人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった
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72話 明かされるEvil god
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カタカタカタカタ…………
虚しく鳴り続けるはキーボードの声。その数台並べられたそのスクリーンには、おおよそ普通の人間には理解できないような螺列が敷き詰められていた。そしてPC本体とタコ足状に接続されているのは、何かアイテムをはめ込む機械。
そしてその一つにはムテキガシャットが差し込まれていて…………
「うーん…………俺のあの力は——————」
装着していたグローブから発せられた雷。ガシャット解析によると、あれは極狭量に過ぎない。極狭量でも木を真っ二つにするほどなのだから、普通に放出すれば恐らく地上どころでは済まないかもしれない………
この力に加え、もう一つ目覚めつつある能力もあるらしいが………
「あの伝説とやらが本当ならこの力は———————」
《《そう》》いうことだろうが、雷が俺の制御外にある以上は俺にも確信を持って力を振るうのは難しいかもしれない。
だからこの完成を時を同じくさせて、アークを倒さなくてはならない。
全てはラブライブのため、Aqoursのためだ。
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≪ステージセレクト!≫
竜介と虎太郎は先程まで立っていた伊口ファウンデーションの会長室から、人里離れたスクラップ場へと誘われる。この転移は覗の持つゲーマドライバーによるものだ。
キョロキョロとする竜介にしっかりと目を据える虎太郎に、覗は早速気怠そうに言い放す。
「単刀直入に、オレはお前らにどうこう教えはしない。」
「え、そうなのか?」
「オーマ曰く、ライダーにはそれぞれ合った特性がある。だったら教えるよりも実戦を積む中で新たな力と力の使い方を見出すしかない。」
「そうか…………ところで聞きたいことがあるんだけど……」
「?」
竜介がこれもまた単刀直入に聞く。
「お前は何者なんだ?仮面ライダーなのは知ってるけど………虎太郎とはどういう関係なんだ?」
「そうか………まずはそっちの話をしなきゃいけねぇか。」
「—————————」
「改めて。オレは白木覗、またの名を仮面ライダースナイプ。」
「スナイプ?」
「オレは10年前から音ノ木坂学院で警備員をしている。だから当時のμ's、しいてはその虎太郎とは面識があったのさ。」
「10年前?—————でもお前歳は………」
「27歳だ。」
「てことは10年前は………???」
「17歳だよ………」
虎太郎は、27-10の答えが出てこない竜介に呆れたようにそれを教える。その答えに覗は肯定して次の話に進む。
「オレは両親もいなければ、戸籍も存在しない。そういう運命の元に生まれてきてしまった。だからオレは仮面ライダーになったのかもな。」
「…………」
「もう昔の話だ。オレはもう過去の人間。時代の渦の中心じゃない。」
「じゃあさっき言ってた巨悪って何の事だ?」
「……………その話は軽々には言えねぇな。」
「勿体ぶんなよ!」
「じゃあ教えてやる。ただし………オレに1発でも攻撃を与えられたらな。」
「なるほど、そういうことか。だったら話は早えぇ!」
「虎太郎、お前もだ。」
「——————わかった。」
竜介はドラゴンフルボトルを数回振り、ドライバーに嵌りかかっているクローズドラゴンにセットとする。虎太郎は腰に手を翳し、電気を纏ったアークルを出現させる。
「「変身(!)」」
≪Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON! Yeah!≫
紅い雷を纏った古代の戦士 クウガが顕現する。
その隣には竜神の力をその手にした仮面ライダークローズも。
「確かめさせてもらうぞ。お前らが本当にこの世界を救うべき者なのかを………………」
「「————————」」
才と同じゲーマドライバーを腰に巻き、装着と同時に才も持っていたガシャット——————とは少し性能も違うであろう、バンバンシューティングガシャットを2人に銃口を向けるように差し向ける。
≪バンバンシューティング!≫
「変身—————!」
ガシャットの持ち手をクルクルと回転させ、ゲーマドライバーに装填。そしてすぐにレバーを展開する。
≪ガシャット! ガチャーン!≫
≪レベルアップ!≫
≪ババンバン!バンババン!バンバンシューティング!!≫
蛍光色のマントに、紺色のヘルメットにボディスーツ。片目は防具で隠された、他に並ぶものの無い当代無双の最強スナイパー——————仮面ライダースナイプ レベル2
