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人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった

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90話 しばしのFarewell



「ここは………?」


夢の中で目覚めるという矛盾した状況に置かれた竜介—————つまりここは彼の深層心理。

そこに1人………狼藉の者がやってくる。


「よぉ万丈……いや、ここでは竜介って名前使ってんだったな。」
「—————!?」


竜介が目にした……見たことのある悪夢———かつて自分たちを絶望まで追い詰めた者。コブラが口を大きく開けた姿を仮面に貼り付けたライダーもどき。ライダーを名乗る悪の象徴のような奴。

すると精神の中であるのに頭痛が竜介を襲う————

鮮明に………《《思い出》》してゆく。その悪夢を。そして起こった悲劇を、奇跡を。

コイツの名は—————


「エボルト………!!!」
「ほう、ようやく記憶が戻ったか……まぁ、《《コピー》》のお前が思い出すってのもおかしな話だがな。」
「コピー……!?」


唐突に告げられる自分を否定するような言葉に竜介は動揺する。エボルトはお構いなしに話続ける。


「前に言っただろう?あの最終決戦で完成したパラレルワールド同士の融合……あれはパンドラボックスの真の力の解放で起こったことだ。想定外のことが起こっても不思議じゃない。」
「あ……?」
「あの時俺の遺伝子のごく一部がお前の体に侵入した……ところがパンドラボックスと俺の肉体との同期が起こり、想定外の事態が発生した————」
「んだよそれ……!?」
「お前が《《放射状の並行存在》》になったってことだ。」


意味のわからない言葉………竜介にわかるはずがない。実際エボルトにも想定外の事態……彼自身も詳しく把握しているわけではない。それほどまでに物理法則を超えた救済とは人知を超えた現象だった。

エボルトはもっと簡単に……竜介にも伝わるように噛み砕く。


「要は……あの地球同士の衝突点で万丈龍我の肉体のデータがコピーされた。その肉体は放射状に散り散りになり、偶然その一体のデータがこの世界の赤ん坊に辿り着いたってわけだ………今度は家族にも友達にも仲間にも恵まれてよかったなぁ。」
「じゃあ……このビルドドライバーが家の家宝になってたのはどういうことなんだ!?」
「さぁな。おそらく肉体のデータと一緒に飛来したか……と言ったところか。」


以前、オーマジオウは自分の斡旋で竜介はこの世界に降り立ったと言った。それは因果律操作によるもの。だからミラクルが起こったとしか彼らは解釈するしかない—————が、本当にそうだろうか。

オーマジオウは同時に、竜介は転生するべくして転生したと言った。その点はオーマジオウすら想定していなかったのではないか?—————となると、一時的にも彼を超える因果律操作を行える人物がいるということになるが————


「てかお前!!俺の中にいるんなら大人しくしろよ!!」
「おっと、それはお前たち次第だな……しかしナムロドとかいう奴には気をつけろ?アイツはあらゆる次元と繋がれる力を秘めている———今はまだまだだがな。俺がこうやって話せるのもお前がアークに触れたからだ。」
「!?………」
「まっ、せいぜい死ぬなよ———竜介。」


彼の視界は徐々に明るくなる—————そして。


「……………二度とと話しかけんな——————」
「「………?」」


ごもっともである。





———————※———————




3時間ほど寝た彼らは早速取り掛かる………向かった先は—————オハラエンタープライズ本社。


竜介を先頭に虎太郎と祝は裏口など使わず正々堂々、正面から入る。そして堂々とフロントの受付嬢に話しかける。


「ここの社長に会いたい。会わせてくれ。」
「「(直球すぎる………)」」
「ええと……それはCEOですか?それともCOOですか?それか———」
「あ、え———とりあえず小原兆一郎って名前だ。」

ちなみにCEOは最高経営責任者(日本では会長)で、COOは最高執行責任者で社長か副社長なことが多い。一応このオハラエンタープライズジャパンは支社だったが、会長の移転で本社に格上げになったのだ。

