栄光の架橋
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第五章
「最高のな」
「優勝よね」
「十八年ぶりの優勝が」
「最高のものになったわね」
「ああ、何かな」
俵は最高の優勝を観た喜びと感動で泣きそうになりつつ言った。
「わしゆずの曲好きになったわ」
「そうなの」
「栄光の架橋がな」
そうなったというのだ。
「ほんまな」
「そうなったのね」
「そやからな」
それでというのだ。
「今度カラオケで歌おうか」
「行く機会があったら」
「そうしよな」
「それもいいわね」
「そやな、ほなな」
そうするとだ、夫は妻に言ってだった。
乾杯した、それから阪神はクライマックスを戦い日本シリーズも戦った。そして第七戦阪神は日本一を目の前にしたが。
ここでだ、また岩崎がマウンドに向かったが。
「今日はね」
「ビジターやからちょっとちゃうけどな」
「歌聴こえてくるわね」
「栄光の架橋がな」
「ファンの人達が歌ってるのね」
京セラドームに集結している彼等がというのだ。
「そうしてるのね」
「リーグ優勝の時の想いそのままにな」
まさにとだ、夫は妻に話した。今も自宅のパソコンの前に夫婦でいて観戦している。
「皆な」
「歌ってるわね」
「そや、一丸となって」
阪神を愛する者達がというのだ。
「岩崎投手に託してるんや」
「横田さんのことと」
「日本一をな」
「そうよね」
「これはな」
最早とだ、俵はしみじみとした顔になって話した。
「一つしかないわ」
「日本一ね」
「そや、日本一になるしかな」
「ないわね」
「点差だけやない」
今の阪神とオリックスのというのだ。
「それでや」
「やってくれるわね」
「絶対な、もうな」
それこそというのだ。
「この栄光の架橋のままにな」
「阪神日本一になって」
「アレのアレが達成されるわ」
こう言うのだった、そしてだった。
阪神は無事に勝った、遂に日本一になり。
再び岡田そして岩崎が宙を舞い。
「またやな」
「横田さんのユニフォーム胴上げされてるわね」
「ああ、しかもな」
さらにと言うのだった。
「そのユニフォームよお見たら」
「どうしたの?」
「今年のや」
「ということは」
「そや、横田選手もな」
「チームにいて」
「一緒にな」
「胴上げされているわね」
「そや、ほんまな」
俵は泣きそうな顔で言った。
「これはな」
「最高の日本一よね」
「アレのアレや、ほんまな」
妻にさらに言った。
「わし栄光の架橋がな」
「好きになったのね」
「ゆずに興味はなかったけどな」
それでもというのだ。
「今はな」
「興味が出たのね」
「そや」
まさにというのだ。
「好きになったわ」
「ええ、いい曲よね」
「最高の曲や、カラオケでも歌うわ」
こう妻に言ってだった。
俵はそれから栄光の架橋が大好きになった、そしてゆずというアーチストも。歌う度に一人の野球選手を思い出したことは言うまでもない。
栄光の架橋 完
2023・12・28
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