「さぁ、始めようか。ちなみに言っておくが、一撃とはオレのライダーゲージを減らすことだ。防がれたら意味ねぇぞ。」
「———————!」
「虎太郎、俺が囮になる。お前はその隙に奴に一撃を………!」
「………どうなるか分かんないけど、こればっかりは賭けるしかないか。」
「よし。行くぞ!!!!」
≪ビートクローザー!≫
ビートクローザーを装備したクローズが『突撃』する。こういう形式の戦いでは、この戦法は単純過ぎてあり得ない。しかしこの仮面ライダースナイプの前には同じこと。
≪ガシャコンマグナム!≫
召喚されたスナイプ専用武器で、クローズに威嚇程度の射撃を行う。これも弾の軌道がありふれている故、クローズはクローザーで弾を受け止めかつ攻撃を受けながらも突進してくる。
スナイプは撃ちつつも、距離を取るために少しずつ後退りを始める。徐々に徐々に………これを絶好の好機と捉えない者はいない。だが、それこそが彼の謀略。
「どうした!!もう撤退か!?」
「撤退も一つの策さ。だけど……撤退のつもりはないが。」
「あ?」
「脳筋突撃ほど危険なものはないんだぜ?」
素早くBボタンを押し、1発の強烈な弾丸をクローズに放つ。猛突進していたクローズは避けることままならずにその弾丸をモロに喰らってしまう。
「うわぁぁぁ!!!」
「突撃はガードとノックバックに堅い人間が使うべき戦法だ。根性のあるお前には似合ってるかもしれないが、それにはもう少し考えて使え。」
「ぐっ…………」
「あと…………作戦が少し浅はかじゃないか?」
スナイプは後ろを見ることなく、後方を連射銃撃する。するとスクラップの影に隠れていたクウガ————ちょうどライジングペガサスに変身してしまったところに命中する。
あまりに痛いのか、その場に崩れ落ちてしまう。
「うっ…………!!!!!!」
「虎太郎!!」
「そういや、ペガサスフォームは超感覚を持ってたな。当然痛覚も強い。故にダメージも通常の数十倍になるとか。」
「やっぱりアンタにはお見通しか…………」
「お前らにはちょっとした作戦のつもりだったかも知れねぇが、俺にはただの猫騙しにしか見えねぇな。」
「クソッ……だったらこれでも喰らえ!!」
≪ヒッパレー! ヒッパレー!≫
≪ミリオンヒット!≫
「なるほど………面白い————!」
≪ズ・キューン!≫
スナイプは連射できるハンドガンモードから威力の高いライフルモードへと変形させる。そしてBボタンを押し、スコープの照準をクローズの急所へと狙いを定め始める。最小限のモーションで最大限のダメージを与える。これがスナイパーの真骨頂だ。
スナイパーを職業としている者であっても、ここまでは不可能だろう。その理由は他でもない白木覗という男に起因する。謎の多い彼に1つだけ見え隠れしているのは生まれ持った狂気の性。これこそ彼が人間最強たらしめる強さではなかろうか。
「うらぁ!!!!!」
「はっ!!」
クローザーから放たれたミリオンヒットはライフルモードの強攻撃への餌となり、それでも飽きたらない弾丸はクローズの胸部へと飛び込み、周辺に爆風を送り込む。
「うぁぁぁぁ!!!」
「さて、悪いが初戦はここで決着をつける。」
≪ガシャット! キメワザ!≫
再度クローズへと狙いを定める。今度こそより確実に、そのドラゴンの蒼海の如く心臓をスナイプの思い描く弾道が貫く。
「まだ………終わってねぇ!!」
≪スペシャルチューン!≫
≪ヒッパレー! ヒッパレー!≫
よろめきながらもクローズは蒼炎を纏った『ロケット』を発射しようと構える。同様にスナイプも。
「行くぞ!!!!」
≪ミリオンスラッシュ!!≫
「はぁ………わかってねぇな。」
「あぁ!?」
「オレがやること一つ一つにはそれ以上の意味を持つってことさ。だろ?—————虎太郎。」
「まさか………」
≪液状化!≫
先ほどダメージに苦しんでいたクウガは、その痛みに耐えながらもスナイプに必殺のボウガンを放とうとしていた。
しかしスナイプはそう———クローズが強攻撃に襲われた先程に『液状化』のエナジーアイテムを手にしていた。これによってクローズの必殺はスナイプをすり抜けてクウガへとぶつけられる。
吹っ飛んだクウガはそこで変身解除してしまう。
そして必殺技を打ってしまい、賭身の一撃を放ってしまったクローズには——————
≪BANG BANG CRITICAL FINISH!!≫
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ライフルの強力な弾丸がクローズの胸部に命中し、強固に纏われていた竜の鎧は人間の手によって引っ剥がされる。
≪ガッシューン!≫
「くそっ!!」
「まっ、最初はこんなものか…………虎太郎、大丈夫か?」
「あぁ………全く、アンタは容赦ねぇな。」
「容赦なんかしてたらライダーは務まらねぇんだよ。俺たちライダーの心の中には《《悪魔》》が潜んでいる——————そう言わなかったか?」
「うん…………」