しかし名も知らぬ人物をCEOに合わせるわけにはいかず、受付嬢は断りを入れる。


「申し訳ありませんが、CEOのスケジュールにそちら様の面談は入っておりませんが————」
「そんなの……関係ねぇ!!」

竜介は社員証を提示しないと入れない改札を強行突破、破壊して前に進む。それに反応して侵入者を告げるベルが社内中で鳴り響く。

「ちょっとお客様困ります!!」
「なんて酷い作戦だ……」
「けど祝、今はこれしか入れない。」


2人は竜介の後を追って社内へと侵入していく。

竜介は自分が信じる直感と感性で最上階へと進む………そしてそこにある大きな扉を大きな音と共に開く。


「!!………浦江竜介———何故貴様がここに?」
「ケリを付けにきた。」


その短絡すぎる答えに加えてこの暴挙とも言える侵入方法に兆一郎はため息をつく。


「君はもはや正義を語るにふさわしくない……社内を破壊する犯罪者に成り下がったか。」
「正義なんか……どこの世界にもねぇ。」
「?」
「俺は知ってる————みんな自分を正義と思って戦ってる。でもそのせいでみんな傷つく。そんな世界じゃダメだ!!」
「—————何を言おうと私の考えは変わりませんよ。」


互いにドライバーを装着する。


【ゼツメツEVOLUTION! ブレイクホーン!】


「変身。」


【THOUSER is born. Presented by OHARA. 】


【マックスハザードオン!】【グレートクローズドラゴン!】


「—————変身!!!!」


【Wake up CROSS-Z!Get GREAT DRAGON!Yeahhh!】【ヤベーイ!】



睨み合う蒼龍と黄金の甲虫&アルシノイテリウム。同時にサウザーはサウザンドジャッカーを、グレートクローズはビートクローザーをそれぞれ装備する。

ガタンとドアが開く————虎太郎と祝がやってくる。

その時………紙のタワーが崩れる。


「「はぁぁぁぁぁっ!!!!」」


ぶつかるジャッカーとビートクローザー。その衝撃はいつもの比ではない—————社長室の強化ガラスが割れる。


「ふん!」

【JACKING BREAK!】


吸収していたダークキバの紋章を召喚し、クローズの元へと向かわせる。

しかしクローズはビートクローザーを地面に突き刺し。

【光剛剣日光!】【闇黒剣月影!】

————日月の剣で紋章を打ち消す。


「厄介な剣め……!」
「あぁ、すごい剣だよな————けどこの剣は使わない。」
「調子に乗るなぁ!!」


【JACKING BREAK!】


再び必殺を放とうとした…………それをグレートクローズは残像の見える……《《嫌なヤツ》》と同じような高速移動する。そしてサウザンドジャッカーの剣先を握る。


「これが————お前を忘れさせたのか?」
「何…!?」
「うおりゃゃゃゃゃゃ!!!」


バキン!


サウザンドジャッカーは竜介の逆の拳によって刺突部と持ち手が分断される。そして………溢れた黒いエネルギーが何処かへと飛んでいく。

虎太郎がつぶやく。

「あれは………黒澤天青の———」

竜介は日月の剣を投げ置いて、丸腰になったサウザーをパンチで屋上階へと突き上げる。

祝が察したように言う。

「素手格闘で決着をつけるつもりか……」


サウザーは必死にクローズに殴りかかる————しかし、テンパれば本来の実力を発揮できない。サウザー取り柄の高スペックを活かすどころか、実質スペック負けしている状態では叶うはずもない。

蒼炎を纏った魂のパンチがサウザーの腹を抉り、変身を解除させる。


「がはっ……!まだだ———!
「くそっ!——うおおおおおおっ!!!」


変身を解除した竜介は兆一郎の胸ぐらを掴み、歳にしては美麗な顔面に思いっきりパンチを入れる。兆一郎は地面に叩きつけられ、胸ぐらを持たれる。


「わかんねぇか……何で負けたか。」
「さぁな!君のデタラメじみたハザードレベルとやらのせいだろう!?」
「違う!!お前が《《弱くなった》》からだよ!!!!」
「!?!?」

