夢幻水滸伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三百八話 ケンタッキー州占領その五
「敵空軍の爆撃が続いてる」
「左様です」
「それもあります」
「基地や工場が次々と被害を受けています」
「州の戦力は落ちる一方です」
「そやからな」
それ故にというのだ。
「このままここにおってもな」
「駄目ですね」
「意味がないですね」
「孤立してです」
「空襲で戦力を失うだけです」
「そやからな」
将軍達に深刻な顔と声で話した。
「ここは残念やが」
「撤退しますか」
「レキシントンから」
「そうしますか」
「インジアナ州までな」
撤退するその場所も言った。
「シンナシチに兵を退けるで」
「わかりました」
「それではです」
「すぐに撤退しましょう」
「シンンシチまで」
「そうするで、このレキシントンで迎え撃ってな」
要塞化したこの街でとだ、ギンズバーグは苦い顔で話した。
「食い止めるつもりやったが」
「そうですね」
「周辺の街もそうしていましたし」
「守り抜くつもりでしたが」
「それでもですね」
「攻められんとな」
それならというのだ。
「意味がない」
「迎え撃とうとも」
「相手がそうしてこないならです」
「どうにもならないですね」
「レキシントンはケンタッキー州の主要な道にある」
その交通のことを言うのだった。
「それで通ると思ったら」
「道を通らずともいい」
「左様ですね」
「草原を通ってもいい」
「そういうことですね」
「そや、メルヴィルさんは戦がわかってるな」
苦々しい顔で彼のことも言った。
「ほんまな」
「全くです」
「敵ながらお見事です」
「道を通らずとも先に進める」
「草原も他の場所も進めると」
「元々道はない」
ギンズバーグはこうも言った。
「人が通るからな」
「道が出来ますね」
「そうですね」
「まさに」
「魯迅の言葉やったか」
中国の近現代文学を代表する作家が故郷という小説の最後で書いたこの一文を思い出して言うのだった。
「これは。道がなくてもな」
「軍は進めますね」
「また車も馬も」
「左様ですね」
「ああ、それでこのままやとな」
レキシントンに留まっていると、というのだ。
「メルヴィルさんは僕等より先にシンナシチに行く」
「そしてインジアナ州に入る」
「そうなりますね」
「この街を攻めずに」
「そうなるからな」
だからだというのだ。
ページ上へ戻る