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色々と間違ってる異世界サムライ

作者:モッチー7
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第16話:聖剣大量取得作戦

月鍔ギンコperspective

結局、ぐりじっとに有るとされていた聖剣との対面は果たされずにおめおめとフラウ殿の故郷に戻りました。
「抜けなかった!?貴女様ほどの者が!?」
「いえ、正確には何者かに先を越されたのです」
その途端、ふぇありー達が怒号と共に騒ぎ始めました。
「偉大なる種族を差し置いて聖剣を奪いとは!何処の馬の骨だ!?」
その声には……心なしか殺意を感じます。
「待たれよ。悪いのは先客の方ではない。もたもたしておった某達のせいじゃ」
「偉大なる種族に楯突く者は許さぁーん!」
……あのぉー……聴いてらっしゃいます?
そんな中、フラウ殿の父であるパパウ殿が酌をしてくれる。
初めて会った時と比べると今はあまりにも腰が低い。なんだか非常に申し訳ない気分です。
「どうですか、娘はよくやっておりますか?」
この質問にはセツナ殿が某の代わりに答えてくれました。
「まだ仲間に加えたばかりで評価は出せないな。でも、小回りの良さは偵察向き、レベルが上がれば戦闘でも頼りにはできるはずだから、大きな期待はしている」
「おおおおっ!フラウに期待をしてくださっているのですか!」
「それなりにな。ところで……やっぱり親としては娘が奴隷なのは気分が良くないよな?」
やはり、セツナ殿はフラウ殿を奴隷として扱う事を良しとしておられぬご様子。
ならば、この里にフラウ殿を返すのも道理であり礼儀であり筋―――
「なにをおっしゃいますか!我らフェアリーは偉大なる種族のしもべ、お仕えするべき御方がいてこそ真価を発揮するのです!ぜひ我が娘にはあんな事やこんな事を、遠慮なくしてやってください!」
「ちょ、ちょっとパパウ殿!?」
「お父さん、主様の前で恥ずかしいじゃない」
……何ですか……その会話は……
「……冗談ですよね?」
セツナ殿も同感の様です。

結局のところ、他に聖剣が有るかどうかはふぇありー達には解らないそうなので、某達は再びごーれむの亡骸が山積みとなっている廃墟を調べる事にしました。
「ん?」
「どうしました?」
「何ですかアレは?」
某は気になる場所をよく視ると、それはどうやら床に取り付けられた門の様です。
「……開けてみるか」
「いきなりかよ!?」
セツナ殿が焦りますが、他に何かが有る様には見えませんので、ここを調べるのも必要かと。
セツナ殿とノノ殿が恐る恐る床に取り付けられた門に近づく中、某は恐れる事無く門を開けて下に続く階段を発見しました。
「どうする気?」
「これは……何かのからくりやもしれません。某が先行しますので、ノノ殿達は少しお待ちを」

