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第三章

「もうな」
「そうした時はですね」
「弁護士さんに頼んでな」
「何とかしてもらいますか」
「そうしような」
 こうした話もしてだった。
 実際に払ったがメニューにあった値段通りでだった。
 二人であらためて驚いた、それでだった。
 二人でだ、カウンターにいたアフリカ系のバーテンダーに英語で話した、見れば白髪をお洒落にセットしている。
「あの、この値段は」
「今のニューヨークでは」
「ああ、そのことだね」
 バーテンダーは笑って応えた。
「実はこの店は資産家の人が趣味で経営しているんだよ」
「資産家の」
「そうした人が」
「誰でも知っている昔から世界的な資産家の家のね」
「そうした人が趣味で経営している」
「そうしたお店ですか」
「そうなんだ」
 二人にニューヨーク訛りの英語で話した。
「実は、だから今の状況でもだよ」
「メニューは安い」
「そうなんですか」
「そうさ、昔から趣味で経営していて」
 そうしてというのだ。
「採算は気にしていないからね」
「安いですか」
「そうですか」
「そうだよ、そうした店もあるんだよ」
 世の中にはというのだ。
「稀にでもね」
「それはまた、しかし」
 橋本は店の中を見回してバーテンダーに言った。
「この店は随分とです」
「古いね」
「ジャズ風ですね」
 こう言ったのだった。
「それも一九二〇年代の」
「そう、その頃からだよ」
「あるお店ですか」
「あの頃は禁酒法の時代でね」
「モグリですか」
「それでやっていたのがね」
 それがというのだ。
「はじまりでね」
「そうだったんですね」
「その頃からその家の人がだよ」
「経営していたんですか」
「そうでね」
 それでというのだ。
「今もだよ、こうした店があってもいいよな」
「ええ、それは」
「そうした考えでな」
 バーテンダーはさらに話した。
「マスターもな」
「お店のですね」
「やっていってるんだよ」
「昔から」
「代々な」
 その様にというのだ。
「そうなんだよ」
「こうしたお店があってもいい」
「最初はあれだよ」
「あれといいますと」
「モグリだって言っただろ」
 禁酒法時代のというのだ、この頃のアメリカでは各地にそうした酒場があって人々は飲んでいたのだ。 
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