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同盟上院議事録~あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争~

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最高評議員たちと茶を飲み交わす

 
前書き
「国民の身命財産を守ることが国家の義務である。ならば精神はどうだろうか。この傷就いた国において、統帥権は国の団結、そして報復の為に行使されるべきでしょうか?それが民主主義なのでしょうか?我々は遺族の財産を保障することはできても将兵の身命を好んで損なう意味がありましょうか?我々のストライキに参加した者たちを非国民と呼ぶものがいるが、であれば警備員という名の退役軍人を送り込む彼らは何者でありましょうか」(自由惑星同盟労働組合連合ルウェリン・マレー中央執行委員長、第2回大会の基調報告にて)(コルネリアス大親征から4年後) 

 
宇宙歴796年5月17日12:45(ハイネセン標準時間)ハイネセンポリス シュワルツ記念同盟弁務官会館255室

 

「君それは話が大きすぎるのではないかね?中期戦災復興計画に軍の整備計画だって?君達は政権の動きを縛るつもりかね?これから最高議長選なのに?」

 リヴォフとロムスキーは国務委員長を訪問するためシュワルツ記念同盟弁務官会館を訪れていた。ここは同盟議会議事堂と地下でつながっており、構成邦代弁者達の情報収集の場である。余談ではあるがシュワルツ同盟弁務官は構成邦自治権の守護者として知られており、【コルネリアス大親征】時の集権化改革に反対し、その半数を時限立法へと妥協を強いつつ、侵攻を受けた各構成邦の避難支援や亡命政府樹立へ奔走したことで知られている。

 カーティスは自身に割り振られた執務室で悠然と紅茶を口に含んでいる。執務室といっても実際は間借りした事務所といった方が正確だ。議員用のオフィスにミーティングルーム、秘書と事務員の執務室が設けられちょっとした役所の部署のようになっている。(そもそも同盟弁務官は出身構成邦から出向した官僚が付くことが多く、実質的な構成邦の首都事務所のような役割も担うこともある)

 

「故にこそ、政権とその下院与党と連携をしたいと申し上げている」

 老ロムスキーは笑みを浮かべたまま踏み込むがカーティスはひらりとかわす。

「我らが最高議長次第だな」

 常の風見鶏の如き態度のままである。まさしく同盟弁務官のステレオタイプともいえる姿だが、国務委員長まで上り詰めた老人であることを忘れてはならない。

「あの方の支持基盤は賛成するのでは」

 サンフォード最高議長はシロン星系出身だ。あの国は農業、特に商品作物の開発に強い伝統的な保守王国だ。トリューニヒトとも違う構成邦の権限を重視する保守的な連邦主義者だ。

 

「大きな話が外から持ち込まれた場合、大衆は明確な手土産がないと固まらないものだ。君たちは外様だよ」

 我ら田舎モンってのはそういうものだろう?とカーティスはくすくす笑う。ここにはバーラト首都圏の出身者は一人もいない。

「あなたの話でもあるんじゃあないかね?カーティス国務委員長閣下は中間星域のドンであらせられるからな」

 リヴォフの追求に対し政権のナンバー2は笑みを浮かべたまま手を挙げる。

 

「さあていかにも、いかにも、私も同盟上院議員・同盟弁務官だよ?同輩諸君」

 アンタはその首席でしょうが、とリヴォフは唸る。国務委員長は最高評議会副議長であり、同盟弁務官総会議長・・‥要するに上院議長を兼務する。

 

 ロムスキーはリヴォフを無視して弁務官総会議長をじっと見つめる。

「では同盟弁務官同士らしく、取引といきましょう。何がお望みですか」

 

「駐留軍は削減ではなくあくまで人数の縮小、それと並列した宇宙港の再整備、へ変更していただこう」

 

「中間星域にもですか?」

 

「もちろんだ。言っておくが流通の活性化でリスクが増大するのはむしろ中間星域だよ、海賊の主流は帝国軍や貴族の私兵だが、【古き良き時代】はそれだけではなかった。そこはわかってほしい」