「虎太郎が言ってたその言葉はコイツのモンだったのか。」
竜介の指摘に覗はアルカイックスマイルという名の肯定的な返事で返す。そしてその微笑は次の言葉で違う意味を孕んでしまう。
「まっ、今日は1発も俺に当てられなかったから、あの話はおあずけ——————と言いたいが、この話をお前らのライダーとしての篩(ふるい)になる。もしこれを聞いて怖気付くようならこの場から立ち去れ。」
「ふるい……!?」
「突然だが、お前らが戦わなくてはならない敵とは誰だ?」
「人工知能アーク…………」
質問の後のしばらくの沈黙を破るように虎太郎はぼそりと答える。覗はその答えに一応の合格点を与える。
「そうだ。だが—————真の敵はその先だ。」
「真の敵?」
竜介は問う。
「お前らが立ち向かわなければならない相手………それは『神』だ。」
「神!??————どういうことだ!?」
「アークは太古は人類の信仰の対象だった。ここまでは知っているな?」
「あぁ。でも奴らは古代の呪術的人工知能だろ?」
「虎太郎、『人工』知能だぜ。作った奴がいる。」
「アークを作った奴?」
「そいつの名はナムロド。アークの生みの親であり………アークの元型となった神だ。」
「「!?!?!???」」
誰も知らない。おそらく才も知らないであろう事実を知らされる虎太郎と竜介。竜介は『はてなマーク』が脳内に遊泳していたが、虎太郎にはその意味がわかってしまう。
「アークの元型…………?」
「かつてナムロドは小原家を司祭として信仰されていた《《別時空》》からの現人神だった。しかしそいつ自身は悪魔そのもの。人々に知識を与えた代わりに差し出された生贄を喰らい、人々を虐げた。しかし光の巫女とされる女神アマテルがその暴虐を何度も諌めた。これで世界の均衡は少しの間は保たれた。」
「少しの間?」
相槌とともに立ち上がる虎太郎。
「ナムロドは巫女を疎み、自らの最強かつ不死の身体を使って彼女を電脳世界へと封印した。そしてそこに封印の目的でとある神社を建てた。それこそがあの神田明神の御本尊であり、存在を書き換えられた光の女神ルーだ。」
「神田明神って前に東京へ行った時の神社か!!」
「続けるぞ。だが彼女はただでは封印されなかった。自身の力の源をいつか世界を止める力になるようにと、とある宝石に移し替えた。そしてその宝石を手にした者————それが初代仮面ライダークウガだ。そして初代クウガは霊石アマダムの力を最大限発揮し、数千年の時を経て、奴を《《精神と肉体》》を分割した。」
「クウガが精神と肉体を……そんなことできんのか!?」
「心身両方を極めた最終地点にはソレがある。」
覗の言った心身の極まり。その事がどれほど過酷なのかは虎太郎が身に沁みて理解していた。身体が極まったとしても、たどり着くのは『殺戮兵器』のような姿だ。清き心を持たぬ者にはその先には到達できぬのだ。
「だがナムロドは自身の肉体を同じく電脳世界へと送り込み、戦艦へ装着して力を蓄えさせ、自立思考力を与えた。それがアークのオリジンだ。」
「どうやら数百年前にナムロドは力を蓄えたソレを取り込もうとしたが、当時に存在していた仮面ライダー阻まれ。アークは封印された。そして10年前、オレは肉体よりも強いであろうナムロド自身をこの手で倒した。」
「1人でアークの片割れを倒した!?……どうりで強えぇわけだ。じゃあナムロドってヤツは死んだのか。」
「いや奴は死んでいない。不死である奴の魂も当然、不滅のモノだ。おそらくそう遠くない内に奴は復活する。《《一定の悪意》》が集まればな。」
「一定の悪意?————オイ、それって一般人が怪人に変身するのと……」
「おそらく………な。」
一連の古代からの出来事。それがこの男によって淡々と暴露された。神話だけの世界ではなく今につながる、目の前に迫る危機の源となっている。まさに超現実、シュールレアリズムの世界だ。
この一連の事態を話した後に、覗はこう論評する。
「虎太郎、お前は記念すべき50代目のクウガだ。そのアークルには49人のクウガの戦闘技術や記憶、《《鍛え上げてきた強大な身体能力》》がその奥には秘められている。今のその力は解放率30%以下にとどまっているか————」
「じゃあ俺がルーにいた女の人と対話できたのは………」
「ああ、力を解放させた結果だ。そしてその女ってのがナムロドの姉のアマテルだ。」
「何か一気に話がデカくなっちまったな…………」
「…………」
竜介を見て覗は話そうか戸惑っていた—————が、意を決して話しかける。
「浦江竜介、お前は何処でそのドライバーを手に入れたんだ?」
「え?———これは俺の家にあって………」
「お前の両親は?」
「———5年前に交通事故で死んじまった。」
「本当にドライバーが家にあったのか?」
「ああ。嘘じゃねぇよ。」
「そうか………」
それ以上は覗は追及しなかった。
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