胸ぐらをバンバンと地面に叩きつける竜介。

「俺たちは正義は誰だって名乗れる………今だってそうだ。正義を振りかざして気持ち悪い争いしてたんだよ!!!」
「——————」
「正義にだって理由はいる……お前の理由は何なんだ!?」
「私の理由は……………!」
「ないだろ!?見失ってんだろ!?!?————アイツらは《《自分とみんな》》を笑顔にするために踊ってる。俺たちはアイツらを守るため、世界を守るため、愛と平和のために正義を名乗っている。正義の中身があるからこそその中身を実現できるんだ。」


自分より若い、そんな竜介に叱られる兆一郎は黙りこくってしまう。ここでようやく竜介は彼の胸ぐらを離して立ち上がる。


「中身のない正義は何も実現できない。できるのは………《《悪を生み出すことと犠牲を生み出すこと》》だけだ。もう俺たちが戦ってるような《《遊びみたいな戦い》》は終わったんだ————本当の邪悪と……俺たちは戦わないといけないんだ。お前は何を守るのか。守ってきたのか。何のために行動しているのか。その行動は自分の守るものを傷つけていないか。よく考えてみろ。」






竜介は立ち去る……………ドラゴンの描かれたTシャツを背にして。














その時——————




巨大な影が来襲する。




「「「!?」」」



彼らの前に現れたのは…………これまでの比にならない怪物————いやダークライダーか。


オハラエンタープライズのビルが肩の部分に来るほど………40メートルほどか。それに驚かないはずもない一同。


「何なんだ………?」
「何者だテメェ!!」


虎太郎の呟きを代弁するかのように、竜介の声がその漆黒の鎧に問いかける。すると————


『我は蜥蜴の王………唯一の神 ナムロド様の啓示により、人間を喰らう存在————』
「んだと……!?」


宣言も束の間、彼は胸にある装甲を開き……………ビル下層にいるオハラエンタープライズの社員たちを窓ガラスごと吸い込んでゆく————まさに人ならざる者の捕食。

突如として起こった殺戮にその場にいる4人は唖然とする————


「無茶苦茶だ………」
「でも————止めるしかねぇ!!アイツを倒して!!」
「ああ!!」


3人はグレートクローズ、クウガ ライジングタイタン、仮面ライダーウォズへと変身する。

そして日月の剣、ライジングタイタンソード、ジカンデスピアの鎌モードの大斬撃が仮面ライダーアークを襲う——————が、胸のブラックホールに吸い込まれてしまう。


「!!」
『貴様らの攻撃は喰らった……おかえしだ。』


胸部のホールから青黒いビームが発射される。クローズは日月の剣で虹色の障壁を形成し、そのビームを間一髪で防ぐ。だが————高さが足りなかった。

障壁から漏れたビームは後方にあったビル群を一掃してしまう。


「ビル数棟を………これまでの相手とはレベルが桁違いってわけだ!!」
「って、ここはビル街だからあんまり激しく戦えねぇって……」
「何とかする…!」

怒声と共にクローズのハザードレベルは爆上がり……それこそ、純粋な異星人のようだ。

その腕力から繰り出される日月の剣による斬撃は凄まじい衝撃を生み、40メートルの巨体を東京湾へと投げ出す。

それを見計らったクウガはアルティメットに、ウォズはフューチャーリングシノビに変身してそれを追いかける—————が。




『ウォズよ。』


ウォズが急遽足を止める———オーマジオウからのテレパシーだ。


「我が魔王……」
『私はこの世界で最後の使命を果たす…のち、私はしばらくこの世界を離れる。』
「使命……?」
『お前はここに残って私にこの世界のことを報告しろ——それがお前の使命だ。』
「——————承った、我が魔王。」



——————※——————



その頃、才と魁は伊口邸で地区予選の準備をしていた—————


「才、ここどう思う?」
「ここは———緑でいこう。」
「よし。」


黙々とした作業………しかし突如として、未来予知が降ってくる。


「———————嘘……だろ?」
「才?どうし
「超巨大隕石だ……」
「え…?」
「ありえない……こんな大きさは————」


才が絶対に見せないと思っていた唖然とした表情……魁はそれだけで危険度を察することができた。


「隕石って……月くらいか?」
「そんなんじゃない……———こんな大きさの隕石は見たことがない!!」
「そんな隕石あり得るのか!?見間違いとかじゃ……いや、仮にそうでも地球だけなら守れるんじゃ———」
「地球を破壊する規模ならな。コイツのデカさは赤色巨星並み……地球に衝突すれば———いや近づいただけでも太陽系の重力が乱れ、太陽系自体が崩壊するかもしれない。それは破壊された時だって同じだ。」
「重力を発生させずに破壊するか……」