 カーティスの言いたいことはわかる。暗に退役軍人の裏社会への流入を暗示しているのだ。だがしかし‥‥

 

「理解はしますがいささか足踏みをし過ぎではありませんか」

 減税や補助金で不景気は賄えるでしょう?とロムスキーが問いかけるがカーティスは首を横に振った。

「安心の提供が問題だよ。私が求めるのはリスクではなくリスクへの恐れへの対策だ。それに過剰な人口変動とて社会俯瞰に不況を引き起こすだろう?」

 

「ふぅむ‥‥‥」

 さてどうしたものか、とロムスキーが考えこもうとすると、リヴォフはにたりと笑った。

「ならそうですな、第2艦隊を復活させましょうや」

 

「おいおい、私はそんなことは望んでいないがねえ?」とカーティスは冬至祭のプレゼント箱を前にした子供のような眼でリヴォフを見る。

「第2艦隊の位置づけをですね、予備役と新兵の訓練部隊として正規艦隊の即応予備扱いにしましょう。そして首都周辺に展開させ、訓練させる。常に人員の出入りが進み、予備役を確保できる。その代わり第1艦隊の治安維持任務を拡大させる」

 

 ほう?とカーティスは眉を動かした。一種の詐術だ。軍の定員を減らすがこれまでの駐留艦隊の一部を正規艦隊に合算させるということである。

 

「強硬派をなだめることもできる。それに将校のポストもある程度維持できましょう」

 リヴォフの提案をカーティスは率直に肯定的な態度を示す。

「悪くはない。シトレに話を通しておこう。トリューニヒトとは君たち自身が話すべきだろうね」

 

「軍は傷ついている、落としどころ探しなら俺が何とかするさ」

 艦隊兵站の専門家、リヴォフ退役少将がにたりと笑った。

 

「よろしい、我らがチェアマンはまだ検討中だろう世論の潮目がどう動くかだろうな」

 一瞬、会話が途切れた。ロムスキー代表は茶を口に含み、エル・ファシル共和国に残した息子たちのことを思い浮かべる。彼らは無論、歓迎するだろう。だがバーラトの者たちは?

互いが互いのことを理解しきれない、常識すら異なる。とりわけイゼルローン要塞が作られてからの四半世紀でそうなってしまった。

 

「主要政党の予備選挙はいかがです?」

 最高議長の候補を同盟市民達が選ぶ下準備、国政政党たる下院の主要政党内選挙戦だ。直接選挙の最高議長選挙と下院選挙は基本的に結果が連動する。

「大混乱だよ、どこも出馬の際の製作が根底からひっくり返った。どこも最終日まで届け出を出さないだろうさ」

 まあそれはそうだ。何しろ最大の政治的問題はイゼルローン要塞による圧力だ。最大の侵攻拠点であり、帝国の国内問題を同盟に押し売りする同盟市民のほぼすべてが憎悪する最悪の政治業者の拠点である。否――”あった”。

 

「そりゃ偉いことですな、であれば2カ月で決着をつけると?」

 

「うん、大変だ。だから君も身の振り方を考えることだね。だから言ったのだ――これは話が大きすぎる。とりわけこの時期には」

 じろりと鋭い目を向ける大政治家に対し、医師は宥めるように微笑みかけた。

「だが悪くはない、そうでしょう?国務委員長閣下」

 だが最高評議会副議長は微笑み返すだけだった。

「当たればな。当たるかどうかは様子見させてもらう」

 







 

「しかしまあ、話が大きすぎるのではないかね?」

 カーティス国務委員長との面会から20分後のことである。フェリシア記念構成邦自治会館のバーラト・ホール応接室でジョアン・レベロは眼前に座る【民主主義の縦深】トップ2名を見る。手渡されたクリアファイルには【戦災復興に向けた法案作成について】と書かれた数枚のポンチ絵が収まっている。

