ドナーを待って
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第一章
ドナーを待って
医師の大分英光と妻の看護師の八千代の娘ゆみりは心臓を患っていた、それでだった。
二人はすぐに心臓移植を希望したが。
「やっぱりな」
「かなり待つわね」
夫婦でドナーの順番のことで難しい顔になった。
「三年ね」
「それだけ待つな」
「それだけね」
妻は俯いて言った、黒髪を短くした眼鏡の中年女性だ、中肉中背で顔の皺が年齢に加えての苦悩を物語っている。
「沢山の人が困っているということね」
「そしてだよ」
夫も言った、細面で眼鏡をかけていて小柄である。黒髪は短く痩せている。
「ドナーの人自体もね」
「少ないわね」
「だからだよ」
「三年待たないと駄目ね」
「正直今すぐにでも」
夫は偽らざる本音を話した。
「移植してもらいたいよ」
「そして助かって欲しいわね」
「僕達は医療関係者で」
今度は自分達のことを話した。
「色々調べられてね」
「それでわかったけれど」
「三年だよ」
「そうね、それだけ待たないと駄目ね」
「幸いあの娘は三年位なら大丈夫だよ」
「有り難いことに」
「けれどね」
ここでも本音を言った。
「出来るだけ早く」
「移植してもらって助かって欲しいわ」
「全くだよ」
「本当にね」
こう夫婦で話した、そしてだった。
何とか一刻も早く娘を助けたいと思っていた、そんな中で今すぐにでも移植してもらえるそれも表のルートでという話が来た。
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