そんなこと……と思った途端、才にテレパシーが降りてくる————オーマジオウからだ。


『才よ。』
『オーマジオウ!』
『私はお前の言う隕石を止める……この世界で私がなすべき最後の使命だ。これ以降私はこの世界をしばし離れる。』
『そうなのか……』
『祝はそちらに置いてゆく。彼は今後この世界の報告を担う。』
『あの隕石のデカさ……大丈夫なのか?』
『案ずることはない。』


オーマジオウがこう言うんだ。なら安心できる————むしろ彼以外止められるのは現時点ではいない。


『なんか……色々、ありがとう。』
『ほう———お前ららしからぬ言葉だな。』
『人生コンティニューして……この世界に生きられてよかった。』
『ハハハ……しかし、それはお前の思い込みだ。』
『え?』

想定外の言葉に少し驚く俺。

『お前は類い稀なる才能を持っていた……私はただ知識を少し与えただけだ。』
『どういうことだ?』
『お前はあの時、死なずに天寿を全うしていればこのように仲間にも恵まれた————そういうことだ。心の持ちようで世界の見え方は大きく変わるものだ。』
『…………』
『しかし————お前は最初からムテキガシャットに選ばれていたのかもしれない。最近のお前を見ているとそう感じる。』
『え……?』
『利用されていたのは———私だったのかもしれないな。』
『!?!?!?』



オーマジオウはその言葉を最後に伝達をやめた。

俺は納得できぬまま魁に伝える。



「—————オーマジオウが何とかするって。」
「そうか……!あの人なら何とかできる!」
「(利用されたって………どういうことだ?)」





———————※———————







「この先の未来も気になるが———私も忙しい。別の次元で問題があれば飛んでいかなければならない。」


オーマジオウは伊口ファウンデーションの屋上で佇む………何かを悟って。


「さて……久しぶりだな。少しばかり本気を出すのは。」




彼はドライバーの両端を押し込む。




【終焉の刻!】




ゴージャスの一言に尽きる、黒金のオーラが全身を覆い、彼の体を浮かせる。




「はぁぁぁぁぁぁっ!!!」





【《xbig》逢魔時王必殺撃!!《/xbig》】





大気圏を抜けて、宇宙空間へ。








さらに超え………遠い遠い、数億光年の場所で。









巨石は………………綺麗さっぱりなくなった。




























 
 

 
後書き
最初からムテキガシャットに選ばれていた……拡大すれば転生するのは予め決まっていた。肉体がムテキ化してゆくのも、未来視できるのも普通のライダーとは一線を画しています。

そして当然、Aqoursと出会わなければ才はここまで成長できなかった……出合わせるために何者かが、オーマジオウすら利用して何者かが彼を転生させたとしたら?

つまり———Aqoursと伊口才はこの世界で邂逅することは《《決まっていた》》。



※補足

このオーマジオウの過去を話すと、彼は本編ルートを辿った常磐ソウゴが最終回で世界をリセットせず、第3の選択をした世界線のオーマジオウということになります。

その選択とは2度とスウォルツのような自分本位な歴史の改竄者が現れないように、そしてそれらを食い止める者を誕生させていくこと。自分が歴史に介入しないように。

ナムロドとは非常に危険な存在……まさしく彼の言う歴史どころか並行世界すら改竄してしまえる邪悪な存在です。

だがオーマジオウはこの場から離れる……それは、もうナムロドへの憂いは無くなったから———自分の役目は終わったからということです。

そして恐ろしいのが、「才がオーマジオウを利用したのかもしれない」という点です。


この意味をゆめゆめお忘れなきよう。
 
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