「わざわざ君達が私に会いにくるとなれば当然だが」

 ちなみにフェリシア議員は労農連帯党結党に立ち会い党の拡大を支えたテルヌーゼン首相を8年間、同盟下院議員を6年3期務めた大物政治家である。

 代表たるロムスキーは慇懃に一礼した。

「レベロ“党首”ご覧いただいた素案はいかがでしょうか」

 

「あくまで素案で詳細はこれから詰める。だが大目標と方向性は変わらないよ」

 リヴォフは腕組みをしたままレベロに説明した。

 

「自由党が求めるものからは程遠いな」

 

「そうかもしれませんが、であれば求めるものが通ると?」

 

 ジョアン・レベロは すました顔で香り高い珈琲を口に運ぶ。

「党が立案したたたき台から妥協していく。それで議会を通るものを作るのさ」

 

 リヴォフは不満を露わにレベロを睨む。

「それでは結果は変わらない。与党3党と組むのであれば。いいや、野党と組むのであれば連立が崩壊する!まさか選挙後にやるとでもいうのか?半年も我々を放置すると!?」

 レベロは微笑みを浮かべ、肩をすくめる。

「政治に必要なのは二つ、求められる過程で求められたものに近い結果を出すことだよ」

 

「で?結果は程遠いというが軍拡・・‥いいや、即時再建を求められるよりはマシではないかね?我々の案が否決されるのであればトリューニヒト派の中でも強硬な連中が人民防衛運動と手を組んで案を出すに決まっている!」

 

「・・‥‥」

 レベロは天井を見上げ、机を指で叩く。

「戦時国債を低金利の国債に借り換えられる、流通が回復すれば景気も回復する。必要であれば譲歩は可能だろう」

 自由党党首はゆっくりと視線を交戦星域の利益代表者達へ戻す。

「だがそれをやるのなら停戦をするべきだ、と唱えるものがあまりに多い。いいか?退役軍人の雇用問題などよほど急激な軍縮をしない限りは存在しないのだよ」

 自由惑星社会経済にダメージを与えている最大の理由は特に戦死者の大半が星間流通を担う技能労働者・技術者だからだ。

 軍縮はそれを吸収する。それはそうだろう、国が支援すればどうとでもなる。

「だからこそ、自由党の支持者が望むのは死者を減らし、景気を回復させ、自由な気風を取り戻すことだ」

 

「自由党は健全かつ自由な経済を重視しておられますからな」

 リヴォフが言外に込めた皮肉にもレベロは揺るがなかった。

 

「否定はしないがそれだけではないよ、戦時社会は異常な状態だ、それが長く続きすぎた」

 

「それはとてもよく存じています。財務委員長閣下のご指摘をいただくまでもなく」

 リヴォフの圧を受け流し、レベロは人差し指を上に向ける。その眼に真剣な光が宿っていた。

「それでもいうさ、当然交戦星域の所為ではないさ。だがな、君達は強い者たちが残って耐えている、だが弱い者たちは耐えられない。せめて少しは楽にしてくれ、そうした声をいけ好かないブルジョアリベラル政党が拾うこともある」

 

 リヴォフは背もたれに身を預けながら追究を続ける。

「だからといって停戦?あの皇帝の気まぐれで国内で数億人が死ぬまでは許容する国が?あの国に外交交渉など存在すると思うか?」

 コーヒーメーカーが完成を知らせる音を鳴らした。

 レベロは笑みを浮かべて頭を振った。そして立ち上がると戸棚へ足を運ぶ。

「外交交渉は存在しないが実利に適った抑制ならありうる、今の皇帝は立法行為を一度も行っていない。官僚貴族はブルジョアジーに蝕まれている。そして地方では領邦貴族が台頭している。そしてなにより、後継者が定まっていない。皇帝は今いくつだね」

