幽雅
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第二章
「何かな」
「どうしました?」
「いや、この世のものでない」
「そうしたですか」
「ものを感じるな」
「そういえば」
そう言われてだ、緒方は応えた。
「何処となく生気もです」
「ないな」
「そうした感じですね」
「そうだな」
「ええ・・・・・・えっ」
緒方はここでだった。
女性の足下を見て眉を顰めさせた、そのうえで柏木に話した。
「あの、先生」
「どうしたんだ?」
「足下見て下さい」
「足下?」
「女の人の」
今自分達が見ている彼女のというのだ。
「そうして下さい」
「足下?何っ・・・・・・」
柏木も見た、そうしてだった。
影がないことに気付いた、それで緒方に言った。
「これはな」
「この世のものではないとです」
「今話したがな」
「あの人実際にです」
「この世のものでないな」
「幽霊ですね」
「ああ」
そうだとだ、柏木は答えた。
「あの人はな」
「そうですね」
「影がないのはな」
「生者でない証ですね」
「そしてだ」
緒方にさらに話した。
「京都はそうした話が多いな」
「歴史が長いだけあって」
「日本でも特にな」
「幽霊のお話が多いですね」
「妖怪変化のもな」
こちらの話もというのだ。
「多いな」
「そうでしたね」
「だからな」
それでというのだ。
「今わし等が幽霊を前にしてもな」
「有り得ますか」
「わし等の話も聞こえていないな」
「聞こえていても」
例えそうであってもというのだ。
「けれどな」
「それでもですね」
「その話をな」
「気にしていないですね」
「あの人にとってはな」
「私達はどうでもいいですね」
「そうなのかもな」
こう緒方に話した。
「本当にな」
「そうでしたね」
「しかしだ」
それでもとだ、柏木は話した。
「絵になるな」
「竹林に合っていますね」
「着物を着てな」
その見事な振袖も見て話した。
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