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X ーthe another storyー

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第三十話 勇気その十二

「先代の陰陽師と関係者を全てです」
「殺して」
「力を奪い口封じをして」
 そうしてというのだ。
「受け継ぎます」
「そうするのね」
「幸い先代も桜塚護は一人だったので」
「その人だけを殺したのね」
「実の母を」
 星史郎は自らこのことを話した。
「そうしました。母は僕に何もせず」
「貴方に殺されたのね」
「はい、そしてです」
「貴方は桜塚護になったのね」
「桜塚護は自分が最も愛している者に殺されてです」
「その力を奪われて」
「受け継がせるのです」
 そうなるというのだ。
「母も祖母を殺し」
「貴方もお母さんを殺したのね」
「そうです」
「心が痛んだわね」
 自然とだった、颯姫はこの言葉を出した。
「貴方も」
「いえ、全く」
 星史郎は颯姫の今の言葉にも微笑んで答えた。
「僕は先程も申し上げましたが」
「心の痛みがわからないのね」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「全くです」
「そうなのね」
「はい、ですから」
 それ故にというのだ。
「全くです」
「心が痛まなくて」
「母を殺してもです」
「何も思わなかったのね」
「そうです、父も既に世を去っていまして」
「お父さんは何をしていたのかしら」
「母を助けていました」
 その立場だったというのだ。
「ですが母を護って」
「お亡くなりになったのね」
「僕が母を殺す一年前に。二人は愛し合っていまして」
 このことも話すのだった。
「僕に父の一周忌が終わりますと」
「殺されたのね」
「跡を継ぐ様に言われて」
「貴方はお母さんを殺したのね」
「そうでした、戦いにはなりませんでした」
 一切、そうした言葉だった。
「母は桜の下で死にました」
「桜の花びらが散る中でかしら」
「そうでした」
「そうなのね」
「普段は座敷牢から出ない母でしたが」
 それでもというのだ。
「その時はそこで死にたいと言いまして」
「そこに出てですか」
「僕の術を受けてです」 
 そうしてというのだ。
「死にました」
「それがことの顛末ね」
「左様です」
「お袋さんのお墓は何処にあるんだい?」
 草薙はここまで聞いて星史郎に問うた。
「それで」
「お墓ですか」
「ああ、そこはな」
「青山墓地にあります」
 星史郎は微笑んで答えた。
「父と共にそこに眠っています」
「そうなんだな」
「これでも毎月参っています」
 星史郎はこのことも話した。 
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