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X ーthe another storyー

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第三十話 勇気その十一

「夢の中でもね」
「そうね。起きた時もね」
 庚は残念そうに述べた。
「彼は本心を語らないわ」
「誰にもだね」
「きっと一番気にかけていて」
「今では無二の相手にも言わないよ」
「そうするわね。けれど出来るだけね」
 庚は決意している顔で話した。
「彼もね」
「生きる様にするね」
「そうするわ、だからお願いね」
「僕も動くよ」
「そうしてね」
 夢の中でそうした話をした、そしてだった。
 庚は目覚めるとシャワーを浴びて都庁に来た仲間達と共に朝食を摂った、その時に星史郎に尋ねた。
「貴方お仕事はどうしたのかしら」
「表のでしょうか。それとも裏の」
「両方よ」 
 ハムエッグを食べつつ問うた、皆フォークとナイフを使っている。
「どうしたのかしら」
「どちらも止めました」
「あら、そうなの」
「戦いが終われば人間が滅びますね」
 星史郎は庚に微笑んで話した。
「それならです」
「お仕事をしても意味がなくなるからなのね」
「もうです」
「どちらのお仕事も辞めたのね」
「獣医も。桜塚護も」
「そのどちらも」
「今の僕は桜塚星史郎です」
 こうも言うのだった。
「ただの」
「そうなのね」
「地の龍としてのお仕事に専念させてもらいますね」
「病院の生きものはどうなったんですか?」
 哪吒はそのことを尋ねた、彼はサラダを食べている。メニューはハムエッグとサラダにフルーツの盛り合わせそれに牛乳である。
「一体」
「皆他の獣医さんにお願いしました」
「そうですか」
「もう彼等は大丈夫ですよ」
「助かりますか」
「こんな藪医者に関わらないので」
「しかし貴方は助からない命にだけ呪いを向けていましたね」
 遊人は星史郎のこのことを話した。
「そして苦しまない様にもしたとか」
「ははは、僕は心の痛みがわからないですから」
 今度は遊人に答えた。
「ですから」
「そうしたことはですか」
「していませんよ」
「そうですか?」
「はい、そして裏のお仕事も辞めたので」
 こちらの話もするのだった。
「もうです」
「誰かに呪いをかけることもですか」
「ありません。元々僕だけでしたし」
「桜塚護というのは」
「未練もありません。人間が滅べばです」 
 そうなればというのだ。
「もうです」
「桜塚護のお仕事もですか」
「縁がなくなるので」
 だからだというのだ。
「終わりです」
「そうですか」
「けれど確か」
 颯姫も言ってきた。
「桜塚護は受け継がれるもので」
「そうです、桜塚護を受け継ぐ者はです」
 星史郎は颯姫にも話した。 
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