夢幻水滸伝
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第三百八話 ケンタッキー州占領その六
「今のうちにや」
「撤退して」
「そしてですね」
「シンナシチに入り」
「あの街で戦いますね」
「ルイーザちゃんもクリーブランドで負けてや」
彼女のことも話した。
「今はコロンバスにおるし」
「はい、我々もです」
「ここは下がりましょう」
「孤立する前に」
「そうしましょう」
将軍達も頷いてだった。
ギンズバーグは戦わずして速やかに兵を退かせた、それはレキシントン等だけでなく。
州全体の戦力をそうさせた、こうしてケンタッキー州は五大湖側の戦力が全ていなくなるという状況になった。
それを見てだ、メルヴィルは笑顔で言った。
「今からケンタッキー全体に兵を送ってな」
「州全体の掌握に入りますね」
「進軍しつつな、そしてな」
ヴォネガットに笑顔のまま答えた。
「その後でな」
「はい、インジアナ州にですね」
「兵を進めるで」
「そうしますね」
「そや、ええな」
「それでは」
「しかしです」
ジェーンがメルヴィルに唸って言ってきた。
「まさか要塞を攻めないで」
「それでやな」
「州全体を掌握するとは」
「ああした場合は出来るんや」
メルヴィルはジェーンにも笑顔を向けて答えた。
「こっちの戦力が上やとな」
「それやとですか」
「ああして敢えてな」
「要塞を無視して進んでみせて」
「そして敵の後方に向かう様に見せるとな」
「敵は退きますか」
「少なくとも要塞から出る」
そうなるというのだ。
「この場合は要塞化した街からな」
「そうなりますか」
「敵が堅固な要塞に立てこもったらな」
「こうしたやり方もありますね」
「出て来んのなら出て来る様にする」
そこにいる敵軍がというのだ。
「これもや」
「戦ですか」
「そや、レキシントンとその周りをすぐに要塞化して備えたギンズバーグは見事やった」
彼のその手腕は評価した。
「しかも要地のあの一体をな」
「普通攻めるっすが」
セリューは常道を言った。
「しかしっすね」
「そや、それがや」
「敢えて攻めへんっすか」
「それでいて後方の守りを固めるんや」
「こっちの後方は攻めさせへんっすね」
「そうなるとな」
敵軍が自分達を回避して進みかつその後方を狙おうにも守りを固めて攻めるに攻められない状況ならというのだ。
「敵は孤立する、そして後方に回られる前にや」
「下がるっすね」
「戦で孤立した軍は終わりや」
メルヴィルは看破して言った。
「そやからな」
「ギンズバーグ君も下がったっすね」
「そや、これもまたやり方や」
「戦のっすね」
「戦わずして勝つ」
メルヴィルはここでも笑って話した。
「これこそがや」
「最善っすね」
「要塞は絶対に攻めんとあかん時もあるけどな」
「そうした時は攻めますね」
フォークナーが応えた。
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