バーにいた美人と
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第二章
「一週間の仕事の終わりにね」
「これまで通りですか」
「昔はこれだけ美味しいカクテル出してくれて」
バーテンダーが作ってくれたピーチフィズを飲みつつ話した。
「こんな可愛い娘がいたらね」
「毎日でもですか」
「来ていたよ、けれどね」
今はというのだ。
「そうした元気もね」
「ないですか」
「可愛いね、でね」
それでというのだ。
「終わりだよ」
「そうですか」
「カクテルも二杯飲んで」
「終わりですね」
「そうだよ、会社でも可愛い娘は大勢いるけれど」
「可愛いね、ですか」
「心の中で思ってね」
それでというのだ。
「終わりで家に帰って奥さんとお話して」
「終わりですか」
「奥さんがいて子供がいたら」
笑ってこんなことも言うのだった。
「それでね」
「充分ですか」
「僕はね」
「そうなりましたか」
「うん、そうなったよ。若い頃は色々遊んで飲んでね」
「女の子もですね」
「アイドルや女優にも夢中になったけれど」
それがというのだ。
「そうなったよ」
「そうですか」
「それが歳を取ることだってわかったよ、じゃあもう一杯飲んだら」
そうすればというのだ。
「それでね」
「終わりですか」
「また来週だよ。家に帰って奥さんとお喋りだよ」
「家庭が一番ですか」
「それだけ幸せかな」
微笑んでこの言葉を出した。
「そうした家庭があったら」
「お家の中がゴタゴタしているよりは」
「ずっといいよ」
「そういうものですね」
「今の僕はね」
「わかりました、ただ二杯目は沙羅ちゃんが作っていいですか?」
バーテンダーは達観した感じの柳沢に申し出た。
「それでも」
「うん、どんな腕か見せて欲しいよ」
「それじゃあ」
「作らせてもらいますね」
その娘も応えた、そしてだった。
二杯目のジントニックは彼女が作ったのを飲んだ、それを美味いと言ってまた来週ねと勘定を払ってから店を出てだった。
家に帰って妻と他愛もない話をして娘にちょっと言われて風呂に入って穏やかに寝た。そして休日に入ったのだった。
バーにいた美人と 完
2023・8・25
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