セツナperspective

ツキツバが1人で隠し階段を調査している中、フラウは元気良く周囲のモンスターと戦っていた。
彼女のレベルは現在45。この森には比較的経験値の多い魔物が生息しているし、ノノの奴の経験値倍加・全体【Lv50】も有るから、100に至るのは想定よりも早い筈だ。
……あれ?
と言う事は……ノノの奴のレベル上限40倍・他者【Lv50】によって返上と言う扱いになっていたレベル上限達成者の称号を取り戻す日も近いって事か?
そうだった!私の現在のレベル最大値は280だったんだ!
……ノノの奴のレベル上限40倍・他者【Lv50】って、回数制限て有るのかな……
そんな事を考えていると、隠し階段を調査していたツキツバが戻って来た。
「誰かこの世界の紋所に興味がある方はいらっしゃいませんか?」
紋所?どう言う意味だ?
取り敢えず、ツキツバの先導の許、4人全員で隠し階段を下りる事にした。
壁面はむき出しの岩肌、急いで作った様な印象だ。
階段が終わり一番下まで到着する。そこから先は長い通路が奥へと続いていた。
「どこまで続いているんだ?」
「生き物がいる気配はない様です」
通路の奥から青い光が漏れていた。
「……光?」
さらに足を進めると開けた空間へと出る。
そこでは複雑で大きな魔法陣が青く輝いていた。
「もしかしてこれ……」
「解るのか」
「多分、転移の魔法陣です。似た様なのを見た事があります」
「どこで?」
「村に有った本で」
一方、魔法陣がある部屋の壁に書かれている文字を読んでいたフラウがハッと驚き、そして歓喜した。
「そうだ!これよぉ!」
「どれよ?」
フラウの説明によると、この魔法陣は使用者の往きたい場所へ一瞬で運んでくれる転移陣で、魔脈の上に有るので理論上は回数制限が無いとの事。
なるほど……解らん!
魔脈なんて初めて聞いた!
ツキツバの方も半信半疑だ。
「まさかと思いますが、この世界に妖術が在ると言い出す御心算ですか?」
ん?妖術?
つまり、ツキツバの世界には魔法と言う概念が無いと?
ただ、フラウだけは大喜びのままだ。
「これってつまり!一瞬で聖剣が刺さっている神殿に行けるって事よ!」
私は!フラウの提案にハッとし、驚き慌てた!
「何だと!?それを早く言えよ!」
「セツナ殿、何を慌てておられるのです?」
これが慌てずにいられましょうか!?
これさえあれば、もう誰にも先を越される事無く聖剣の許に往けるんですよ!
特にウンコセインにこれ以上聖剣を奪われる心配も無いんですよ!
……ノノの奴は嫌がるけど。
と言う訳で、4人全員でその転移魔法陣の上に乗り、私が早々と行き先を叫んだ!
「私達をまだ聖剣が残っている神殿に連れてってくれ!」
転移は一瞬だった。
本当に移動したのか疑いそうなくらい跳んだ感覚が無い。だが、景色は先ほどとは違っている。
特に……
「ナンデーーーーーッ!?だって今、もっ森に!」
ツキツバがマジで驚いている。
「妖術!妖術ですかァ!?」
どんな強敵相手でも臆せず喜び勇んで戦うツキツバが、転送魔法くらいでここまで驚く……なんか新鮮だ。

ノノ・メイタperspective

気付けば本当に聖武具を保存する神殿に到着していた。
「あの転移魔法陣……本物だったみたいですね?」
だが、セツナさんは前回の先を越されたがあるせいか、未だに警戒している。
「本当にこの神殿には聖武具が残っているんだろうな?」
それをフラウさんが揶揄い気味に答える。
「あんたの我鳴り声をあの魔法陣がちゃんと聞き取れていればね」
ツキツバさんが念の為に門の下を確認し、
「どうやら……既に先客が入られた後の様です……」
……どうやら、セツナさんが望んだ場所への転送は失敗の様です。
「と言うか……ここって前にも観なかった?」
……あ。
そうだ!此処はツキツバさんが先客の気配を感じて入る事無く諦めた神殿だ!
「取り敢えず、フラウ殿の故郷に戻りましょう」
だが、諦めの悪いセツナさんが見苦しくも門を強引にこじ開け……
どうやら……ツキツバさんの見立ては間違っていた様で、
「某達より先に来た者達は、あそこにある刀を持っていかなかったのか?」
「あるな。どう見てもある」
「ありますね」
「抜けなかったのね」
どうやら、ツキツバさんの言う先客は、神殿の門を開けるのが関の山だった様だ。
しかも、どうもあの台座は妙にウンコ臭い……
「力み過ぎて漏らしたか?」
取り敢えず、ツキツバさんが聖剣の柄を握る。
うーん、本当に2本目なんて抜けるのだろうか?
それとも僕が知らないだけで、実は人知れず2本目も3本目も抜かれてるのか?
……
……
……どうやら、ツキツバさんは後者の様でした。
何故なら、ツキツバさんが聖剣をさっさと抜いたからだ。
「……どうやらこれで、銀大関ともさらばの様です」
こうしてツキツバさんは、ただでさえレベルを一時的に4割アップさせる聖剣を2本手に入れてますます強くなりました。
これで貯蓄の限界に達すると溜め込んだ経験値を100倍にして払い戻す『経験値貯蓄』が発動したら……ツキツバさんに勝てる人っているの?

フラウperspective

で、本当にどこでも行けると解ると、主様は更に聖剣を取りに行こうと仰られておりますが、
「うーん、私が抜ければ主様のお助けにはなるんだけど」
「レベルを一時的に4割アップさせるは魅力的だけど……」
もしも聖剣に選ばれなかったら……と思うと、ね。
「自信ねぇー!」
ノノに至っては完全に頭を抱えている。
けど、主様は簡単に言ってくれる。
「そう言う臆した心根が、聖剣とやらに嫌われる事に繋がるのでは」
……そう言う物なの?聖剣って?