 何か瓶を取り出すとそこから酒精の香りがツン、と漂う。だが縦深の2人は”高度に政治的な期待を込めて”それを無視した。

「恒久的な和平ではないと?」

 レベロは手際よく、”不明な液体”を珈琲が入ったポットに垂らし、さらに生クリームを取り出すと3つのカップに猛烈な勢いで注ぎ込んだ。

「あぁそうだ。情報部門に予算を回せばアプローチの手段も増えるだろう?」

 

 リヴォフは天を仰いだ。甘いものは得意ではない。

「アンタ、平和を求めているのではなかったのか?」

 

 レベロはウインナーコーヒーらしきものを手渡す。ケルトの魂を感じる人もいるかもしれないが。

「これも平和だよ、うまくやれば旧式兵器を穀物や貴金属、エネルギー資源に変えることだってできる」

 

 リヴォフは半眼でレベロをジロリと睨む。

「イゼルローン要塞は維持するのだろうね?」

 

「言っただろう?必要であれば譲歩をする。帝国より先に上院の議席が優先だがね」

 

「財務委員長閣下、貴方はクソ野郎であらせられる」

「光栄だね、軍の将官までなった男にそういわれるのであれば」

 レベロは涼しい顔で珈琲を実に美味しそうに飲んだ

「それにねえ、君達は一つ勘違いをしているよ」

 

「我々の支持者が望むのは死者を減らし、景気を回復させ、健全な財政の下で安定した経済を取り戻すことだ。それが続くのであればむしろ帝国なんぞ地獄の窯の中を転げまわり、弱り続けることを望んでいるのだよ。連中が平和の中で微睡むなぞ恐怖でしかない」

 レベロはいささか風味づけが強すぎたかな?と笑いながらコーヒーを飲みほした。

 

 ロムスキーはいつの間にか止めていた息を吐き出す。ほんのりと酒精の香りがした。

「それで?自由党はこの法案をどう扱うつもりでしょうか」

 

「私はもう答えを言ったよ」

 レベロはそう涼しい顔で返答した。

 

 リヴォフは当惑したようにロムスキー代表を見る。ロムスキーは顎を撫でながら答えた。

「”政治に必要なのは二つ、求められる過程で求められたものに近い結果を出すことだ”、ですか。つまり起案に自由党議員の名前を入れろと?」

 

 自由党党首にして最高評議会評議員たる財務委員長はニコリと笑った。

「参ったね、それでは無力な私はそれを止める手立てはない!そうなったら党内で私は反対し、妥協し、支持を党に求めるべく宥めて回るしかないじゃないか」







 車内でリヴォフは疲れ切った様子で背を伸ばす。

「レベロ、レベロ、アイツがあそこまで政治家だとはね!政局に疎いと評判だったし、実際にそう見えていたが」

 ――つまるところ”私は嫌な顔をして君らに妥協を強いてから賛成するからヨロシク!”といっているわけだ。あのリベラルは!

 リヴォフは軍将校と構成邦政治家としてキャリアを歩んできた。レベロは首都圏から金融マンとしてサジタリウス腕全体の資金の流れを見てきた男である。良くも悪くも見てきたものが違い過ぎるということだろう。

 

「支持者の手前、惚けることもあるということもあるだろうさ。“なんでも知悉してると振る舞う”ことは身動きが取れなくなる。それに――」

 

「それに、なんだね」

 リヴォフ以上にロムスキーは先ほどの言葉を深く考えているようであった。

「今回は体よく連中が苦手な交戦星域対策を押し付けられたとも言えるよ。自由党の名を入れるという事は向こうにも相応に譲歩する必要がある」

 リヴォフも思考を巡らせる。

「自由党を無下にはできん。与党3派が割れた場合はこちらにもダメージがある。組む相手を考えなければならない。カーティスもサンフォードもおそらく我々がどういった流れを作るのかを注視している」

 

「アレークシン、こうなると野党だが主権者自治連合(SAU)からの支持を何としても確保せねばならないと思う。パチェノ代表幹事との話し合いが今後を左右するだろうさ。マスメディアへの発表は彼らと与党が握手して起案者を確定させてからだ」

