インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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プロローグ
空が赤い夕日に包まれる中、黒い全身装甲と黒のバイザーが付いてるパワードスーツが激闘を繰り広げていた。
パワードスーツ―――それはインフィニット・ストラトス(通称:IS)と呼ばれ、世間一般ではスポーツとして認知されている。そう。世間一般では。
だが、今起こっていることは明らかに世間一般からかけ離れていることだった。
バイザーの付いているISはビットを射出して全身装甲に射撃の雨を浴びせる。が、全身装甲にはあまり効いていなかった。
「クソガッ!?」
バイザー付きは悪態を付き、どこからともなく鎖を展開して全身装甲を拘束する。
『ふーん。だけどねぇ』
全身装甲のISはその拘束を解いてバイザー付きにビームを放つ。が、そのビームは消え、バイザー付きのエネルギーが回復した。
『う、嘘………』
「ハッ! その程度の出力かよ!」
バイザー付きのビットが四方から全身装甲を拘束した。
『え? どうして―――』
「………」
―――パチンッ
バイザー付きは静かに指を鳴らすと、全身装甲は痺れさせられたような動きを取ってそのまま沈黙して鎖で再び拘束した。
「ウイルスを注入してお前の駒を奪った。これ以上、お前の指示通りには動かないだろう。………もう聞こえてないだろうがな」
そのままどこかに飛んで行くバイザー付きのIS。その場所は何かに襲われたかのような痕が残されていた。
■■■
世界が『白騎士事件』によって世に進出したインフィニット・ストラトスによって女尊男碑という風潮に煽られて男の立場が悪くなった。
だが、それは表の話。こっちからしてみれば何の価値もないことだった。女に絡まれることは多々あるが、一睨みすれば全員が怯えてその場から消える。
(なんとも下らない世界だ……)
篠ノ之束という女性が開発したらしいが、それ自体はどうでもいい。例えどれだけ発表の仕方が悪くても使うのは世界の大人。まぁ、開発者が望んでいようがなかろうが知らないが、最近ではよくISを見かける。それを退けるのが俺に来る主な仕事だった。何故それができるかはまったく不明だが、できることには変わりはない。襲われることが多々あるために自分の身を守るためにしているだけだ。
(……本当に、面倒だ)
今は普通の街を歩いていて、周りが賑わっているらしい。女に奴隷にされている男に女をナンパしている男の集団。………は?
俺はまさかと思いつつそちらに視線を移すと、そこには水色のセミロングの女の子がナンパされていた。
(……………はぁ)
この世の中でだと、逆にナンパが目立つ。しかもどこからどう見てもガラが悪そうな男たちだ。正直言って気持ち悪い。
俺は吐き気を抑えながらそいつらに近付く。
「おい」
俺が声をかけると、男たちの視線がこっちに向けられた。
「何だお前、変な格好しているけどどこの組だ?」
「どうでもいいな、そんなことは。それよりも嫌がっているんだから開放してやってもいいんじゃないか?」
その言葉にやはり拒否を示す男たち。まぁ、そうだよな。
「仕方ないな」
途端に一人の男が倒れ込む。簡単に言うと気絶させたんだが。
「て、テメェ!!」
「勝てると思っているのか?」
「や、やっちまえ!!」
言わずもがな。1分を過ぎた辺りで全員が倒れた。
騒ぎに巻き込まれないようにその女の子の手を引き、適当な場所で置いて行く。
「あ、あの―――」
「……何だ?」
「その……ありがとう……」
「気にするな。ああいうのは嫌いなだけだ」
そう言ってどこかに行く。別にお礼を言われる筋合いはないんだけど。
ISが出てからというもの、言葉に表すことができない事件がよくある。大抵が気取った女なら別に自業自得だろというコメントだけで済むものだが、そんなことをしそうにない女―――特に大人しめの方が多いのだ。
そしてさっきの女の子もそれに該当するだろうと思い出した俺は少しばかり心配になり、バレないように人に紛れて観察すると、ちょうど連れの女の子と会ったみたいですぐに安堵した。
だが俺のことを別の方で見る人間がいた。ボディーガードか何かだろうか。ここはそのまま去っていった方がよさそうだろうな。……途中で適当に何か書いておくか。
■■■
………なんだろうな、ここは。
そう思いながら変なところに着いた。さっきからしつこく追ってくる気配は撒いたが、逆に道がわからなくなっていた。……要するに、迷子だ。
「なになに? 『IS適性試験―――男性操縦者発見のためにご協力ください』?」
そういえばと、ふと頭にあるニュースが浮かんだ。
以前のことだが、ISを動かした男が出たと聞く。それのために何日もかけて男のIS適性を調べようとしているのだろう。
(まったく、ご苦労なことだな)
俺はそう思ってその場から離れようとしたのだが、
「―――あ、君! 試験を受けにきたんだね! いいからこっちに―――」
何故か男に腕を引かれてIS試験会場とやらに入った。
確かに軍事力となるIS操縦者が増えれば嬉しいだろう。
俺は名前を書き、そのままさっきの男の人に付いていく。さすがに手は離してもらった。
そしてとうとうISが置かれている場所に着いてしまった。
(……確か、触れるだけだったよな?)