……で、そう言う臆病風を吹き飛ばそうって事で……
「……来てしまった……」
「聖武具の神殿だよね……ここ……」
「ここにある聖剣を抜けと……」
……やっぱり私には無理だ!此処は―――
「って!?主様!?」
主様は神殿の門を開けてどんどん進んで行きますぅー!
あー!待って!心の準備がぁー!

……で……
「ついちゃったね……聖剣……」
「あ、そっか!ツキツバさんは3本目の―――」
「こういう時こそ、苦難に背を向けてはなりませぬ!」
……主様、意外とスパルタなのかも……
「それに、ノノ殿は前々から言っておったではないですか。もっと強くなって勇者セイン殿との戦に馳せ参じたいと」
「それとこれとは話が違うよぉー!僕のレベル最大値はまだたったの3だよぉー!」
え?ノノのレベルって3しかないの?
てっきり主様と一緒だからと思って。
そこへ、セインって獣人がプルプル震えながら前に出る。
「わわ私が行く!ノノに会う前はレベル最大値は7だったけど、今のレベル最大値は280だ。それに聖剣のレベル4割アップが加われば、レベル最大値は392になる!ももも―――」
セツナ……無理しなくても良いのよ。
結局聖剣が抜けなくて、何て展開は恥ずかしいから―――
と言ってる間にセツナが聖剣の柄を握ってる!
「ぬうぅー!」
「セツナ……抜けるの……」
「セツナさん」
主様が無言で聖剣を抜こうとしているセツナを見守る。
そして、
「ぬがあぁーーーーー!」
力を入れ過ぎたセツナは台座から転げ落ちて後頭部を強く打った。
「いたたた……なんだったんだ?」
「セツナさん!それ!」
「それ……って……」
セツナの両腕を包んでいたのは、銀色に輝くガントレットと鋭い爪が付いた5本指グローブだった。
それを視ていたセツナがハッとして台座を視ると、さっきまであった聖剣が無くなっていた。
「やはりでしたか!そなた達なら抜けると確信しておりました」
どう言う根拠ですか主様―――
「ん?何?この音?」
「何かが爆発した?」
「そこまで近い感じじゃないね?」
謎の音の正体を探ろうと神殿の外に出てみると……

ノノ・メイタperspective

セツナさんが聖剣を抜いた直後に鳴り響いた爆発音の正体を探ろうと外に出た僕達は信じられない光景を目の当たりにしました。
「街が……燃えてる……」
「何だあの炎は!?ここからでも見える程大きいぞ!?」
すると、ツキツバさんが何かを察して走り始めた。
「急ぎましょう!何か胸騒ぎがします!」
「胸騒ぎ!?」
と言う訳で、僕達は火事が起こってると思われる場所まで大急ぎで向かう事にしたんですが……みんな足が速い!
これがレベル100以上とレベル3との差なのか……少しへこむなぁ……
僕がそんな嫉妬を抱いていると、フラウさんが何かを発見した。
「主様、アレ!?」
進行方向に男性の死体があった。それもいくつもだ。
近くには魔族の死体も転がっている。
「くっ!ツキツバの予感的中かよ!」
「急ぎましょう!」
状況から察するに魔族が攻めて来たんだ!予想通り街の外壁は破られ、いくつもの黒煙が昇っている。
聞こえるのは大勢の悲鳴。
「不味いな……どうするツキツバ!?」
こういう時のツキツバさんの迷いが無い行動は、本当に惚れ惚れしてしまう。
「1点突破して一気に敵大将を討つ!」
「1点突破?街中に散らばってる魔族はどうする気だ?」
そんな少し慌てているセツナさんに対し、ツキツバさんは優しく諭しました。
「セツナ殿、戦と言うものはな。敵の大将を倒せばそれで終わるのだ。だからこそ……某達は急ぎ敵の大将の許へ辿り着かねばならんのだ」
こういう時のツキツバさんは本当に頼もしい。
僕も早くそんな立派な人になって、勇者セイン様のお役に立ちたい。
とか言ってる間に、ツキツバさんが多数の魔族達に襲撃されている街を迷わず突っ切って行った。
そして、セツナさんとフラウさんがそれを追った。
それに引き換え……僕に出来る事は、ツキツバさん達が勝って僕の許に帰って来てくれる事を願うだけだ。
頑張れ!ツキツバさん! 
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