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X ーthe another storyー

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第三十二話 死神その十三

「そうよね」
「確かに」
 言われてだ、牙暁も頷いた。
「地の龍も天の龍も」
「皆甘いもの好きよね」
「星史郎さんも昴流さんもね」
「私も好きだったのよ」 
 北斗はまだ身体があった頃のことを話した。
「実はね」
「そうみたいだね」
「ケーキとか大好きで」
 それでというのだ。
「よくね」
「食べていたんだね」
「三人一緒にね」
 そのうえでというのだ。
「食べていたのよ」
「そうだったんだね」
「楽しかったわ」
 その頃のことを満面の笑顔で話した。
「凄くね」
「それは何よりだね」
「今は食べられないけれど」
 それでもというのだ。
「またね」
「あちらの世界に行ったらだね」
「食べたいわ」
 その時はというのだ。
「好き放題ね」
「そうしたらいいよ」
「是非ね。太らない様にするわね」
「あちらの世界じゃ太らないんじゃないかな」
「そうかしら」
「身体がないから」
 だからだというのだ。
「そうだとね」
「魂は太らないのね」
「身体のことだからね」
 太るということはというのだ。
「痩せることにしてもね」
「身体があるからで」
「それがないと」
 それならというのだ。
「別にね」
「太らないのね」
「そうだと思うよ」
「そうなのね」
「うん、けれどあちらに行っても」
 その時が来ればとだ、牙暁は北斗にあらためて話した。
「甘いものをね」
「楽しんでくるわね」
「そうしてくるといいよ」
「ひょっとしてあちらでも身体があったりしてね」
 北斗は笑ってそちらの世界のことをまた話した。
「それで食べ過ぎたらね」
「その時はだね」
「太るかもね」
「その時はどうするのかな」
「ダイエット一択ね、甘いものは少し控えて」
 ダイエットの時はというのだ。
「スポーツよ」
「それに励むんだね」
「そうしてね」
 そのうえでというのだ。
「痩せるわ」
「そうするんだね」
「ええ」
 こう言うのだった。
「その時はね」
「楽しそうだね」
「ダイエットも楽しまないとね」
 こちらもというのだ。
「やるからには」
「前向きだね」
「私らしいかな」
「そう言えるね」
 牙暁も否定しなかった。
「それは」
「そうよね」
「それで前向きだから」
「それでよ」
「ダイエットもだね」
「そうしてきたし」
 それでというのだ。
「あちらの世界でやることになっても」
「楽しんでするんだ」
「そうしてくわね」
「それじゃあね」
「うん、そうしてね」
「是非ね」
 こうした話を最後にしてだった。
 二人はそれぞれ深い眠りに入った、そうして休むのだった。


第三十二話   完


                    2023・5・15 
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