 SAUは旧国民共和党系や同盟政党に加盟してない構成邦政党らが連合して生まれた地方分権派政党だ。同盟政府の権限増大や増税などに対する主要政党への不満から第四極と呼ばれるまで支持を集めている。その性質上、上院の同盟弁務官達との関係性も深い。

 

「だな。SAUはカーティスとも繋がりがある。いいや、我らが最高議長閣下をはじめとする国民共和党(NRP)の地方党人派もそうだ。与党の三党連立は予備選を控えて党内も連立も統制が弱まっているが逆に言えば野党とも手を組みやすい・・‥」

 その場合の議長選への影響については考えなかった。手足を縛る法案を出す以上は流れに身を任せるしかない。

 

「問題は両極翼だな。人民防衛運動は・・‥」

 ”全ての権限を最高評議会へ!””国家の総力を挙げて専制主義の打倒を!”極右の寄り合い所帯だった人民防衛運動はこの25年で急速に支持を広めている。イゼルローン要塞がもたらした閉塞感の一側面だろう。

「絶対に出兵を求める。それで支持を伸ばせるからな。存続の危機だよ、彼らは」

 イゼルローン要塞で固定化された不満と社会不安を糧にしてきた組織だ。報復主義は蜜のように甘い。夢想するだけなら、であるが。

 

「退役軍人組を実利で切り崩す・・‥いや宥める側に回ったとしても望外とするべきか」

 ロムスキーは悲観的に首を振る。

「あそこの結束力をなめんことだ、主義者の集まりだぞ。それで食ってる連中も含めてな」

 エル・ファシル議会の同盟懐疑派を思い出しているのだろうか、とリヴォフは思いいたる。アレはアーサー・リンチの置き土産ともいえる同盟への不信感が両翼で爆発したものだ。

「反戦市民連合も無理だろう?あそこは都市貧困層とデマゴーグが基盤だ。辺境への出費など認めんだろうさ」

 あそこはあそこで第一の被害者は首都圏を中心とした都市部貧困者だと定義している。交戦星域の復興はゼネコンやらの利益だと吹聴して妨害に回るだろう。そして同盟全土一律の福祉強化を求める。自分たちのライフスタイルのみを考えた内容のものであるが。

「同感だね。労農と共同で推薦を出している無所属は動くかもしれんが。ならば対話せず、ともいくまい」

 

「どちらの党とも最低限の話はしないとならん。クソッ!よりよって総選挙前になんてことをしてくれたんだ!」

 与える影響が異常に大きい、そしてソロバンを弾く時間が誰にもない。誰もが大胆な行動を強要されている!

 

「軍港部でも破壊するか駐留艦隊に痛打を与えるつもりだったのだろうがねえ」

 この作戦は統合作戦本部主導の作戦であった。本来は要港部の破壊工作と駐留艦隊撃滅を企図したともわいれているが謎に包まれている。ただ一つ言えることはヤン・ウェンリーは最初から要塞司令部占領も本命でなくとも視野に入れていたということだ。

 

「・・‥・・やるべきことは沢山ある。法案の立案者、特に下院の党派の選択、軍部の支持の取り付け・・‥これをやらないとトリューニヒトが激怒する。労農党も退役軍人や兵士に支持層がいる。俺もその代弁者の一人だ。シトレの考えも聞かねばならんな。全く面倒ばかりだ」

 ――そして両翼はこれを餌に中道派を批判し、選挙で票を集めるのだろう。畜生、次の政権のかじ取り次第ではえらいことになるに決まっている。

 リヴォフはひどく疲れを感じ、座席に身を沈めた。老医師は旧友の肩を優しく叩く。

「その通り、これはひどく大きな仕事だ、だがやる価値はある・・‥‥交戦星域の悲願のために」

 ことここに至り彼らは進むしかなかった。 
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