そう思ってそこにある日本産第二世代量産型IS『打鉄』に触れようとして、止めた。
「男がISに触れるって、嫌よね?」
「苦痛でしかないわ」
……さっさと触れて帰ろう。
そう思って触れると、―――反応してしまった。
すぐに後ろに飛ぶと、案の定見たらしく口をあんぐりと開けている。
(まさか動くとはな。完全に誤算だ)
そう思ってすぐにその場から離れるが、それは叶わないらしいな。
「……何のつもりだ、とでも言っておいた方がいいのか?」
「随分素直なんだね」
「サンプルが入って嬉しいだろう? まぁ、そうやすやすと実験台になる気はないが」
黒服たちが現れ、そいつらは一斉に銃を構えてこちらに向けてくる。
「大人しくしてもらおうか」
「――おい、それは俺たちのセリフ―――グッ!?」
俺が先に言うと、黒服の一人が言ってる間にそいつ向かって踏み台にしてその場から離れる。
懐から閃光弾を投げて爆発させて奴らの視界を奪い、外に出ると待機していたらしい男たちがこっちを見ていた。
(おもしろい、おもしろい)
俺は空に向けて爆弾を投げ、連中をビビらせてその場から離脱する。
「ま、待て!!」
「待てと言われて待つ奴はいないと思うがな!!」
悪いが俺は生きる以外の選択はする気はない。
そう心に決めて俺はそのまま逃亡を始めた
■■■
どれくらい逃げたのだろうか? いや、そんな台詞を出すほど逃げていない。精々3時間ぐらいしか逃げていない。
そして―――俺は今、苦悩していた。
(今日は女の子絡まれdayか!!)
別に助けるのは自分の勝手だし、毎日している気はないし逆に気取ってそうな人間は無視するのだが、
(やっぱり、オドオドしている人間を狙うんだな……)
同じ男としては速攻止めてほしい。というわけで止めよう。
「おい」
「またかよ。これで横槍を入れられるのは何度目―――って、昼間の!?」
「……またお前か」
俺はため息を吐く。まさか3時間後に会うとは思わなかった。
すると、女の方から着信音らしき音が鳴り、
「あ、あの……」
「何だ?」
「電話に出てもよろしいでしょうか……?」
「ああ。どうぞ」
どうやら俺と会ったので興が冷めたらしい。男たちはもういいやと思ってその場から去ろうとする。
そして俺は、髪の色にカルチャーショックを受けていた。
(日本人は髪が黒なんじゃないのか!? どうして緑がいるんだ!?)
そう思って膝と手をついていると、不穏な会話が聞こえてきた。
「え? また出たんですか? その子が現在逃亡中? えっと……白い髪に少し濁ったような瞳……ですか?」
視線がこちらに向けられ、電話の相手が俺を探していることがわかった。
「あ、あの………今、目の前に似たような人がいるのですが。はい。大きめのローブ? を身に付けています」
………助けたことを後悔した。
俺は気絶させることを頭に入れた。
「あ、あの……よかったらIS学園に来ませんか?」
なるほど、こいつはその教員が。近くの袋を見るに―――何か見てはいけない物を見た気がする。
「断る」
「で、でも、IS学園なら、安全は保証されるし―――」
―――ドゴッ!!
黙らせるために彼女の頭一つ分隣の壁を凹ませた。
「つまりあなたは俺にISを使えと?」
「……そ、その……」
(はっきりしろよ……)
この人、本当にIS学園の教員か? 意外に弱いな。……だが、
(これ自体が演技かもしれないな……)
そう思っていると、ようやく口を開いた。
「その、選り取りみどりですよ―――」
「―――そんなに死にたいか、お前は?」
俺の言葉が意外だったのか、その女性は驚いていた。
「ご、ごめんなさい!!」
すると恐怖に耐え切れなかったのか、その女性は土下座をしてくる。
「別に甘く見ているわけではなかったんです!! 先輩にさっきの言葉を言ったら大人しく付いてくるかもしれないと聞いていたから言っただけなんです!!」
「……俺はそのつもりはないがな」
そう言ってその場を去ろうとすると、今度は腕を掴まれた。
「………まだ何か?」
「そ、その、どうしたら来てくれますか……?」
「ISに乗らないでいいのなら」
どうせ通らないと思って言ってみると、
「それは無理ですね。不本意かもしれませんが、ISを動かせるとなれば必ず専用機が与えられるかと思いますよ………?」
どうして最後に疑問形なんだよ。
目の前の女性に密かにツッコミを入れる。
「でも、希少な存在なのでそれは仕方ないかと思います。不本意かもしれませんが」
「ええ。まったくもって不本意だ。だが―――」
仕方がないと言えば仕方がないのか。
「いいだろう。IS学園に向かってやる。だがその前に頼みがある」
「え? 何ですか?」
「俺と一緒に買い物に付き合って欲しい」
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