を左から右へと振る。
その動きは速過ぎて全く見えない!
だが、肝心の人型モンスターは思いっきり吹き飛ばされただけで、直ぐに立ち上がって迎撃態勢をとる。
「!?」
こいつ……かなり強い!
以前に戦った魔族の幹部よりも格段に上だ!
これでは、ツキツバの思惑である『敵大将をさっさと倒してこの街を襲っている魔族達を黙らせる』は……かなり時間が掛かりそうね?
「……セツナ殿、フラウ殿、露払いを頼めますか?」
ツキツバもこの敵がそう簡単に早々と倒せない相手だと悟ったのか、急に周りの魔族の討伐を私達に頼んで来た。
「……そこまでの相手か?」
デルベンブロperspective
ツキツバ・ギンコ。
この者は既にダームを葬り、アルマン国を堕とす為に送り込んだデスアントを全滅させた英雄クラスの難敵。しかも聖剣を抜いたと聞く。
更に、この者は本当に異世界から来たのではないのかと思わせる程経緯が不明。全くもって謎が多い。
だが、この者にも致命的な欠点があり、私が持つレアスキルはその欠点を衝くのに適しているそうだが……
「そなたがこの町を襲っている賊の親玉か?」
「如何にも。私は魔拳将軍デルベンブロ。魔王様の命により、この場に馳せ参じた」
「名は月鍔ギンコ。侍に御座候!」
んー。この様子だと、アレを言っても無駄やもしれん。
「本来ならば我らは勇者に対し、こう言わねばならぬ決まりだ。魔王様のお達しだ。サムライよ、私の部下となれ。さすればノーザスタルの半分を貴様にやろう!」
「ぬるい!何を寝ぼけた事を!?そんな熱の籠らぬ打ち込みでは殺れませぬぞ!」
……やはり駄目か……
この齢でレベル300は非常に惜しいのだがな。
「しかし、貴様程度では申し出る気にはならんな。死ね。ここで今直ぐ」
その途端、ツキツバはこの私に斬りかかって来た……と言うか、速い!
私は咄嗟に右手を広げて盾にする。
しかし、ツキツバの剣はただ速いだけではない。非常に速くて重い!
んー。この私のレアスキルが無かったら、私は今ので早々と死んでいたな……
そこで、私は駄目もとで右手を切り離し、私の分身体とも言えるルベンライトを解き放った。
そして、私はルベンライトに触手捕縛を命じた!
しかし……大方の予想通り、奴にはフィストバインドは通用しなかった……と言うか、ルベンライトの触手を全部捌きおった!
強い!
恐るべき身のこなし、勘と見切り、剣の腕……それに何よりも、レベル300なだけあって戦いに慣れ過ぎている!
この者、正に『異物』!
私は、まだ私の腕から離れていないルベンレフトにツキツバの胸倉を掴ませ、その隙にツキツバの顎に膝蹴りを見舞う!
そこから、私はツキツバに背を向けながらルベンレフトにツキツバを投げ飛ばす様命じ我たが、肝心のルベンレフトがツキツバの握力に屈して私の身体から離れてしまった!
これではっきりした!
これは野放しには出来ん!
セツナperspective
ツキツバがこの街を襲っている魔族達の親玉と戦っている間、私はフラウと二手に別れてあいつの手下達を狩る事にした。
とは言え、今の私のレベルは280な上に手甲と鉤爪が付いた1対の手袋になった聖武具のお陰で、戦闘時のみレベルが392になる。
ここまで来ると、下級魔族退治すら簡単な単純作業だ。
ノノの奴に逢うまでレベルが7までしか上がらない事を嘆いていたのに……我ながら見違えたモノねぇ……
しかも、親玉がツキツバに苦戦している事が下級魔族退治を更に簡単にする。
「ぐえ!?」
「さて……どうする?死を覚悟でまだこの街で暴れるか?それとも、命を惜しんで逃げるか?」
私が倒した魔族を問い詰めていると、
「ふざけるなぁ!」
別の魔族が背後から斧を振り下ろす。
「おっと」
私がさらりと振り下ろされた斧を避けると、その斧は勢い余って私に問い詰められた魔族の頭をかち割った。
馬鹿だねぇ。敵味方の立ち位置を少しは考えなさいよ。
しかも、天罰覿面なのかさっきの斧が壁にめり込んで抜けなくなった。
本当に馬鹿だねぇ。
だから、私は頭を割られた奴の代わりにこの馬鹿を問い詰める。
「私を斃したくらいでこの劣勢が覆ると思っているの?」
だが、この馬鹿は挑発の様な事を言いだす。
「甘いな……ツキツバ・ギンコがデルベンブロ様に勝てると、本気で思っているのか?」
それって、この街を襲っている魔族達の中で1番強いって事でしょ?なら、
「そのツキツバ、レベル300だよ。しかも、聖剣を2本も持ってるから、レベルを一時的に540にする事が出来るわよ?」
それを聞いた魔族が一瞬ウッってなったが、
「デルベンブロ様のレベルは133だ」
「なら―――」
だが……奴は何故かデルベンブロがツキツバに勝つと信じていた。
「しかし、ツキツバではデルベンブロ様には勝てん!」
どう言う事だ?
ツキツバとデルベンブロとのレベル差は167~407の筈……なのになぜ……
「答えろ!デルベンブロの野郎は何を隠し持ってる!?奴はこの街に何を仕込んだ!?」
「ペッ!」
唾吐き……それが私の1番肝心な質問に対するこの馬鹿の答えだった。
もっと問い質しかったが、この馬鹿にこれ以上貴重な時間を費やしたくない!
急いでツキツバの許に戻ろう!
悔しいが、私達の中で1番強いのはツキツバだ!それが敗れれば……この街を襲っている魔族達が失いかけた士気が復活してしまう!
頼むツキツバ!私が戻るまで無事でいてくれ!
後書き
デルベンブロとの戦いに、今回を含めて3話分を費やす予定です。
で、何で月鍔ギンコ討伐にデルベンブロを選んだかは……現時点では【「攻略本」を駆使する最強の魔法使い】での戦闘のルールを思い浮かべて下さいとしか言えません。
果たして、月鍔ギンコはデルベンブロに勝利する事が出来るのか?その答えは次々回をお楽しみにー♪
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